「および」と「または」は、何となく使い分けているものの、「結局どちらが両方で、どちらが選択なの?」と迷いやすい言葉です。特に履歴書の提出や契約書、申込条件などでは、たった一語の違いで必要な書類や条件の範囲が変わることもあります。基本的には「および」はANDで両方を含み、「または」はORで選択肢を示す表現です。
この記事では、具体例を交えながら両者の意味と正しい使い方を分かりやすく解説します。さらに、「もしくは」「ならびに」との違い、複数の条件が混在するときの読み方、契約書やビジネス文書で誤解を防ぐポイントまで理解できます。
目次
- 1. 「および」と「または」の違いは?まず結論から理解する
- 2. 「および(及び)」の意味と正しい使い方
- 3. 「または(又は)」の意味と正しい使い方
- 4. 「および」と「または」を具体例で比較する
- 5. 「または」と「もしくは(若しくは)」の違い
- 6. 「および」と「ならびに(並びに)」の違い
- 7. 「および」と「または」が1つの文章に混在するときの読み方
- 8. 契約書・規約・法令での「及び」「又は」の使い分け
- 9. ビジネスメール・社内文書・案内文での自然な使い方
- 10. 「および」「または」でよくある間違いと書き換え例
- 11. 「および」「または」の違いでよくある疑問
- 12. 「および」と「または」を正しく使い分けて誤解のない文章にしよう
1. 「および」と「または」の違いは?まず結論から理解する
「および」と「または」の違いは、むずかしく考えなくても大丈夫です。 「および」はAとBの両方を含める言葉で、「または」はA・Bなどの選択肢をつなぐ言葉だと覚えると、まず大きく間違えません。 英語に置き換えるなら、「および」はAND、「または」はORに近い関係です。 たとえば、「鉛筆および消しゴムを持ってきてください」と書いてあれば、鉛筆だけでは足りず、消しゴムも必要です。 一方、「鉛筆またはシャープペンシルを持ってきてください」なら、示されているのは選択肢なので、どちらを持っていくかを考える文章になります。
この違いは、日常会話では小さく見えても、履歴書の提出案内、契約書、規約、公的文書などではとても重要です。 接続詞を1語取り違えるだけで、「両方必要」だった条件が「どちらかでよい」という意味に変わったり、その反対になったりするからです。 特に、書類提出や契約条件では、読み手が自分の感覚で補わず、書かれている接続詞をそのまま確認することが大切です。 まずは「および=両方」「または=選択」という2本の柱を頭に置いて、そのあとで「もしくは」「ならびに」との違いを整理すると、ぐっと理解しやすくなります。
1-1. 「および」はAND(かつ)でAとBの両方を含む
「および」は、複数の要素をまとめて含めるときに使う接続詞です。 「AおよびB」と書かれていたら、基本的には「AとB」「AかつB」と考えましょう。 たとえば、「応募時に履歴書および職務経歴書を提出してください」という案内なら、求められているのは履歴書だけでも、職務経歴書だけでもありません。 履歴書と職務経歴書の2種類をそろえて提出するという意味になります。
同じ考え方は、ほかの場面でも使えます。 「住民票の写しおよび印鑑証明書を提出する」と書かれていれば、住民票の写しと印鑑証明書の両方が必要です。 「会社の資産およびこれに付随する権利」という表現なら、資産だけを見るのではなく、それに付随する権利まで含めて読まなければなりません。 つまり「および」は、どれか1つを選ぶための言葉ではなく、並べた要素を一緒に扱うための言葉なのです。
ここで気を付けたいのが、「および」を「それか」という感覚で読んでしまうことです。 たとえば、「運転免許証および健康保険証」と書いてあるのに、「どちらか1枚でよいだろう」と判断すると、求められた条件を満たせない可能性があります。 反対に、文章を書く側が本当は「どちらかでよい」と伝えたいのに「および」を使うと、読み手には「両方必要」と伝わります。 小さな接続詞ですが、必要な物の数や義務の範囲を決める力があるため、ビジネス文書では特に丁寧に確認しましょう。
1-2. 「または」はOR(あるいは)でA・Bなどの選択肢をつなぐ
「または」は、複数の候補を並べて選択関係を示す接続詞です。 「AまたはB」とあれば、「AかB」「AあるいはB」と読み替えるとわかりやすいでしょう。 たとえば、「お問い合わせは電話またはメールでお願いします」なら、電話とメールの両方を使わなければならないわけではなく、示された方法の中から選べる文章です。 「支払いは現金またはクレジットカード」と書かれている場合も、現金とカードを同時に使うという意味ではなく、支払い方法の選択肢が示されています。
日常の案内文や社内メールでは、漢字の「又は」より、平仮名の「または」のほうがやわらかく見えることがあります。 一方、契約書や法令のように文章の構造を厳密に示す文書では、「又は」が使われることがあります。 大切なのは表記の見た目より、「選ぶ関係を示している」という役割です。 「および」と「または」を見分けるときは、「全部そろえる話なのか、それとも候補から選ぶ話なのか」と考えると迷いにくくなります。
さらに、選択を表す言葉には「もしくは」もあります。 「または」と「もしくは」はどちらもORの仲間ですが、契約書や法律文のように項目が何段階にも分かれる文章では、結ぶ対象の階層によって使い分けられます。 大きな分類同士の選択には「または」、その中の細かな選択肢同士には「もしくは」を使う、と整理すると理解しやすいでしょう。 日常文ではそこまで厳密に区別されないこともありますが、意味を正確に伝えたい文書では、この違いを意識することが役立ちます。
1-3. 「履歴書および職務経歴書」と「履歴書または職務経歴書」では必要な書類が変わる
「および」と「または」の違いを一番わかりやすく実感できるのが、提出書類の例です。 「履歴書および職務経歴書をご提出ください」と書かれていたら、必要なのは2種類です。 履歴書だけを送っても、職務経歴書だけを送っても、文章どおりには条件を満たしていません。 「および」があるため、履歴書+職務経歴書の両方が必要だと読めます。
これに対して、「履歴書または職務経歴書をご提出ください」と書かれていたら、文章が示しているのは選択関係です。 履歴書か職務経歴書のいずれかを提出する、という読み方になります。 たった3文字ほどの違いに見えますが、応募者が用意すべき書類の数は1種類なのか2種類なのかという、大きな違いにつながります。 求人応募だけでなく、本人確認書類、申請書類、契約時の添付資料などでも同じ考え方が使えます。
たとえば、「運転免許証およびマイナンバーカードを提示してください」と「運転免許証またはマイナンバーカードを提示してください」では、準備する物が変わります。 前者なら2点とも必要で、後者なら選択肢として読めます。 「印鑑証明書および身分証明書」と「印鑑証明書または身分証明書」も同じです。 書類の案内を読んだときに迷ったら、名詞だけを追わず、その間にある「および」「または」まで含めて1つの条件として読むことが大切です。
文章を書く側も同じように注意が必要です。 本当は「どちらか1点でよい」と伝えたいのに「および」と書けば、読み手に余計な準備をさせることがあります。 逆に、2点とも必要なのに「または」と書けば、片方だけで条件を満たすように読まれるおそれがあります。 採用案内や申請手続きのように、相手の行動を決める文章では、「両方必要なのか、選べるのか」を先に決めてから接続詞を選びましょう。
1-4. 「および」「または」「もしくは」「ならびに」の違いを比較
ここまでの内容を4つの言葉で整理すると、「および」と「ならびに」はAND側、「または」と「もしくは」はOR側と考えるとわかりやすくなります。 「および」は複数の要素をすべて含めるときに使い、「または」は複数の選択肢をつなぐときに使います。 「もしくは」も選択を示しますが、契約書や法律文では、同じカテゴリーの中にある細かな選択肢、つまり下位の項目同士を結ぶ役割で使われます。 「ならびに」は「および」と同じく併合の側にありますが、項目の階層が異なるときや、より大きなまとまりをつなぐときに使われます。
たとえば、選択関係が2段階になっている文章では、「普通自動車もしくは原動機付自転車、または自転車」のように、小さな選択を「もしくは」でつなぎ、そのまとまりと別の大きな選択肢を「または」でつなぐ考え方があります。 「もしくは」と「または」は、どちらも「どれを選ぶか」というORの仲間ですが、文章の階層を見せるために役割を分けるわけです。 一方、AND側では、同じレベルの語句を「および」でつなぎ、異なるレベルのまとまりを結ぶときに「ならびに」を使う、と考えると整理しやすくなります。
ただし、日常会話や一般的なメールで、毎回ここまで階層を意識する必要はありません。 「電車もしくはバスで来てください」と「電車またはバスで来てください」は、日常文ではどちらも選択肢を示す表現として理解されやすいでしょう。 それでも、契約書、規約、申請要領のように、1語の違いが条件や権利義務の範囲に影響する文章では、使い分けが重要です。 ANDなのかORなのか、さらに同じ階層なのか別の階層なのかという順番で考えると、4語を混同しにくくなります。
1-5. 迷ったときは「両方必要か・選べるのか」で判断する
「および」と「または」で迷ったら、まず文法用語を思い出そうとしなくてかまいません。 「AとBは両方必要なの? それともAかBを選べるの?」と、自分に問いかけてみてください。 両方必要なら「および」、選択肢を示したいなら「または」です。 この1つの確認だけで、日常文やビジネス文書の多くは判断しやすくなります。
たとえば、「申請書_本人確認書類を提出してください」という文を作るとします。 申請書と本人確認書類の2つを提出してほしいなら、「申請書および本人確認書類」が自然です。 どちらか1つで手続きできるなら、「申請書または本人確認書類」となります。 読む側でも同じで、「および」を見たら足し算のようにA+B、「または」を見たら分かれ道のようにAかB、とイメージすると覚えやすいでしょう。
そして、文章が長くなり、選択肢の中にさらに選択肢がある場合は「もしくは」、複数のまとまりをさらに大きく結ぶ場合は「ならびに」も候補になります。 最初から4語を一度に完璧に覚えようとすると混乱しやすいため、まずは「および=AND=両方」「または=OR=選択」を確実にしましょう。 そのうえで、厳密な文書では「または」と「もしくは」の階層、「および」と「ならびに」の階層を見るようにすれば、読み間違いも書き間違いも減らしやすくなります。
とくに履歴書、職務経歴書、本人確認書類、契約条件などは、「だいたい意味がわかる」で済ませず、接続詞まで丁寧に読むことが大切です。 「および」と「または」は、見た目は短い言葉ですが、必要な書類の数や手続きの条件を変えることがあります。 迷ったときは、両方を求めているのか、どちらかを選べるのかに戻って確認してください。 この基準を持っておけば、接続詞が並ぶ少しかたい文章でも、意味の骨組みを落ち着いてつかめるようになります。
2. 「および(及び)」の意味と正しい使い方
「および」と「または」は、見た目はどちらも言葉と言葉をつなぐ接続詞ですが、意味は正反対に近いので注意が必要です。「および」は、並べた要素をすべて含めるときに使う言葉です。英語で考えるなら「and」に近く、「AおよびB」と書かれていたら、基本的にはAだけでもBだけでもなく、AとBの両方をひとまとまりとして扱うと考えるとわかりやすいでしょう。一方、「または」は「or」に近く、複数の選択肢からいずれかを選ぶ関係を示します。この違いは、日常会話では小さく見えても、履歴書の提出案内、申込条件、契約書、規約などではとても大切です。「履歴書および職務経歴書」と書けば2種類とも必要ですが、「履歴書または職務経歴書」と書けば、どちらか一方でよいという読み方になります。たった3文字ほどの違いでも、必要な書類や守るべき条件が変わってしまうのですね。
表記については、日常的な文章や社内メール、案内文では「および」と平仮名で書くとやわらかく読みやすくなります。一方で、契約書や法令文、規約のような公的・正式な文書では「及び」と漢字で表記されることがあります。どちらも基本的な意味は同じなので、まずは「および=AもBも含む」と覚えておけば迷いにくくなります。では、具体例を見ながら使い方を確かめていきましょう。
2-1. 「および」は複数の要素をすべて含める接続詞
「および」のいちばん大切なポイントは、複数の要素を「選ぶ」のではなく「まとめて含める」ことです。たとえば、「申込書および本人確認書類を提出してください」と書かれていたとします。この場合は、申込書だけを出せばよいのではなく、本人確認書類だけでも足りません。申込書と本人確認書類の両方を提出するという意味になります。「どちらか好きなほうを選んでね」という意味の「または」とは、ここが大きく違います。
もう少し身近な形にすると、「氏名および住所を記入してください」も同じです。氏名だけを書いて住所を空欄にするのではなく、氏名も住所も記入することを求めています。「電話およびメールで連絡する」と書けば、電話とメールの両方が対象です。反対に「電話またはメールで連絡する」であれば、電話かメールのどちらかという選択になります。このように、「および」と「または」は、文章の見た目よりも条件の範囲を決める働きに注目すると理解しやすくなります。
契約書や規約では、この違いがさらに重要です。「住民票の写しおよび印鑑証明書を提出する」という条件なら、2種類の書類をそろえる必要があります。ここを「または」と読み違えると、1種類だけで手続きを進めようとしてしまうかもしれません。逆に、本来はどちらか一方でよい条件なのに「および」と書いてしまえば、必要以上の義務を課す文章になってしまいます。文章を書く側は「全部必要なのか、それとも選べるのか」を先に決めてから接続詞を選ぶと、意味のずれを防ぎやすくなります。
2-2. 「氏名および住所」「履歴書および職務経歴書」で使い方を確認
「および」の使い方は、実際の言い回しを見るとぐっとわかりやすくなります。まず「氏名および住所を記入してください」という文を見てみましょう。「氏名」と「住所」は、どちらも記入してほしい情報として同じ並びに置かれています。その2つを「および」で結ぶことで、「氏名も住所も書いてください」という意味になります。もし「氏名または住所を記入してください」と書けば、氏名か住所のどちらかだけでもよいように読めてしまいます。申込フォームや登録書類では、たった1語の違いで指示が変わることがよくわかります。
次に、求人応募でよくある「履歴書および職務経歴書をご提出ください」という文です。この場合も、履歴書と職務経歴書の2点が必要です。「履歴書を送ったから終わり」ではなく、職務経歴書も一緒に提出する必要があります。日常的な案内文なら「ご応募の際は、履歴書および職務経歴書をメールでお送りください」のように書くと、何をそろえるべきかがはっきり伝わります。正式な規程や契約文書では「履歴書及び職務経歴書」のように漢字で書かれる場合がありますが、意味の中心は変わりません。
ここで覚えておきたいのは、「および」の前後には、基本的に同じレベルで並べたい要素を置くということです。「履歴書」と「職務経歴書」のように、どちらも提出書類という同じグループにあるものは自然につなげられます。同じように「会社の資産および付随する権利」のように、まとめて扱いたい対象を並べることもできます。一方、項目の中にさらに小さな分類があるような複雑な文章では、接続詞を何でも「および」に統一すると関係が見えにくくなります。契約書や法律文のように階層がある文章では、「及び」「並びに」などを使い分け、どの語とどの語が同じまとまりなのかをはっきりさせることが大切です。
2-3. 2つだけでなく3つ以上を「および」でつなぐ場合の書き方
「および」は2つの要素だけでなく、3つ以上をまとめて示したいときにも使えます。たとえば、提出してほしいものが「申込書」「履歴書」「職務経歴書」の3点なら、「申込書、履歴書および職務経歴書を提出してください」のように書くと、3点すべてが必要だと伝えやすくなります。考え方はとてもシンプルで、最後の2要素を「および」で結び、それより前の要素は読点「、」で並べます。4つなら「A、B、CおよびD」のように整理できます。つまり、最後の「および」が「ここまで全部が一つの並列グループですよ」という目印になるわけです。
ただし、3つ以上の語句が出てきたら、数だけを見るのではなく「階層」がないかも確認しましょう。たとえば、文章の中に大きな分類と小さな分類が混ざると、単純な「A、BおよびC」では関係が伝わりにくくなることがあります。法令文や契約書では、選択を表す「又は」「若しくは」と、すべてを含む「及び」を組み合わせ、どこが選択肢で、どこが全部必要なのかを分けて示します。「普通自動車と原動機付自転車のどちらか」という小さな選択と、「それとは別の分類」を並べるような場合は、接続詞を階層ごとに変えることで意味を整理します。長い文章ほど、接続詞は飾りではなく「文章の設計図」になると考えるとよいでしょう。
日常のビジネス文書では、必要以上に複雑な言い回しにする必要はありません。「会議には、企画書、見積書およびスケジュール表をお持ちください」のように、同じ種類の項目を素直に並べれば十分です。大切なのは、読み手が「3つ全部必要なのか、どれか1つでよいのか」を迷わないことです。3つ以上を並べるときも、まず頭の中で「全部必要」と確認してから「および」を使うと、誤解の少ない文章になります。
2-4. 「および」と「かつ」は同じ意味?使える場面とニュアンスの違い
「および」は「and」に近く、「かつ(両方)」の意味を持つため、意味の中心だけを見ると「かつ」とかなり近い言葉です。「AおよびB」と「AかつB」は、どちらもAとBの両方を含む方向の表現だと考えると整理しやすいでしょう。ただし、いつでも機械的に置き換えればよいわけではありません。「履歴書および職務経歴書」は自然ですが、「履歴書かつ職務経歴書」とすると、書類名を並べる接続としては少し収まりが悪く感じられます。複数の名詞や項目を並べて一つのまとまりにする場面では、「および」のほうが使い方をイメージしやすいでしょう。
迷ったときは、「AもBも対象です」と言い換えて意味が通るか確かめてください。「氏名および住所」なら「氏名も住所も必要」、「履歴書および職務経歴書」なら「履歴書も職務経歴書も必要」と言い換えられます。これが「および」の核になる考え方です。「かつ」と意味が近いことだけを覚えるより、「両方を含める」という共通点を押さえたうえで、実際の文では項目を並べるなら「および」と考えると迷いにくくなります。
そして、もっとも注意したいのが「または」との混同です。「および」と「かつ」はどちらも両方を含む方向ですが、「または」は選択の方向です。たとえば「運転免許証および健康保険証を提示してください」なら2点とも必要という意味になりますが、「運転免許証または健康保険証を提示してください」ならどちらか一方という意味になります。申請条件や契約条件では、この違いがそのまま義務の範囲につながります。似た接続詞を見たら、まず「andなのか、orなのか」を確認する習慣をつけると安心です。
2-5. 「および」を使うときに読点「、」はどこに入れる?
「および」を使うたびに、その直前や直後へ必ず読点「、」を入れるわけではありません。2つの短い語句を結ぶだけなら、「氏名および住所」「履歴書および職務経歴書」のように、「および」の前後には読点を置かず、そのままつなぐ形がすっきりしています。「ご応募の際は、履歴書および職務経歴書をお送りください」のような文では、読点は「および」のためではなく、「ご応募の際は」という前置きと後ろの内容を分けるために置かれています。読点は接続詞の飾りではなく、文章のまとまりを見やすくするために使う、と考えるとわかりやすいでしょう。
3つ以上の同格の要素を並べるなら、「A、BおよびC」の形にすると整理しやすくなります。たとえば「氏名、住所および電話番号を記入してください」と書けば、氏名・住所・電話番号の3項目が並んでいることがひと目でわかります。4項目なら「氏名、住所、電話番号およびメールアドレス」のようにできます。この形では、途中の要素を読点で区切り、最後の要素の前に「および」を置きます。短い名詞の列挙なら、この形を基本にすると読み手が迷いにくくなります。
一方で、契約書などで「又は」「若しくは」「及び」が同じ文に登場する場合は、読点だけでなく接続詞そのものが文の階層を示します。小さな選択、大きな選択、そして全部を含む関係が混ざるときは、どこで区切るかによって意味の受け取り方も変わりやすくなります。そのため、長い文では「どこまでが一つのグループか」「どこから別の条件か」を確認しながら読点を置くことが重要です。まずは、2要素なら「AおよびB」、3要素なら「A、BおよびC」と覚え、そのうえで複雑な条件文では階層を確かめるとよいでしょう。
「および」は、ただ文章を堅く見せるための言葉ではありません。複数の要素をすべて含めることを、読み手にはっきり伝えるための接続詞です。「および=and=両方・全部」、「または=or=選択」という軸を持っておけば、氏名と住所の記入から履歴書の提出、契約条件の確認まで、さまざまな場面で判断しやすくなります。文章を書くときは、「読み手に全部を求めているのか、それともどれかを選んでもらうのか」を先に考え、意味に合う接続詞を選んでください。
3. 「または(又は)」の意味と正しい使い方
「または」は、いくつかある候補の中から、どれを選べるのかを読み手に伝えるための接続詞です。 漢字では「又は」と書き、英語の「or」に近い働きをします。 たとえば、「電話またはメールでご連絡ください」と書いてあれば、連絡方法として電話とメールという2つの選択肢が用意されている、と考えればよいでしょう。 一方、「履歴書および職務経歴書を提出してください」の「および」は、2つとも必要だという意味です。 つまり、「または」は選択、「および」は両方を含めることを表す点が、まず押さえておきたい大きな違いです。
ただし、日常の案内文と、契約書や規約のように意味を厳密に定める文書では、同じ「または」でも注意の仕方が少し変わります。 普段の文章では平仮名の「または」が自然ですが、法令や契約書では漢字の「又は」が使われることがあります。 さらに、法令文のように選択肢が何段階にも分かれる文章では、大きな分類を「又は」、その中の細かな分類を「若しくは」で結ぶという整理が行われます。 小さな言葉ですが、条件や権利、提出物の範囲を左右することがあるため、意味をなんとなく覚えるのではなく、例文と一緒に理解しておくことが大切です。
3-1. 「または」は複数の候補・方法・条件から選択肢を示す接続詞
「または」が活躍するのは、候補、方法、条件などを並べて、「この中から選べますよ」と伝えたい場面です。 たとえば、「来店またはオンラインで手続きできます」と書けば、手続き方法として来店とオンラインの2通りを示せます。 「本人または代理人が申請してください」であれば、申請する人として本人と代理人が候補になります。 このように、「または」は名詞だけでなく、方法や条件、行動など、同じ役割を持つ要素を横に並べるときに使えます。
ここで「および」と入れ替えてみると、違いがよく見えます。 「本人および代理人が申請してください」とすると、本人だけでも代理人だけでもよいのではなく、文面上は両方が関わるように読めます。 「本人または代理人が申請してください」なら、本人でも代理人でもよいという選択関係になります。 たった3文字ほどの違いでも、読み手が受け取る条件は大きく変わるのです。 特に申込条件、応募資格、提出書類、支払い方法などでは、「両方必要なのか」「どれかを選べばよいのか」を先に決め、その意味に合う接続詞を選びましょう。
また、「または」と「もしくは」は日常文では近い意味で使われますが、法令や契約書では役割を分けることがあります。 大きな選択肢同士を「又は」で結び、その中にある細かな選択肢を「若しくは」で結ぶ形です。 たとえば、「書面又は電子データ」という大きな分け方があり、電子データの中に「PDF若しくはWord」という細かな分け方がある、と考えるとイメージしやすいでしょう。 普段のメールではここまで細かく考えなくてもかまいませんが、条件を厳密に伝える文書では、選択肢の階層まで意識すると誤解を減らせます。
3-2. 「電話またはメール」「現金またはクレジットカード」で使い方を確認
いちばん分かりやすいのは、身近な場面で「または」を見てみることです。 「お問い合わせは、電話またはメールで受け付けています」という文では、問い合わせ方法が2つ提示されています。 読む人は、「電話を選んでもいいし、メールを選んでもいいんだな」と理解できます。 ここを「電話およびメールで受け付けています」とすると、単に2つの受付手段を並べているようにも読めますが、文脈によっては両方を求めているように感じられ、意図がぼやけることがあります。 選べることをはっきり伝えたいなら、「または」が適しています。
もう1つ、「お支払いは、現金またはクレジットカードをご利用いただけます」という例を見てみましょう。 この場合も、現金とクレジットカードが支払い方法の候補です。 お店が「どちらの方法でも支払えます」と案内したいときに、「または」を使うと簡潔に示せます。 たとえば3,000円の商品を買うとき、現金で3,000円を払う方法と、クレジットカードで3,000円を決済する方法を並べているイメージです。
ただし、実際のサービスでは、1回の支払いで現金とクレジットカードを併用できるかどうかは、店舗や決済システムのルールによって異なります。 そのため、「現金またはクレジットカード」とだけ書いた文から、併用の可否まで断定しないほうが安全です。 併用できないことを明確にしたいなら、「現金またはクレジットカードのいずれか一方でお支払いください」と書くと、読み手は迷いません。 反対に併用できるなら、「現金、クレジットカード、またはその併用が可能です」のように、両方を使えることまで文章に入れると親切です。
この考え方は、「郵送または持参」「運転免許証またはマイナンバーカード」「午前10時または午後2時」のような表現でも同じです。 選択肢を示すだけで足りるのか、それとも「1つだけ」「複数でもよい」まで決める必要があるのかを考えると、文がぐっと正確になります。
3-3. 「または」は必ず「どちらか一方だけ」を意味するのか
ここは、とても大切なポイントです。 「または」は基本的に選択肢を示す言葉ですが、書いただけで必ず「どちらか一方だけで、両方は絶対に不可」という意味になるとは限りません。 日常の日本語では、場面や常識から「どちらか一方」と受け取ることもあれば、両方が可能でも不自然ではないことがあります。 つまり、「または」だけに全部を任せると、読み手によって受け取り方が変わる余地が残るのです。
たとえば、「参加者は帽子または日傘を用意してください」と言われたとします。 帽子だけでも条件を満たしそうですし、日傘だけでもよさそうです。 けれども、帽子と日傘を両方持ってきたからといって、普通は条件違反とは考えにくいでしょう。 一方、「景品はA賞またはB賞のどちらか1つです」と書かれていれば、A賞とB賞を両方もらえるわけではないと明確に分かります。 この違いを作っているのは、「または」そのものだけではなく、「どちらか1つ」「いずれか一方」といった補足や、文全体の目的です。
そのため、応募要項、キャンペーン規約、契約条件など、解釈の違いがトラブルにつながる文書では、排他的に選ばせたいなら言葉を足しましょう。 「AまたはBのいずれか一方を選択してください」「提出書類は、運転免許証またはマイナンバーカードのうち1点です」のように書けば、必要数まで伝えられます。 逆に、AだけでもBだけでも両方でもよいなら、「AまたはB、あるいはその両方」のように書くと、選択範囲がはっきりします。
「および/または」という表現を見かけることもありますが、読み手によっては意味を取りにくく感じることがあります。 「A、Bのいずれか、または両方」のように言い換えれば、何が許されているのかを文章だけで確認できます。 大切なのは、接続詞を難しくすることではありません。 読み手が「結局、何を選べばいいの?」と迷わない形にすることです。
3-4. 「A、BまたはC」のように3つ以上の選択肢を並べる方法
選択肢が3つ以上あるときは、「AまたはBまたはC」と何度も「または」を繰り返すより、最後の項目の前に置いて「A、BまたはC」とまとめると読みやすくなります。 たとえば、「本人確認書類として、運転免許証、マイナンバーカードまたはパスポートを提示してください」という形です。 この文なら、3種類の書類が同じレベルの選択肢として並んでいることが分かります。
4つなら、「A、B、CまたはD」のように、途中は読点で区切り、最後の2項目の間に「または」を置く形にできます。 たとえば、「連絡方法は、電話、メール、チャットまたは郵送から選べます」とすれば、候補は4つです。 「または」が1回しか出てこなくても、前に並んでいる項目まで含めて選択肢として読めます。 ただし、項目が長いときは、1文に詰め込みすぎると関係が分かりにくくなるため、箇条書きにする方法も考えましょう。
さらに注意したいのが、選択肢の中に小さな選択肢が入っている場合です。 法令や契約書では、大きな分類を「又は」、その下の細かな分類を「若しくは」で結び、階層を見せることがあります。 たとえば、「国内店舗若しくは国内倉庫、又は海外拠点」という形なら、「国内」というまとまりの中に店舗と倉庫があり、そのまとまりと海外拠点が大きな選択関係にある、と整理できます。 日常の案内文では、無理に「若しくは」を使うより、「国内の店舗・倉庫、または海外拠点」のように言い換えたほうが、子供でも関係を追いやすい文章になることがあります。
3つ以上を並べるときは、すべての項目が本当に同じ種類なのかも確認してください。 「電話、メールまたは平日」という並べ方では、電話とメールは連絡方法ですが、平日は日時なので、同じ仲間ではありません。 「連絡方法は電話またはメール、受付日は平日です」のように分けると、文の構造がきれいになります。
3-5. 「または」と「あるいは」はどう使い分ける?
「または」と「あるいは」は、どちらも選択肢を示すときに使えるため、日常文では入れ替えても意味が大きく変わらない場面がたくさんあります。 「電話またはメールでご連絡ください」と「電話あるいはメールでご連絡ください」は、どちらも電話とメールを候補として示しています。 そのため、まずは「どちらが正解か」と難しく考えすぎなくても大丈夫です。
違いを出すなら、文章の雰囲気と用途を見ます。 「または」は案内、説明、手順、申込条件などで使いやすく、選択肢をまっすぐ示す表現です。 「あるいは」は少し文章語らしい響きがあり、「別の可能性」を提示したり、言い換えに近い感覚で次の候補を示したりするときにもなじみます。 たとえば、「この結果は入力ミス、あるいはシステム設定の違いによる可能性があります」と書くと、原因の候補を順に考えているような流れを作れます。
一方、契約書や法令のように用語の使い分けが重要な文書では、読みやすさだけで自由に置き換えないほうが安全です。 選択関係を厳密に表すために「又は」「若しくは」が使い分けられている場合、「あるいは」に直すと、もとの階層や文書上の慣例が見えにくくなることがあります。 日常のWebページやメールでは自然さを優先し、規約や契約条件では既存の表記ルールや文書全体の統一を優先する、と考えるとよいでしょう。
迷ったときは、まず「選択肢を簡潔に並べたいのか」「別の可能性をやわらかく示したいのか」を考えてください。 前者なら「または」、後者なら「あるいは」が使いやすい傾向があります。 そして、「どちらか1つだけ」「両方でもよい」といった条件まで重要なら、接続詞だけで済ませず、その条件を言葉にして補いましょう。 そうすれば、「および」と「または」の違いも、「または」と「あるいは」の違いも、読み手にとってずっと分かりやすい文章になります。
4. 「および」と「または」を具体例で比較する
「および」と「または」の違いは、言葉の意味だけを覚えるより、具体的な場面に置き換えて考えると、ぐっと分かりやすくなります。 簡単にいうと、「AおよびB」はAとBの両方を含み、「AまたはB」はAかBという選択肢を示す表現です。 英語に置き換えるなら、「および」は「and」、「または」は「or」に近い関係だと考えるとよいでしょう。
たった数文字の違いですが、提出書類、申込方法、支払方法、参加条件、契約条件などでは、読み手がしなければならないことが大きく変わります。 たとえば、「住民票および印鑑証明書を提出してください」と書かれていれば、住民票だけを持っていっても足りません。 一方、「住民票または印鑑証明書を提出してください」であれば、住民票と印鑑証明書が選択肢として示されています。
ここで大切なのは、「なんとなく似ている言葉」として読まないことです。 「および」が出てきたら『両方なのかな』、「または」が出てきたら『選べるのかな』と立ち止まるだけでも、読み間違いはかなり防ぎやすくなります。 それでは、身近な5つの場面を使って比べてみましょう。
4-1. 提出書類|「住民票および印鑑証明書」と「住民票または印鑑証明書」
まずは、役所の手続きや契約手続きなどでよく目にする提出書類を例に考えてみましょう。 案内に「提出書類は、住民票および印鑑証明書です」と書かれていたとします。 この場合の「および」は、2つの書類をまとめて必要なものとして結んでいるため、住民票と印鑑証明書の両方を準備するという意味になります。
たとえば、田中さんが住民票だけを持って受付に行ったとしましょう。 「住民票は持ってきたから大丈夫」と思っていても、案内が「住民票および印鑑証明書」であれば、印鑑証明書が不足しています。 2種類の書類のうち1種類だけでは、案内された条件をすべて満たしていないことになるわけです。
これに対して、「提出書類は、住民票または印鑑証明書です」と書かれていれば意味が変わります。 「または」は選択関係を示すため、住民票と印鑑証明書が候補として並べられていると理解できます。 つまり、「および」は2種類をセットで考え、「または」は選択肢として考えるのが基本です。
提出書類の案内では、この違いがとても重要です。 書き手が本当は「どちらか1種類でよい」と考えているのに「および」と書けば、読む人は「2種類とも必要なのだ」と受け取る可能性があります。 反対に、両方提出してほしいのに「または」と書けば、「1種類だけ提出すればよいのだ」と理解される可能性があります。 提出物を案内するときは、「全部必要なのか」「選んでよいのか」を最初に決めてから接続詞を選びましょう。
4-2. 申込方法|「電話およびメール」と「電話またはメール」
次は、セミナーやサービスへの申込方法を考えてみましょう。 案内文に「お申し込みは、電話およびメールでお願いします」と書かれている場合、「および」は電話とメールを併せる働きをします。 そのため、素直に読めば、電話だけでなくメールでも手続きを行う必要があると受け取られやすい文章です。
たとえば、鈴木さんが午前10時に電話で申し込み、その後、氏名や連絡先をメールで送る仕組みなら、「電話およびメール」という表現にも理由があります。 電話で参加意思を伝え、メールで必要事項を提出するというように、2つの手段を両方使ってほしいからです。
一方、「お申し込みは、電話またはメールでお願いします」であれば、電話とメールが申込手段の選択肢になります。 電話が苦手な人はメールを選び、すぐに確認したい人は電話を選ぶ、といった使い方ができます。 案内文でよく見かける「お問い合わせは電話またはメールで受け付けます」という表現も、同じ考え方です。
ここで覚えておきたいのは、申込方法では接続詞ひとつで利用者の負担が変わることです。 「および」と書けば2つの行動を求める意味になりやすく、「または」と書けば選択できる意味になります。 どちらか一方で申し込みが完了するのであれば、「電話またはメール」のほうが意図を伝えやすいでしょう。 逆に、電話受付のあとにメール送信も必須なのであれば、「電話で仮申し込みをした後、確認メールを送信してください」のように手順まで具体的に書くと、さらに親切です。
4-3. 支払方法|「現金および商品券」と「現金または商品券」
支払方法でも、「および」と「または」を入れ替えるだけで意味が大きく変わります。 「支払いには現金および商品券を使用してください」と書けば、現金と商品券の両方を組み合わせるように読めます。 たとえば、5,000円の商品について、商品券3,000円分と現金2,000円を組み合わせて支払うようなイメージです。
ところが、お店が伝えたいことが「現金でも商品券でも支払えます」という意味なら、「現金および商品券」では分かりにくくなります。 その場合は「現金または商品券をご利用いただけます」としたほうが、2つの支払方法から選択できることが伝わりやすくなります。
子供のお買い物に置き換えると簡単です。 「りんごおよびみかんを買ってきてね」と言われたら、りんごもみかんも買う必要があります。 「りんごまたはみかんを買ってきてね」なら、りんごかみかんを選ぶ話になります。 支払方法も同じで、「および」は組み合わせ、「または」は選択と考えると整理しやすいのです。
特に料金表、利用規約、店舗案内などでは、「利用できる支払方法を並べているだけなのか」「複数の方法を併用しなければならないのか」が一目で分かる文章にすることが大切です。 支払う側に「結局、現金も必要なの?」という疑問を持たせないためにも、「現金または商品券からお選びいただけます」のように、必要であれば「選べる」という意味を補うと、さらに誤解を防ぎやすくなります。
4-4. 参加条件|「東京都在住および18歳以上」と「東京都在住または18歳以上」
参加条件では、「および」と「または」の違いが、対象者そのものを変えてしまいます。 たとえば、「応募できる方は、東京都在住および18歳以上の方です」と書かれていたとしましょう。 この場合は、「東京都に住んでいること」と「18歳以上であること」の両方を満たす人が対象になります。
東京都新宿区に住む20歳の佐藤さんなら、2つの条件を満たしています。 一方、東京都に住んでいても17歳なら、「18歳以上」という条件を満たしていません。 また、25歳でも大阪府に住んでいれば、「東京都在住」という条件を満たしていません。 「および」で結ばれた条件は、チェック項目が2つあり、その両方に丸が付く人を探すイメージです。
では、「東京都在住または18歳以上の方」と書いたらどうでしょうか。 今度は2つの条件が選択関係になるため、「東京都在住」と「18歳以上」のどちらを満たす人なのか、という読み方になります。 先ほどの文章より対象となる範囲が広くなることが分かります。
この違いは、キャンペーン、イベント、求人、会員募集などの条件を書くときに特に重要です。 対象者を限定したいのに「または」を使うと、本来想定していたより広い人が条件に当てはまる文章になることがあります。 反対に、「どちらかの条件を満たせばよい」としたいのに「および」を使うと、対象者を必要以上に狭めてしまいます。 参加条件を書くときは、1つずつ条件を○×で判定し、「全部○が必要ならおよび」「選択関係ならまたは」と考えると分かりやすいでしょう。
4-5. 契約条件|「AおよびB」と「AまたはB」で権利・義務の範囲がどう変わる?
「および」と「または」の違いを最も慎重に確認したいのが、契約書や規約などの文章です。 日常会話なら少しくらい曖昧でも、相手に聞き直して確認できます。 しかし、契約条件では、どの条件を満たせば権利が発生するのか、どこまで義務を負うのかを文章で明確にする必要があります。
たとえば、「利用者はAおよびBを実施しなければならない」と定めた場合を考えてみましょう。 「および」は複数の要素をすべて含む併合関係を表すため、Aだけを実施してBを行わない状態では、文章上、求められた内容をすべて実施したことにはなりません。 AとBの両方が義務として並べられていると理解できます。
これを「利用者はAまたはBを実施しなければならない」とすると、AとBが選択関係になります。 つまり、同じAとBでも、間に置く言葉を変えただけで、要求される行動の範囲が変わります。 「AおよびB」は条件を重ねる方向に働き、「AまたはB」は選択肢を設ける方向に働くと考えると理解しやすいでしょう。
権利についても同じです。 「AおよびBを満たした場合、返金を請求できる」と書けば、AとBの両方を満たすことが権利発生の条件として読まれます。 一方、「AまたはBを満たした場合、返金を請求できる」と書けば、条件が選択関係になります。 たった1語を変えただけなのに、返金を請求できる人の範囲が変わり得るのです。
さらに、契約書では複数の項目や階層が組み合わされることがあります。 選択関係を示す語と、すべてを含む関係を示す語が1つの文章に入ると、「どの言葉とどの言葉が結ばれているのか」が分かりにくくなります。 そのため、複雑な条件では、接続詞だけに頼らず、項目を分けたり、括弧を使ったり、「次の各号のすべてを満たす場合」「次のいずれかに該当する場合」のような補足を加えたりすると、意味を整理しやすくなります。
「および」と「または」を見分けるときは、難しく考えすぎなくても大丈夫です。 まず紙に「A」と「B」を書き、「AもBも必要なのか」「AかBを選ぶのか」と問いかけてみてください。 AもBも必要なら「および」、選択関係なら「または」という基本に戻れば、提出書類でも申込方法でも契約条件でも判断しやすくなります。
特に重要な文書では、読み手が自分と同じ意味に理解するとは限りません。 接続詞を正しく選ぶことに加えて、「両方必要です」「いずれかを選択してください」などの説明を添え、解釈の余地を小さくすることも意識しましょう。 「および」と「または」の違いを正しく理解できれば、ただ文章がきれいになるだけではなく、条件やルールを相手へ正確に伝えやすくなります。
5. 「または」と「もしくは(若しくは)」の違い
「または」と「もしくは」は、どちらも「AかBか」という選択を表す言葉です。 英語で考えると、どちらも「or」に近い働きをします。 そのため、日常会話だけを見れば「どちらを使っても同じでは?」と感じるかもしれません。 でも、契約書や規約、法令のように、一つの言葉で権利や義務の範囲が変わる文章では、少し大切な違いがあります。 「又は」は大きな選択肢をつなぎ、「若しくは」はその大きな選択肢の中にある小さな選択肢をつなぐ、という階層の考え方です。 まずは「意味がまったく別の言葉」ではなく、「同じORを、文章の階層に応じて使い分ける言葉」だと考えると分かりやすいでしょう。
5-1. 「または」と「もしくは」はどちらもORを表す
「または」と「もしくは」の共通点から見てみましょう。 たとえば、「支払いは現金またはクレジットカードでお願いします」と書いてあれば、現金とクレジットカードが選択肢として並んでいます。 「会場までは電車もしくはバスをご利用ください」と書かれていても、電車とバスのどちらかを選ぶ関係です。 つまり、どちらも「複数の候補を並べ、その中から選ぶ」という役割を持っています。 反対に、「履歴書および職務経歴書を提出してください」の「および」は、両方を含める意味です。 「または/もしくは=OR」、「および=AND」と整理すると、まず大きな混乱を防げます。
ここで注意したいのは、漢字表記と平仮名表記です。 法令や契約書では「又は」「若しくは」と漢字で書かれることが多い一方、社内メール、案内文、Webサイトなどでは「または」「もしくは」と平仮名で書くと自然です。 意味の中心は変わりません。 違いが出てくるのは、とくに複数の選択肢が入れ子になったときです。 選択肢が2つだけなら、「電話またはメール」「現金もしくはクレジットカード」のように書いても、日常文では意味をつかみやすいでしょう。 しかし、3つ、4つと候補が増え、その中に「同じグループの候補」と「別グループの候補」が混ざると、どこまでが一まとまりなのか分かりにくくなります。 そこで法令文では、「又は」と「若しくは」を使い分け、文章の中に見えないかっこを作るように整理します。
5-2. 法令・契約書では「又は」が大きな選択、「若しくは」がその中の小さな選択に使われる
法令や契約書での基本的な考え方は、とてもシンプルです。 大きなグループ同士を選ばせるときは「又は」、そのグループの中にある細かな候補を選ばせるときは「若しくは」を使います。 たとえば、おもちゃ箱を想像してみてください。 「乗り物の箱」と「文房具の箱」という2つの大きな箱があり、乗り物の箱の中には「自動車」と「原動機付自転車」、文房具の箱の中には「鉛筆」と「ボールペン」が入っているとします。 大きな箱を選ぶ関係が「又は」、箱の中身を選ぶ関係が「若しくは」です。 このように考えると、難しそうな法令用語もずっと読みやすくなります。
たとえば、「普通自動車若しくは原動機付自転車、又は自転車」という形なら、まず「普通自動車」と「原動機付自転車」が小さなグループとして結ばれます。 そのまとまり全体と「自転車」が、上位の「又は」で結ばれている、と読めます。 見えないかっこを付けるなら、「(普通自動車若しくは原動機付自転車)又は自転車」です。 「若しくは」が先に小さなまとまりを作り、「又は」がそのまとまりと別の候補をつなぐ、と覚えるとよいでしょう。
契約書では、この階層を間違えると条件の範囲がぼやけます。 たとえば、「国内工場又は海外工場のAライン又はBラインから納品する」と書くと、「Aライン」「Bライン」が国内工場にも海外工場にもかかるのか、海外工場だけにかかるのかが読み取りにくくなります。 一方、「国内工場又は海外工場のAライン若しくはBラインから納品する」のように階層を示せば、「海外工場」という大きな選択肢の中に「Aライン」と「Bライン」がある、という構造を表しやすくなります。 法令・契約書では、言葉を飾るためではなく、選択肢のグループ分けを明確にするために「又は」「若しくは」を使い分けるのです。
5-3. 「書面又は電子メール若しくはFAX」の構造から選択範囲を理解する
「書面又は電子メール若しくはFAX」という例を見ると、使い分けがさらに分かりやすくなります。 この文章を左から順番に読むだけだと、「書面」「電子メール」「FAX」という3つが同じレベルで並んでいるように見えるかもしれません。 しかし、法令・契約書の階層ルールで読むと、「書面又は(電子メール若しくはFAX)」という構造になります。 「電子メール」と「FAX」が「若しくは」で結ばれた小さなグループで、そのグループ全体と「書面」が「又は」で結ばれているわけです。
これを「紙の方法」と「電子・通信の方法」という2つの箱に分けて考えると、さらに理解しやすいでしょう。 大きな選択は「書面」か「電子メール・FAXのグループ」かです。 そして後者の箱を選んだ場合、その中で「電子メール」か「FAX」かを選びます。 文章にかっこがなくても、「若しくは」が見えたら、その前後に小さなまとまりがあるのではないか、と考えてみてください。 反対に「又は」が出てきたら、それより大きなまとまり同士を結んでいないかを確認します。 この読み方が身に付くと、長い規約や契約条項でも、選択範囲を整理しやすくなります。
もし「書面又は電子メール又はFAX」と「又は」だけを繰り返すと、3つがすべて同じ階層の選択肢であるように見えます。 日常的な案内なら、それでも意味は十分伝わることがあります。 しかし、どの候補がどのグループに属するかが重要な契約条件では、階層を示す書き方のほうが誤読を減らせます。 とくに、提出方法、解除条件、本人確認書類、支払い方法など、条件を読み違えると実務上の問題につながる部分では、「又は」と「若しくは」の位置を丁寧に確認しましょう。
5-4. 道路交通法のような法令で「又は」「若しくは」が使い分けられる考え方
道路交通法のような法令を読むときも、ポイントは「単語を一つずつ見る」のではなく、「どの言葉とどの言葉が一つのグループなのか」を見ることです。 車両に関する文章には、「自動車」「原動機付自転車」「自転車」など、似た種類の言葉がいくつも登場します。 そこで「この2つは同じ小分類なのか」「それとも別の大きなまとまりをつないでいるのか」と考えると、接続詞の役割をつかみやすくなります。
ただし、「自動車と原動機付自転車が並んだら、必ず『若しくは』になる」と丸暗記するのは避けたほうがよいでしょう。 実際の道路交通法には、「自動車又は原動機付自転車」のように「又は」で両者を結ぶ条文もあります。 たとえば第68条では、2人以上の運転者が2台以上の自動車または原動機付自転車を連ねて通行させる場合などについて、「又は」が使われています。 ここから分かるのは、「若しくは」は特定の単語専用ではなく、文全体の階層を示すための接続詞だということです。 単語の種類だけで判断せず、その条文の中で選択肢が何段階に分かれているかを見る必要があります。
法令は、国民の権利や義務を正確に示すため、日常文よりも接続関係を厳密に表します。 長い条文で「若しくは」と「又は」が続いたら、まず「若しくは」でつながる部分を小さなかっこで囲み、そのまとまりを「又は」で大きくつなぐイメージで読んでみてください。 たとえば「A若しくはB又はC」とあれば、「(A若しくはB)又はC」と捉えると、階層を見つけやすくなります。 「又は」「若しくは」は難しい法律用語に見えますが、実際には文章の地図にある「ここが小道、ここが大通り」という目印のようなものです。 目印として読めるようになると、条文の長さに圧倒されにくくなります。
5-5. 日常会話やビジネスメールでは「または」と「もしくは」をどう使う?
日常会話や一般的なビジネスメールでは、法令のように「または」と「もしくは」を厳密に階層分けしなくても、多くの場合は問題なく意味が伝わります。 たとえば、「ご連絡は電話またはメールでお願いします」「会場へは電車もしくはバスでお越しください」のどちらも自然です。 表記も、一般向けの文章では漢字の「又は」「若しくは」より、平仮名の「または」「もしくは」のほうがやわらかく読みやすい印象になります。 とくにメールやWebサイトでは、読み手が一度で理解できることを優先するとよいでしょう。
使い分けに迷ったら、日常文ではまず「または」を基本にすると整理しやすくなります。 「お支払いは現金またはクレジットカードでお願いします」「資料はPDFまたはWord形式でお送りください」のように、2つの候補を並べるだけなら十分に明確です。 一方、「もしくは」は、別の候補を示したいときにも自然に使えます。 ただし、一つのメールで「または」「もしくは」を何となく交互に使うと、読み手が「何か意味に違いがあるのかな」と迷うことがあります。 特別な意図がないなら、同じレベルの選択肢では表現をそろえるほうが親切です。
そして、契約条件や社内規程のように解釈の正確さが必要な文章になったら、日常文の感覚から一段切り替えましょう。 大きな選択には「又は」、その中の小さな選択には「若しくは」という階層を意識します。 普段のメールでは読みやすさを優先し、法令・契約書では構造の正確さを優先する、という使い分けです。 「または」と「もしくは」は敵同士ではありません。 どちらもORを表す仲間であり、厳密な文章では役割分担をしている、と理解しておけば十分です。 そう考えると、これまで少し難しく見えていた「又は」「若しくは」も、文章の選択肢を整理してくれる便利なサインに見えてくるでしょう。
6. 「および」と「ならびに(並びに)」の違い
「および」と「ならびに」は、どちらも複数のものを一緒に扱うときに使う接続詞です。 そのため、ふだんの文章では「どちらを使っても同じなのでは?」と感じやすい言葉です。 けれども、契約書や規約、法律のように、誰と誰、何と何がひとまとまりなのかを正確に示したい文章では、2つには大切な役割の違いがあります。 いちばん覚えておきたいのは、「及び」は小さなまとまりを結び、「並びに」はそれより大きなまとまりを結ぶという考え方です。 このルールが分かると、長くて難しそうな文章でも、積み木を分けるように構造を整理して読めるようになります。
6-1. 「および」と「ならびに」はどちらもANDを表す
まずは、いちばん基本の意味から見ていきましょう。 「および(及び)」も「ならびに(並びに)」も、英語でいえばANDに近く、前後の要素を「両方とも含める」という関係を表します。 たとえば、「履歴書および職務経歴書を提出してください」と書かれていれば、履歴書だけ、または職務経歴書だけを出せばよいという意味ではありません。 履歴書と職務経歴書の両方が必要という意味です。 ここを「または」と読み違えると、提出条件そのものが変わってしまいます。
同じことは「ならびに」にもいえます。 たとえば、「営業部ならびに管理部が参加する」とあれば、営業部か管理部のどちらか一方ではなく、営業部と管理部の両方が対象です。 つまり、「および」と「ならびに」は、選択肢を示す言葉ではなく、複数の対象を合わせる言葉だと考えると分かりやすいでしょう。 子供向けにたとえるなら、「りんごおよびみかんをかごに入れてね」と言われたら、りんごもみかんも入れる、ということです。 「りんごまたはみかん」なら、どちらかを選ぶことになります。 まずはこのANDとORの違いをしっかり分けておくことが、後の階層構造を理解する土台になります。
日常のメールや案内文では、「および」を平仮名で書くことも多く、文章がやわらかく見えます。 一方、契約書や規程などでは「及び」と漢字で表記されることがあります。 表記が変わっても、基本となる「両方を含む」という意味は同じです。 大切なのは、漢字か平仮名かだけを見るのではなく、前後の項目がどのような関係で結ばれているかを見ることです。
6-2. 「及び」は小さなまとまり、「並びに」は大きなまとまりを結ぶ
「及び」と「並びに」の違いがはっきり表れるのは、文章の中に複数のグループがあるときです。 「及び」は同じグループの中にある小さな要素を結び、「並びに」はグループ同士を結ぶと考えてください。 たとえば、会社の研修に「営業部の東京チームと大阪チーム」、そして「管理部の人事チームと経理チーム」が参加するとします。 この関係を階層が分かるように書くなら、「東京チーム及び大阪チーム並びに人事チーム及び経理チーム」のような形で表せます。
ここでは、「東京チーム」と「大阪チーム」が1つの小さなまとまりです。 この2つを結ぶのが「及び」です。 同じように、「人事チーム」と「経理チーム」も1つの小さなまとまりなので、「及び」で結びます。 そして、「東京チーム及び大阪チーム」というまとまりと、「人事チーム及び経理チーム」というまとまりを、さらに大きな単位で結ぶのが「並びに」です。 式のように見ると、(東京チーム AND 大阪チーム)AND(人事チーム AND 経理チーム)という構造です。
文章が短く、並べるものが2つしかない場合は、わざわざ「並びに」を使わなくても意味は十分に伝わります。 たとえば、「氏名及び住所を記入してください」であれば、「氏名」と「住所」という2項目を同じレベルで並べているだけなので、「及び」で自然に整理できます。 ところが、項目が増えて「個人情報のグループ」と「勤務情報のグループ」のような大きな分類が生まれると、「並びに」を使う意味が出てきます。 「並びに」は単に「及び」を難しく言い換えた言葉ではなく、文章の中にあるグループの境目を見せる目印なのです。
6-3. 「A及びB並びにC及びD」のような階層構造を読み解く
契約書や利用規約で「A及びB並びにC及びD」という表現を見つけると、少し身構えてしまうかもしれません。 でも、読み方はそれほど難しくありません。 いきなり左から右へ全部を一続きに読むのではなく、まず「及び」で結ばれている部分を探します。 すると、「A及びB」と「C及びD」という2つの小さなまとまりが見つかります。 その次に、その2つを「並びに」が結んでいると考えます。 つまり、構造は「(A及びB)並びに(C及びD)」です。
具体例で考えてみましょう。 ある社内規程に「社員証及び本人確認書類並びに申請書及び同意書を提出する」と書かれていたとします。 この場合、「社員証+本人確認書類」が第1グループ、「申請書+同意書」が第2グループです。 そして「並びに」が2つのグループをまとめています。 したがって、基本的には4種類すべてが並列的に求められていると読めます。 「社員証か本人確認書類のどちらかでよい」と読むのは、「及び」をORの意味に取り違えているため適切ではありません。
読み解くときのコツは、接続詞を見つけたら頭の中で括弧を付けることです。 「A及びB並びにC及びD」なら、「(A及びB)並びに(C及びD)」とします。 さらに項目名が具体的なら、「(履歴書及び職務経歴書)並びに(住民票及び印鑑証明書)」のように書き換えてみると、まとまりが目で追いやすくなります。 長い文を読むときは、接続詞をただの飾りとして飛ばさず、どこからどこまでが1グループなのかを示す記号のように扱うと、意味を取り違えにくくなります。
逆に、文章を書く側もこの考え方を持っておくと便利です。 同じ階層の項目をただ延々と「及び」でつなぐより、小さなグループと大きなグループを意識して接続詞を選んだほうが、読み手は構造をつかみやすくなります。 とくに権利、義務、提出物、参加条件のように、「何が含まれるのか」が重要な文書では、接続詞1つで受け取り方が変わり得ます。 だからこそ、長い文ほど「単語の意味」ではなく「まとまりの階層」を見ることが大切です。
6-4. 「および」「ならびに」を日常文・ビジネス文書で使い分ける基準
日常文では、法律文書ほど細かく「及び」と「並びに」の階層を作らなくても、意味が通じることが多いでしょう。 たとえば、社内メールで「会議には営業部および管理部が参加します」と書けば、普通は十分に意味が伝わります。 わざわざ「営業部ならびに管理部」としなければ誤り、ということではありません。 読み手にすばやく理解してもらうことが目的なら、平仮名の「および」を使ったり、「と」に置き換えたりするほうが自然な場合もあります。
一方、契約書、就業規則、利用規約、申請要領など、条件を厳密に示したい文書では話が変わります。 このような文章では、「誰が対象か」「何を提出するのか」「どの条件をすべて満たすのか」を曖昧にしないことが大切です。 小さな項目同士を「及び」で結び、その小さなまとまり同士を「並びに」で結ぶと、文章の構造を示しやすくなります。 たとえば、「氏名及び住所並びに勤務先名及び勤務先所在地」とすれば、「氏名+住所」と「勤務先名+勤務先所在地」という2つのまとまりが見えます。
使い分けに迷ったら、3つの質問をしてみてください。 1つ目は「前後の項目は両方必要か」です。 両方を含めるならANDの仲間である「及び」「並びに」が候補になります。 2つ目は「項目の中に小さなグループがあるか」です。 グループがなければ「及び」で足りることが多く、グループ同士を結ぶ必要があるなら「並びに」が役立ちます。 3つ目は「この文書は読みやすさと厳密さのどちらを強く求めるか」です。 日常メールなら自然さを優先し、契約書などでは階層が伝わる書き方を優先すると判断しやすくなります。
なお、難しい接続詞を使えば文章が正確になるとは限りません。 たとえば、1文の中に5個、6個と項目を詰め込むと、「及び」と「並びに」を正しく使っていても読みにくくなることがあります。 その場合は、箇条書きに分ける、文を2つに分ける、対象となるグループ名を先に示すなどの工夫も有効です。 接続詞は文章を難しくするためではなく、読み手に関係を正確に伝えるために使うものだと覚えておきましょう。
6-5. 「又は・若しくは」と「及び・並びに」の関係をセットで整理する
最後に、「又は(または)」「若しくは(もしくは)」も一緒に整理しておきましょう。 ここまで見てきた「及び」「並びに」はAND、つまり複数の要素を合わせる関係です。 これに対して、「又は」「若しくは」はOR、つまり複数の候補から選択する関係を表します。 「及び・並びに」は併合、「又は・若しくは」は選択と分けると、まず大きな混乱を防げます。
さらに、ORの仲間にも階層があります。 細かな選択肢、つまり同じカテゴリーの中の下位項目を結ぶときには「若しくは」を使い、より大きな選択肢や上位のまとまりを結ぶときには「又は」を使う考え方があります。 たとえば、「本人若しくは代理人」のように細かな選択肢を示し、それを別の大きな手続方法と分ける場合に「又は」を置く、という形です。 AND側では、小さなまとまりに「及び」、大きなまとまりに「並びに」を使います。 この対応を並べると、文章の設計図が見えやすくなります。
たとえば、「書面又は電子メール若しくはFAX」と書かれていれば、選択関係を読み取る必要があります。 一方、「履歴書及び職務経歴書並びに住民票及び印鑑証明書」と書かれていれば、こちらは併合関係です。 前者をANDだと思うと、書面、電子メール、FAXの全部が必要だと誤解しかねません。 後者をORだと思うと、本来必要な書類を1種類だけ出せばよいと誤解しかねません。 契約条件や申請条件では、この違いがそのまま義務の範囲に影響するため、接続詞を見落とさないことが大切です。
覚え方はシンプルです。 ANDなら「及び・並びに」、ORなら「若しくは・又は」と、まず2つの箱に分けます。 そのうえで、ANDの箱では「及び=小、並びに=大」、ORの箱では「若しくは=小、又は=大」と整理してみてください。 日常文ではここまで厳密な使い分けが必要ない場面もありますが、契約書や規程を読むときには、この4語をセットで知っているだけで文章の見え方がかなり変わります。 長い文章に出会っても、接続詞ごとに小さなまとまりを作り、最後に大きなまとまりへ組み立てていけば、落ち着いて意味を追えるようになります。
7. 「および」と「または」が1つの文章に混在するときの読み方
「および」と「または」は、それぞれ単独で使われているときには、それほど難しい言葉ではありません。
「AおよびB」なら、基本的にはAとBの両方を含み、「AまたはB」なら、AとBを選択肢として示します。
英語に置き換えて考えるなら、「および」はand、「または」はorに近い役割だと考えると分かりやすいでしょう。
ところが、1つの文章の中に「および」と「または」が同時に登場すると、急に読み方が難しくなります。
たとえば、「AおよびBまたはC」と書かれていたら、AとBを1つのまとまりとして考えるのか、それともBとCを1つのまとまりとして考えるのかが、文章だけでは分かりにくい場合があります。
大切なのは、接続詞を1語ずつ見るのではなく、どの言葉とどの言葉が同じグループになっているのかを確認することです。
契約書、就業規則、申込条件、社内規程など、条件によって権利や義務が変わる文章では、このグループ分けが少し違うだけでも意味が大きく変わることがあります。
ここからは、少しパズルを解くような気持ちで、「および」と「または」が混ざった文章の読み方を順番に整理していきましょう。
7-1. 「AおよびBまたはC」はどこで区切るかによって意味が変わり得る
まず覚えておきたいのが、「AおよびBまたはC」という形の文章は、区切り方によって異なる意味に読めることがあるという点です。
たとえば、あるイベントの参加条件に「社員証および招待状または特別入場券を提示してください」と書かれていたとしましょう。
この文章を「社員証および招待状」を1つのグループとして読めば、「社員証と招待状の両方を提示する」か、「特別入場券を提示する」かの2通りになります。
つまり、記号で表すと「(社員証および招待状)または特別入場券」です。
一方で、「招待状または特別入場券」を1つのグループとして読むと、「社員証は必ず必要で、そのうえで招待状か特別入場券のどちらかを提示する」という条件になります。
こちらは「社員証および(招待状または特別入場券)」という構造です。
同じ言葉が同じ順番で並んでいるのに、必要になる書類の数まで変わってしまうのです。
前者なら特別入場券1枚だけで条件を満たす可能性がありますが、後者なら社員証を含めて2種類の書類が必要になります。
これが、「および」と「または」が混在する文章で気を付けたいポイントです。
読み手が頭の中で区切りを補わなければならない文章は、書き手の意図とは違う読み方をされる余地があります。
特に「および」は複数の要素をまとめて含める働きを持ち、「または」は選択関係を示すため、この2つが隣接すると「どこまでが両方必要で、どこからが選択なのか」が重要になります。
読む側では接続詞だけを追わず、「もしここにカッコを付けるなら、どこからどこまでだろう」と考えると、文章の構造をつかみやすくなります。
7-2. 「(AおよびB)またはC」と「Aおよび(BまたはC)」の違い
「(AおよびB)またはC」と「Aおよび(BまたはC)」は、見た目はとてもよく似ていますが、条件の成立方法は大きく異なります。
まず、「(AおよびB)またはC」では、AとBがセットです。
条件を満たす方法は、「AとBの両方をそろえる」か、「Cだけをそろえる」かのどちらかになります。
たとえば、「(履歴書および職務経歴書)または指定申込フォーム」と書けば、履歴書と職務経歴書を2点セットで提出する方法と、指定申込フォームを提出する方法が選択肢になります。
この場合、指定申込フォームを選ぶ人には、履歴書と職務経歴書を要求しないという読み方になります。
これに対して、「Aおよび(BまたはC)」では、Aは必須条件です。
そのうえで、BとCのうち、どちらかを組み合わせます。
たとえば、「本人確認書類および(住民票または公共料金の領収書)」なら、本人確認書類だけでは足りません。
「本人確認書類+住民票」か、「本人確認書類+公共料金の領収書」のどちらかを用意する構造です。
つまり、前者ではCがAとBのセットを丸ごと置き換えられるのに対し、後者ではAを省くことができません。
カッコの位置が1つ変わるだけで、「必ず必要なもの」と「選べるもの」の範囲が変わると覚えておくとよいでしょう。
契約条件や利用規約のように、1つの言葉が義務の範囲を左右する文章では、この違いはとても重要です。
文章を読むときは、「何と何がandでつながり、何と何がorでつながっているのか」を図のように分けて考えると、ずっと理解しやすくなります。
7-3. ANDとORが混在する文章はカッコ・読点・箇条書きでグループを明確にする
書き手の立場では、読み手にグループ分けを考えさせない文章にすることが理想です。
そのために役立つのが、カッコ、読点、箇条書きです。
たとえば、「東京都内の営業所および大阪支店またはオンライン窓口で受け付けます」という文章では、「東京都内の営業所と大阪支店」が一組なのか、「大阪支店とオンライン窓口」が選択肢なのか、少し考えなければなりません。
そこで、「(東京都内の営業所および大阪支店)またはオンライン窓口」とカッコを付ければ、グループが目で見て分かります。
反対に、「東京都内の営業所および(大阪支店またはオンライン窓口)」なら、別の条件であることもすぐに伝わります。
条件がさらに長くなる場合は、文章の中だけで処理しようとせず、箇条書きにする方法も有効です。
たとえば株式会社さくら商事の申請条件を説明するとして、「申請者は社員証および在籍証明書または所属長の承認書を提出すること」と1行で書くより、「次の①または②のいずれかを提出する」としたうえで、「①社員証および在籍証明書」「②所属長の承認書」と分けたほうが、条件のまとまりが一目で分かります。
選択肢が3個、4個と増えるほど、この工夫は重要です。
読点も区切りを見せる助けにはなりますが、読点だけに複雑な論理構造を背負わせると、やはり読み手によって解釈が分かれる可能性があります。
「文章を短くすること」より、「条件のグループを見える形にすること」を優先すると考えるとよいでしょう。
特に契約書や規程では、「読めば何となく分かる」ではなく、「誰が読んでも同じ条件にたどり着く」文章を目指すことが大切です。
7-4. 「AまたはBおよびC」のような文章で起こる解釈のズレ
順番を反対にした「AまたはBおよびC」という文章でも、同じ問題が起こります。
たとえば、「運転免許証またはマイナンバーカードおよび住民票を提示してください」という案内があったとしましょう。
「Aまたは(BおよびC)」と読むなら、「運転免許証だけを提示する」方法と、「マイナンバーカードと住民票の両方を提示する」方法の2つがあります。
しかし、「(AまたはB)およびC」と読むなら、「運転免許証またはマイナンバーカードのどちらか1点」に加えて、「住民票も必ず提示する」という意味になります。
前者では運転免許証1点で済む可能性があるのに、後者では必ず2点が必要です。
受付担当者が後者の意味で案内を書き、利用者が前者の意味で読んだ場合、「書類が足りません」「文章には1点でよいと読めます」という行き違いが生まれてしまいます。
これは、「または」が間違っているとか、「および」が難しい言葉だから起こる問題ではありません。
それぞれの接続詞が担当する範囲を文章が示していないことが原因です。
「または」や「又は」は選択を表し、「および」や「及び」は複数の要素を合わせる働きを持ちます。
だからこそ、この2種類が同時に現れたら、「どの選択肢までが『または』の範囲なのか」「『および』で必須になる項目はどこまでなのか」を確認する必要があります。
日常のメールなら文脈から補えることもありますが、応募条件、支払条件、契約解除条件、必要書類などでは、読み手の想像に任せないほうが安全です。
「AまたはBおよびC」と書きたくなった時点で、一度カッコを付けて意味を確認するという習慣を持つと、解釈のズレを減らしやすくなります。
7-5. 3段階以上の条件を「若しくは・又は・及び・並びに」で整理する考え方
条件が2段階だけなら、カッコを使うだけでもかなり整理できます。
しかし、契約書や規程では、選択肢の中にさらに選択肢があり、その外側に別の条件が加わるような、3段階以上の構造が登場することがあります。
そのようなときに役立つ考え方が、「若しくは」「又は」「及び」「並びに」を階層ごとに使い分ける方法です。
基本的には、「若しくは」と「又は」はどちらも選択関係を表しますが、細かな選択肢を結ぶときに「若しくは」、それより大きなグループ同士を選択させるときに「又は」を使うと、階層を見せやすくなります。
一方、「及び」は複数の要素を一緒に含める関係を示し、さらに異なる階層の大きなまとまりを結ぶ場合には「並びに」を使って構造を整理できます。
「及び」が同じレベルの要素をつなぎ、「並びに」がそれより大きなまとまりをつなぐ、と考えるとイメージしやすいでしょう。
たとえば、社内システムの利用資格を「東京本社若しくは横浜支店の正社員、又は大阪支店若しくは京都支店の契約社員及びその所属長、並びに情報システム部が承認した者」のように書く場合を考えてみましょう。
いきなり全文を読もうとすると迷いやすいので、まず一番小さな選択肢を探します。
「東京本社若しくは横浜支店」「大阪支店若しくは京都支店」のような部分です。
次に、それらの小さなグループ同士を「又は」で分けます。
さらに、同時に必要な条件を「及び」でまとめ、最後に大きなまとまり同士を「並びに」で整理する、という順番で考えます。
小さな箱を作り、その箱を少し大きな箱に入れ、最後に大きな箱同士をつなぐイメージです。
もちろん、接続詞をたくさん使えば自動的に読みやすくなるわけではありません。
「若しくは」「又は」「及び」「並びに」が1文に何度も登場すると、ルールを知っている人でも読み返す必要が出てきます。
そのため、3段階以上の条件では、接続詞による階層化に加えて、カッコや号番号、箇条書きを組み合わせることが重要です。
たとえば、「次の①または②の条件を満たし、かつ③の承認を受けた者」のように大枠を先に示し、①と②の内部だけで「若しくは」「及び」を使えば、読み手は今どの階層を読んでいるのかを見失いにくくなります。
「若しくは=小さな選択」「又は=大きな選択」「及び=同じまとまりの併合」「並びに=より大きなまとまりの併合」という視点で整理し、複雑になったら文章そのものを分割することが、誤解を防ぐ基本です。
「および」と「または」の違いを覚えるだけで終わらず、「どの言葉を、どの範囲につないでいるのか」まで見るようになると、契約書やビジネス文書の長い条件文も、ぐっと読み解きやすくなります。
8. 契約書・規約・法令での「及び」「又は」の使い分け
契約書や利用規約、法令を読んでいると、「及び」「又は」「若しくは」「並びに」が何度も出てきます。 日常会話では「および」と「または」の違いが分かれば十分な場面もありますが、法的な文書ではそうはいきません。 なぜなら、たった1つの接続詞が変わるだけで、「全部必要なのか」「どれか1つでよいのか」「どの選択肢が同じグループなのか」という条件の範囲まで変わるからです。 契約書では、接続詞は文章を読みやすくする飾りではなく、権利や義務の境界線を示す記号に近いものと考えると理解しやすいでしょう。 ここでは、小さな箱と大きな箱に分けるイメージを使いながら、法的文書での使い分けを順番に確認します。
8-1. 法的文書では接続詞1つで条件や権利義務の範囲が変わる
まず覚えておきたいのは、契約書では「意味がだいたい通じればよい」と考えないことです。 たとえば、業務委託契約書に「受託者は、本人確認書類及び資格証明書を提出する」とあれば、通常は本人確認書類と資格証明書の両方を提出する形で読まれます。 これを「本人確認書類又は資格証明書」に変えると、今度は選択の関係になります。 一見すると「及び」を「又は」に1語変えただけですが、提出しなければならない書類の数そのものが変わります。
もう少し身近な例で考えてみましょう。 キャンペーン規約に「18歳以上及び日本国内在住の方」と書けば、18歳以上であることと、日本国内に住んでいることの2条件を満たす人が対象だと読みやすくなります。 一方、「18歳以上又は日本国内在住の方」とすると、18歳未満でも日本国内在住なら対象になるのか、海外在住でも18歳以上なら対象になるのか、という違いが生まれます。 この差は、応募資格、解除条件、損害賠償、秘密保持、支払条件などでも同じです。 法的文書で接続詞を確認するときは、前後の単語だけでなく、「条件の集合がどう広がるか、どう狭まるか」を見ることが大切です。
また、法令や規約では文章が長くなりやすいため、接続詞が「どこからどこまで」を結んでいるのかも重要です。 読点が多い文章では、AとBを結んでいるように見えて、実際には「AとBのまとまり」とCを結んでいる場合があります。 そのため、読む側は接続詞を見つけたら、左右にある語句を小さな箱で囲むような気持ちで整理すると、条件を取り違えにくくなります。
8-2. 「及び」を使えば原則として並べた要素をすべて含む
「及び」は、複数の要素を併せて扱うときに使う接続詞です。 英語のANDに近く、A及びBとあれば、原則としてAとBの両方を含む関係を表します。 たとえば「履歴書及び職務経歴書を提出してください」なら、履歴書だけ、職務経歴書だけではなく、2種類とも提出する意味になります。 「本人の氏名及び住所を記載する」なら、氏名と住所の両方を書くということです。 日常文の「AとB」に近いので、ここまでは難しくありません。
注意したいのは、3つ以上の要素が出てくる場合です。 たとえば「氏名、住所及び電話番号」と書けば、氏名、住所、電話番号という3項目をまとめて並列にしています。 法的文書では、同じレベルの要素をまとめるときに「及び」を使うのが基本です。 「甲及び乙」「契約書及び仕様書」「現金及び預金」のように、同じ箱の中に並べられるものをつなぐイメージです。
ただし、文章に複数のまとまりがあるときは、「及び」だけを延々と並べると構造が見えにくくなります。 そこで登場するのが「並びに」です。 たとえば、実在する法律名の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」を見ると、「保護」と「管理」を「及び」で小さくまとめ、そのまとまりと「狩猟の適正化」を「並びに」で大きくつないでいます。 このように、小さい併合には「及び」、より大きいまとまり同士の併合には「並びに」と考えると、長い条文でも構造を追いやすくなります。
8-3. 「又は」「若しくは」は選択肢の階層を意識して使い分ける
「又は」と「若しくは」は、どちらも選択関係を示します。 日常文なら「電話またはメール」「電車もしくはバス」のように、ほぼ同じ感覚で使うこともあります。 しかし、法令や契約書のように構造を厳密に示したい文書では、2つを同じ言葉として扱わないほうが安全です。 基本の考え方は、大きい選択に「又は」、その中にある小さい選択に「若しくは」を使うことです。
たとえば、「申請は、書面又は電子メール若しくは専用フォームにより行う」とします。 ここで「電子メール」と「専用フォーム」を1つのオンライン手続のグループとして扱い、それと「書面」を大きく分けたいなら、「若しくは」は下位の選択肢を示す役割を持ちます。 図にすると、「書面」又は「電子メール若しくは専用フォーム」という形です。 同じ「OR」に見えても、どこに小さな箱を作るかが違うわけです。
法令でも、この階層を示すために「又は」と「若しくは」が組み合わされます。 たとえば、河川法施行規則のような公的な条文では、国土交通大臣と、地方整備局長・北海道開発局長という役職のまとまりを分ける場面で、上位と下位の選択関係が接続詞によって表現されています。 難しく見える文章でも、「又は」を見つけて大きく区切り、その内側に「若しくは」があるかを探すと読みやすくなります。
なお、「又は」を英語のORと置き換えただけで、「必ずどちらか一方だけ」と決めつけるのは危険です。 契約内容によっては、Aだけ、Bだけ、AとBの両方のいずれを認めるのかを明示したほうがよい場合があります。 排他的に1つだけ選ばせたいなら「いずれか一方に限る」、両方でもよいなら「一方又は双方」のように補って、解釈の余地を減らします。
8-4. 「及び・並びに」「又は・若しくは」で複数階層を表す基本ルール
ここまでの内容を、箱の大きさで整理しましょう。 併合、つまり「全部を含める」関係では、同じ階層の小さな要素を「及び」で結び、それらをまとめた大きなグループ同士を「並びに」で結ぶのが基本です。 選択、つまり「どれを選ぶか」という関係では、最上位の大きな分岐に「又は」を使い、その内側の細かな分岐に「若しくは」を使います。
たとえば、契約の通知方法を「郵送と手渡し」という紙の方法と、「電子メールと専用システム」という電子的方法に分け、両グループを併せて対象にしたいとします。 構造だけを示せば、「郵送及び手渡し並びに電子メール及び専用システム」のようになります。 「郵送及び手渡し」が1つの小さな箱、「電子メール及び専用システム」がもう1つの小さな箱で、その2箱を「並びに」がつないでいるわけです。
反対に、選択肢として分けるなら、「本人若しくは代理人が窓口で提出し、又は本人若しくは代理人がオンラインで提出する」のように、最上位の方法を「又は」で分け、その内側の主体を「若しくは」で分ける考え方ができます。 ただし、実際の契約書で文章がここまで長くなるなら、無理に1文へ詰め込むより、第1号、第2号のように項目を分けたほうが安全です。 接続詞のルールを知っていても、読み手が一度で構造を把握できなければ、実務では誤解が起きやすいからです。
読み解くときは、次の順番が便利です。 まず「又は」や「並びに」のような大きな区切りを探します。 次に、その内側にある「若しくは」や「及び」を見つけます。 最後に、各グループを括弧で囲んだ仮の文章に置き換えます。 この3段階で確認すると、長い契約条項でも、誰が、何を、どの条件で行うのかを整理しやすくなります。
8-5. 契約書では「および=AND」「または=OR」だけで機械的に判断しない
「及びはAND、又ははOR」と覚えるのは、最初の入口としてはとても役立ちます。 ただし、契約書を実際に読むときは、その対応だけで結論を出さないことが大切です。 理由は、契約条項の意味が、接続詞だけでなく、定義条項、ただし書、列挙の仕方、修飾語の位置、前後の条項、別紙や仕様書との関係によって決まるからです。
たとえば、「商品A又は商品Bを購入した会員に特典を付与する」という規約があったとします。 この文だけでは、AとBを両方購入した会員が対象外になるとまでは言い切れない場合があります。 運営者が「どちらか1商品だけ購入した人」に限定したいなら、「商品A又は商品Bのいずれか一方のみを購入した会員」と書くほうが明確です。 反対に、両方の購入者も含めたいなら、「商品A又は商品Bの一方又は双方を購入した会員」など、対象範囲を言葉で補う方法があります。
「及び」でも同じです。 「甲は、システム及び付属資料を引き渡す」という条項があれば、通常は双方が引渡し対象だと読めます。 しかし、「付属資料」の定義が別条項で限定されていたり、「ただし、甲乙が別途合意した資料を除く」と書かれていたりすれば、実際の義務の範囲は接続詞だけでは決まりません。 接続詞は重要ですが、契約全体の設計図の一部です。
契約書を確認するときは、まず「及び」「又は」「若しくは」「並びに」に印を付け、次にそれぞれが何と何を結んでいるかを確認してください。 そのうえで、「全部必要なのか」「選択できるのか」「両方でもよいのか」「上位と下位のグループはどこか」を日本語で言い換えます。 最後に、定義条項や例外規定と矛盾しないかを確認します。 この順番なら、難しそうな法的文書でも、1本の長い文を小さな部品に分けて読めます。 接続詞1つを丁寧に見る習慣が、契約条件の読み違いを防ぐ第一歩になります。
9. ビジネスメール・社内文書・案内文での自然な使い方
「および」と「または」は、どちらも言葉と言葉をつなぐ接続詞ですが、役割はまったく同じではありません。 「および」はAとBの両方を含めるとき、「または」はAとBのうち選択肢を示すときに使う、と覚えると分かりやすいでしょう。 英語に置き換えるなら、「および」はand、「または」はorに近い関係です。 たった数文字の違いですが、申込書、社内メール、イベント案内、採用連絡などでは、読み手が「両方必要なのかな」「どちらか1つでよいのかな」と迷う原因になるため、意外と大切です。
特に契約書や規約のような文書では、「及び」「又は」「若しくは」を、並べる項目の階層まで考えて厳密に使い分ける場合があります。 一方、社員や顧客に読んでもらう日常的なビジネス文書では、難しい表記を使うことよりも、ひと目で意味が伝わることが大切です。 そこで、普段のメールや案内文では「および」「または」と平仮名で書き、必要に応じて「両方」「いずれか1つ」と補足すると、やさしくて誤解の少ない文章になります。 ここからは、実際の仕事でそのまま応用できる形で見ていきましょう。
9-1. 日常的な文章では「及び・又は」より「および・または」が読みやすい場合がある
相手に読んでもらう文章では、見た目のやわらかさも大切
「及び」「又は」という漢字表記を見ると、少し法律文や規約のような堅い印象を受ける人もいます。 もちろん、漢字で書くこと自体が間違いというわけではありません。 契約書、規程、法令に近い文体では、漢字表記を使って論理関係を明確にすることがあります。 ただし、社内の連絡メール、セミナー案内、採用候補者への連絡、店舗からのお知らせなどでは、「および」「または」と書いたほうが文章全体になじみ、目で追いやすい場合があります。
たとえば、「参加者の氏名及び所属部署を返信してください」よりも、「参加者の氏名および所属部署を返信してください」としたほうが、普段のメールでは少しやわらかく見えます。 また、「出席又は欠席を8月20日までにご回答ください」よりも、「出席または欠席を8月20日までにご回答ください」のほうが、案内メールらしい自然な印象になります。 大切なのは、漢字か平仮名かだけで正しさを決めることではありません。 誰が読む文書なのか、どれくらい厳密さが必要なのか、社内の表記ルールはどうなっているのかを考えて選ぶのがポイントです。
意味の違いまで平仮名にしてはいけない
表記をやわらかくしても、「および」と「または」の意味の違いは残ります。 「AおよびB」は、基本的にAもBも含める並列です。 「AまたはB」は、AかBかという選択関係を示します。 たとえば、「履歴書および職務経歴書を送付してください」と「履歴書または職務経歴書を送付してください」では、応募者が準備する書類の数が変わります。 読みやすさを優先するときほど、接続詞そのものの役割は丁寧に確認しましょう。
9-2. 「申込書および本人確認書類を送付してください」で両方必要と伝える
「および」は2つをセットで求める場面に向いている
申込みや手続きの案内で、2種類の書類をどちらも提出してほしいときは、「および」が役立ちます。 たとえば、「申込書および本人確認書類を送付してください」と書けば、申込書だけではなく、本人確認書類も必要であるという関係を示せます。 小さな子に「鉛筆と消しゴムを持ってきてね」と伝えるのと同じで、2つをセットにして考えるイメージです。 「および」は、選ばせる言葉ではなく、並べたものをまとめて含めるための言葉だと考えると迷いにくくなります。
同じ考え方は、社内手続きにも使えます。 たとえば、「経費精算書および領収書の画像を毎月5日までに提出してください」と書けば、精算書と領収書画像の両方を求めていることが伝わります。 採用関係なら、「履歴書および職務経歴書をPDF形式で添付してください」と書けます。 取引先への依頼なら、「見積書および納期回答書をご送付ください」のように、必要な成果物を2つ並べられます。
さらに確実に伝えたいなら「両方」を足す
ただし、読み手が接続詞の意味を厳密に意識しているとは限りません。 とくに、提出漏れがあると手続きが止まるような場面では、「および」だけに頼らないほうが親切です。 「申込書および本人確認書類の両方を送付してください」とすれば、必要なものが2点であることがさらに明確になります。 「申込書1点と、本人確認書類1点の合計2点をお送りください」と数字まで示せば、確認もしやすくなります。 文章の目的は、接続詞を正しく使うことそのものではなく、相手に必要な行動を間違えずにしてもらうことです。
9-3. 「電話またはメールでご連絡ください」で選べることを伝える
「または」は複数の方法から選んでもらうときに便利
「または」は、複数の候補の中から選べることを示したいときに使います。 「電話またはメールでご連絡ください」と書けば、読み手は電話とメールのどちらか、自分に都合のよい方法を選べると理解しやすくなります。 問い合わせ案内なら、「03から始まる代表電話またはお問い合わせフォームをご利用ください」のように、連絡手段の選択を示せます。 支払い案内なら、「銀行振込またはクレジットカードでお支払いください」と書けば、支払い方法が2通りあることを整理して伝えられます。
ここで「電話およびメールでご連絡ください」と書くと、意味は大きく変わります。 読み手によっては、「電話もメールも両方しなければならないのかな」と受け取るでしょう。 本当はどちらか1つでよいのに「および」を使うと、相手に余計な作業をさせる可能性があります。 反対に、本当は電話とメールの両方が必要なのに「または」と書けば、片方しか対応してもらえないかもしれません。 「および」と「または」の違いは、読み手が何をするかを左右する違いだと考えてください。
「どちらでもよい」を補足すると、もっとやさしい
「または」は選択を示す言葉ですが、案内文では「いずれかの方法で」と補足すると、さらに迷いにくくなります。 たとえば、「電話またはメールのいずれかの方法でご連絡ください」とすれば、両方を使う必要がないことが伝わります。 社内連絡なら、「Microsoft Teamsまたはメールのいずれかで、8月21日17時までに回答してください」のように、手段と期限をセットにすると実務的です。 相手に選択肢を与えるときは、「何を選べるのか」だけでなく、「いくつ選べばよいのか」まで書くと親切です。
9-4. 選択肢が多い場合は「または」を繰り返さず箇条書きにする
3つ、4つと続くと、接続関係が見えにくくなる
選択肢が2つなら、「電話またはメール」のような短い書き方で十分です。 しかし、選択肢が3つ、4つ、5つと増えると、「または」を何度も入れた文章は急に読みにくくなります。 たとえば、「本人確認書類として運転免許証またはマイナンバーカードまたはパスポートまたは在留カードのいずれかを提出してください」と1文に詰め込むと、どこまでが選択肢なのかを目で追うのが大変です。 意味が間違っていなくても、読む人が迷えば、案内文としては改善の余地があります。
このようなときは、最初に「次のうち、いずれか1点」と条件を示し、そのあとを箇条書きにするとすっきりします。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 在留カード
この形なら、「または」を3回書かなくても、4つの候補から1つ選ぶことがひと目で分かります。 WordPressの案内ページ、社内ポータル、申込フォームの説明文など、画面上で読む文章では特に使いやすい方法です。
グループがあるときは、文章より構造で見せる
選択肢に階層がある場合も、無理に1文へ詰め込まないことが大切です。 契約書や法令のような厳密な文書では、上位の選択に「又は」、下位の選択に「若しくは」を使うなど、接続する階層を言葉で表す考え方があります。 一方、一般的な案内文では、見出しや箇条書きを使って階層そのものを見せたほうが、読み手にとって理解しやすいことがあります。 たとえば「オンラインで回答する場合」と「書面で回答する場合」を分け、その下にメール、フォーム、郵送などの方法を並べると、接続詞だけで関係を表すより分かりやすくなります。
9-5. 誤解を避けたい文章では「両方」「いずれか」「いずれも」を補足する
接続詞だけで終わらせず、行動を具体的に書く
ビジネス文書では、文法的に正しいだけでなく、相手が同じ意味に受け取れることが重要です。 そのため、提出物、申込条件、参加条件、支払い方法など、間違えると困る箇所では、「および」「または」に説明語を足しましょう。 両方必要なら、「AおよびBの両方を提出してください」と書きます。 どちらか1つなら、「AまたはBのいずれか1つを提出してください」と書きます。 どの選択肢でも受け付けることを示したいなら、「A、B、Cのいずれも利用できます」のように書けます。
たとえば、研修の参加条件が「社員証と筆記用具の両方を持参すること」なら、「社員証および筆記用具をご持参ください」だけでも意味は通りますが、「社員証および筆記用具の両方をご持参ください」とすると、さらに確実です。 反対に、本人確認書類が3種類のうち1点でよいなら、「運転免許証、マイナンバーカード、パスポートのいずれか1点をご提示ください」とすれば、「または」を何度も並べなくても条件が伝わります。 こうした補足は、少し言葉を足すだけですが、確認の往復や提出漏れを減らす助けになります。
「および/または」は便利そうに見えても、読み手を迷わせることがある
ときどき「Aおよび/またはB」のような表記を見かけますが、一般的なメールや案内文では、読み手が「結局、両方なのか、片方でよいのか」と迷うことがあります。 伝えたい条件が「AだけでもBだけでもよく、AとBの両方でもよい」のであれば、その内容をそのまま文章にしたほうが親切です。 たとえば、「電話またはメールでご連絡ください。 両方の方法をご利用いただいても構いません」と分けて書けば、選択の範囲がはっきりします。 提出書類なら、「運転免許証またはマイナンバーカードのいずれか1点をご提出ください」と、必要数まで限定すると安心です。
迷ったときの基本は、「および=両方を含む」「または=選択肢を示す」と考え、そのうえで「両方」「いずれか1つ」などを補うことです。 社内メールでは読みやすく、申込案内では行動が明確になり、顧客向け文書では問い合わせの減少にもつながります。 難しい接続詞を使うことより、相手が1回読んで「何をすればよいか」を理解できることを目標にすると、自然で実用的な文章になります。
10. 「および」「または」でよくある間違いと書き換え例
「および」と「または」は、見た目は短い言葉ですが、文章の条件を大きく変える力があります。 「AおよびB」なら、基本的にはAとBの両方を含みます。 一方、「AまたはB」なら、AとBを選択肢として示します。 ここを取り違えると、読む人は「2つとも必要なのか、それとも1つでよいのか」が分からなくなります。 採用案内、契約書、申請フォーム、社内規程のように条件を正確に伝えたい文章では、たった1語の違いが提出物や手続きの内容まで変えてしまうので注意が必要です。
さらに選択肢が何段階にも分かれる場合は、「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」のように、同じ種類の接続でも階層を意識すると関係が見えやすくなります。 小さな箱をいくつか大きな箱に入れて整理するように、「どの言葉とどの言葉が仲間なのか」を先に考えるのがコツです。 ここでは、ありがちな間違いを具体例と一緒に見ながら、どう書き換えれば誤解されにくくなるのかを順番に確認していきます。
10-1. 「履歴書および職務経歴書のいずれか」のように意味が矛盾する文章
まず気を付けたいのが、「および」と「いずれか」を同じ範囲で使ってしまう文章です。 たとえば、株式会社ABCの採用ページに「応募者は、履歴書および職務経歴書のいずれかを提出してください」と書かれていたとします。 「および」は2つの書類をまとめて必要とする方向に読めますが、「いずれか」は2つのうち1つを選ぶ意味です。 つまり、前半では「両方」と言いながら、後半では「どちらか1つ」と言っているような状態になり、読み手は判断に迷います。
1つだけ提出すればよいのであれば、「履歴書または職務経歴書のいずれか1点を提出してください」と書けば意味がそろいます。 反対に2つとも必要なら、「履歴書および職務経歴書を提出してください」とし、「いずれか」を削除します。 ポイントは、接続詞だけを見るのではなく、その後ろにある「いずれか」「どちらか」「両方」「すべて」といった言葉までセットで確認することです。
同じ間違いは本人確認書類でも起こります。 「運転免許証およびマイナンバーカードのいずれか」と書けば、やはり「両方」と「どちらか」がぶつかります。 1点でよいなら「運転免許証またはマイナンバーカードのいずれか1点」、2点必要なら「運転免許証およびマイナンバーカードの2点」と書くと、読む人が迷いません。 特にWebフォームでは、文章とチェックボックスの選択数が食い違わないようにすることも大切です。
10-2. 「どちらかをご持参ください」と書きながら「及び」でつなぐ誤用
次に多いのが、文末で「どちらか」と指定しているのに、選択肢を「及び」でつないでしまうケースです。 たとえば、2026年9月1日の入社手続き案内に「当日は、印鑑証明書及び本人確認書類のどちらかをご持参ください」とあるとします。 「どちらか」と言いたいなら、前の2項目は選択関係になっていなければなりません。 ところが「及び」は併合、つまり両方を含む関係を示すため、文の前半と後半がかみ合わなくなります。
この場合は、「当日は、印鑑証明書または本人確認書類のどちらか1点をご持参ください」とすると自然です。 契約書や社内規程などで漢字表記に統一しているなら、「印鑑証明書又は本人確認書類のいずれか1点」とする方法もあります。 一方、本当に2点とも必要なら、「当日は、印鑑証明書及び本人確認書類をご持参ください」とし、「どちらか」を外します。
ここで覚えておきたいのは、文章を声に出して簡単な言葉に置き換える方法です。 「A及びB」を見たら「AもBも」、「A又はB」を見たら「AかB」と置き換えてみます。 「印鑑証明書も本人確認書類も、どちらかを持ってきてください」となれば、少し変だと気付きやすいでしょう。 難しい接続詞ほど、いったん子供にも伝わる言い方に戻すと、論理のずれを見つけやすくなります。
10-3. 「又は」を何度も使い選択肢の階層が分からなくなる文章
選択肢が3つ、4つと増えると、「又は」を繰り返すだけではグループの境目が分かりにくくなります。 たとえば、申請方法を「窓口又は郵送又は電子メール又は専用フォームで提出する」と書くと、単純な4択なら意味は通じます。 しかし、「窓口」と「郵送」が紙による提出、「電子メール」と「専用フォーム」がオンライン提出という2つの大分類に分かれている場合、文章からその構造は見えません。
さらに、「国内工場又は海外工場のAライン又はBラインから出荷する」のような文では、AラインとBラインが国内工場にも海外工場にもあるのか、それとも海外工場だけの選択肢なのかが曖昧になります。 こうしたときは、大きな選択と小さな選択を分けて考えます。 たとえば「国内工場又は海外工場のAライン若しくはBライン」とすれば、「Aライン若しくはBライン」が海外工場の中の小さな選択肢だと示しやすくなります。
考え方としては、まず括弧を使って頭の中で整理すると分かりやすいです。 「国内工場 又は 海外工場の(Aライン 若しくは Bライン)」という形です。 最終的な文章で括弧を残すかどうかは文書のルールに合わせればよいのですが、作成段階でグループを見える化すると誤りを減らせます。 「又は」は大きな選択肢同士を結び、「若しくは」はその内側にある細かな選択肢同士を結ぶ、と考えると階層を整理しやすくなります。
ただし、一般向けの案内文では、必ずしも法令文のような硬い接続詞にこだわる必要はありません。 たとえば「提出方法は次の2種類です。 紙で提出する場合は窓口か郵送、オンラインで提出する場合は電子メールか専用フォームを利用してください」と2文に分ければ、関係はさらに明快になります。 読み手にとって大切なのは接続詞の格好よさではなく、どれを選べるのかが一度で分かることです。
10-4. 「及び」「並びに」を区別せず複雑な条件をつないでしまう文章
「及び」と「並びに」は、どちらも複数の要素を一緒に扱うときに使われますが、条件に階層がある文章では役割を分けたほうが構造を示しやすくなります。 「及び」は同じまとまりの中にある要素を結び、「並びに」はそれより大きなまとまり同士を結ぶ、と考えると整理しやすいでしょう。 選択関係で「若しくは」と「又は」を使い分けるのと似ています。
たとえば、ある研修の参加条件を「営業部長及び営業課長及び人事部長及び人事課長の承認を得ること」と書くと、4人がただ横一列に並んでいるように見えます。 もし本当に示したい構造が「営業部の承認」と「人事部の承認」という2つのまとまりなら、「営業部長及び営業課長、並びに人事部長及び人事課長の承認を得ること」とすることで、2つのグループを意識しやすくなります。
別の例として、契約時の提出物が「会社に関する書類」と「代表者に関する書類」に分かれているとします。 「登記事項証明書及び会社印の印鑑証明書及び代表者の本人確認書類及び住民票」と一列につなぐより、「登記事項証明書及び会社印の印鑑証明書、並びに代表者の本人確認書類及び住民票」と書いたほうが、大きなまとまりを把握しやすくなります。 ただし、4点すべてが必要であること自体は同じなので、階層が重要でない一般向け文書なら、箇条書きにして「次の4点をすべて提出してください」とする方法のほうが親切なこともあります。
複雑な文章では、「接続詞を正しく選べばそれで終わり」と考えないことが大切です。 読む人が一目で条件のまとまりを理解できないなら、見出し、箇条書き、番号、括弧を使って構造そのものを見せたほうが安全です。 接続詞は地図の標識のようなものですが、道が入り組みすぎていれば、標識を増やすだけでは迷いやすさは解消できません。
10-5. 意味が曖昧なときは接続詞を変えるだけでなく文章自体を書き換える
最後にいちばん大切なのは、意味が曖昧な文章を見つけたとき、接続詞だけを機械的に交換しないことです。 たとえば、「会員は、電話またはメールおよび専用フォームで解約を申し出ること」という文があったとします。 これは「電話」か「メールと専用フォームの両方」なのか、「電話またはメール」のどちらかに加えて専用フォームも必要なのか、あるいは3つの方法から1つ選べるのかが分かりません。 「または」を「および」に変えるだけでは、書き手の本当の意図が分からないため、正解にはたどり着けません。
もし3つの方法から1つを選べるなら、「解約は、電話、メール、専用フォームのいずれか1つの方法でお申し出ください」と書けば十分です。 もし専用フォームへの入力が必須で、連絡手段だけ電話かメールを選べるなら、「電話またはメールでご連絡のうえ、専用フォームに必要事項を入力してください」と2つの動作に分けます。 このように、条件が複雑なときほど「1文で全部言おう」としないことが大切です。
書き換える前には、まず「誰が」「何を」「いくつ」「どの条件で」「どの順番で」行うのかを確認しましょう。 たとえば提出書類なら、「履歴書と職務経歴書は2点とも必要なのか」「本人確認書類は3種類のうち1点でよいのか」「提出方法は郵送かWebの2択なのか」と、条件を1つずつ分解します。 そのあとで「および」「または」「及び」「又は」「若しくは」「並びに」のどれを使うか決めれば、言葉だけに引っ張られません。
迷ったときの最終チェックは簡単です。 「および・及び」を「両方」、「または・又は・若しくは」を「どれか」に置き換えて読んでみてください。 さらに、グループが2段階以上あるなら、括弧を仮に付けて関係を確認します。 それでも説明しにくいなら、接続詞の問題ではなく文章構造の問題だと考え、2文に分けるか箇条書きにします。 正しい接続詞を選ぶことと、読み手が迷わない文章にすることは同じではありません。 履歴書1枚、本人確認書類1点、申請方法1つといった具体的な数まで示すと、さらに誤解が起こりにくくなります。
11. 「および」「または」の違いでよくある疑問
「および」と「または」は、どちらも言葉と言葉をつなぐ接続詞ですが、役割は正反対です。 「および」は、AとBを一緒に扱うときに使い、「または」は、AとBのどちらかを選ぶときに使います。 たとえば、「履歴書および職務経歴書を提出してください」なら、履歴書と職務経歴書の2点が必要です。 一方、「運転免許証またはマイナンバーカードを提示してください」なら、基本的にはどちらか1点を示せばよい、という読み方になります。 ここまでは簡単ですね。 ただし、契約書、公用文、英日翻訳になると、「and」「or」と機械的に置き換えるだけでは意味がずれることがあります。 ここでは、特に迷いやすい5つの疑問を、順番にほどいていきます。
この区別は、ただの言葉遣いではなく、文の意味そのものを決めます。 たとえば、採用応募で「履歴書および職務経歴書」と書けば2点とも必要ですが、「履歴書または職務経歴書」と書けば必要書類の数が変わります。 たった3文字ほどの違いでも、提出条件はまるで別物です。 だからこそ、文章を書いたあとには、「全部必要なのか」「どれか1つなのか」を自分に問い直してみてください。 この確認だけでも、接続詞の取り違えはかなり減らせます。
11-1. 「および」は「and」、「または」は「or」と覚えてよい?
基本の覚え方としては、「および=and」「または=or」で大丈夫です。 「および」は複数の要素をまとめて含める「併合」の関係を表し、「または」は複数の選択肢から選ぶ「選択」の関係を表します。 英語にすると役割が見えやすいため、最初に意味を覚える方法としてはとても便利です。 たとえば、「AおよびB」は「A and B」、「AまたはB」は「A or B」と考えると、文の骨組みをつかみやすくなります。
ただし、法律や契約書のように、1語の違いが権利や義務の範囲を変える文書では、もう一段細かく見ます。 日本語の法令・公用文では、「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」を階層によって使い分けます。 同じ段階のものを結ぶ基本形は「A及びB」です。 3つ以上のものを同じ重さで並べるなら、「A、B、C及びD」のように最後だけ「及び」を置きます。 さらに、「A及びB」という小さなまとまりと、「C及びD」という別のまとまりを大きく結ぶときは、「A及びB並びにC及びD」のように「並びに」が登場します。
選択側も同じです。 「A又はB」は大きな選択を表す基本形で、その中に小さな選択のまとまりがある場合は「若しくは」を使います。 たとえば、「英語若しくは中国語又は数学若しくは理科」のような形です。 子供向けにたとえるなら、「赤いあめか青いあめ」か、それとも「クッキーかチョコ」のグループを選ぶようなイメージです。 つまり、意味を覚える段階ではand/orでよく、厳密な文章を書く段階では日本語独自の階層ルールまで見る、という2段階で考えると迷いにくくなります。
11-2. 「または」はAとBの両方を選ぶこともできる?
ここはとても大切です。 日本語の公用文や契約条件で「AまたはB」と書かれている場合、まずは「AかBのどちらか一方」と読むのが基本です。 たとえば、「英語または中国語を選択してください」と書かれていれば、通常は英語と中国語を同時に2つ選ぶ意味ではありません。 「現金またはクレジットカードで支払ってください」という案内も、1回の支払い方法としてどちらかを選ぶ、と受け取るのが自然です。
ここで迷いやすいのは、英語の「or」には文脈によって「A、B、またはその両方」を含む使い方があることです。 その感覚をそのまま日本語の「または」に持ち込むと、読み手によって解釈が割れるおそれがあります。 たとえば、キャンペーン条件に「商品Aまたは商品Bを購入した方」とだけ書くと、商品Aと商品Bを両方買った人を含めるのかが気になる人もいるでしょう。 両方を認めたいなら、「商品Aまたは商品Bのいずれか、またはその両方を購入した方」のように書けば、ずっと明確です。
反対に、絶対に1つだけ選んでほしいなら、「AまたはBのいずれか一方」と書くと安心です。 特に、申込条件、応募資格、契約解除条件、必要書類のように、読み違いが不利益につながる場面では、「または」1語に全部を任せないことがコツです。 両方を含めるなら「その両方」、1つだけなら「いずれか一方」と補うと、読む人の頭の中に同じ絵を作れます。
11-3. 「AおよびBのいずれか」という表現は正しい?
「AおよびBのいずれか」は、なるべく避けたほうがよい表現です。 なぜなら、「および」はAとBの両方をまとめる言葉なのに、「いずれか」は複数の中から1つを選ぶ言葉だからです。 たとえば、「提出書類は、履歴書および職務経歴書のいずれかとする」と書くと、「2つとも必要なの? それとも片方でいいの?」と迷わせてしまいます。 接続詞が示す方向と、「いずれか」が示す方向がぶつかっているからです。
1つだけでよいことを伝えたいなら、「履歴書または職務経歴書のいずれか」とします。 2つとも必要なら、「履歴書および職務経歴書の両方」とすると明確です。 たとえば、本人確認書類についても、「運転免許証および健康保険証のいずれか」ではなく、「運転免許証または健康保険証のいずれか」と書けば、どちらか1点でよいことがすぐに伝わります。 逆に2点とも必要なら、「運転免許証および健康保険証を提示してください」とすれば十分です。
文章をチェックするときは、「および」を見つけたら「両方」、「または」を見つけたら「どちらか」と頭の中で置き換えてみてください。 「AとBの両方のいずれか」のような変な意味になったら、接続詞の組み合わせを見直すサインです。 「いずれか」と相性がよいのは「または」、「両方」と相性がよいのは「および」と覚えると、実務でもすぐ使えます。
11-4. 公用文・契約書では「および/または」と「及び/又は」のどちらを使う?
公用文では、文書の種類によって考え方が分かれます。 法令に準ずる告示や通知など、厳密さを重視する文書では、「及び」「又は」と漢字で書く形が基本です。 一方、国民向けの解説、広報、Q&Aのように読みやすさを優先する文書では、「および」「または」と仮名で書くことも認められています。 つまり、「公用文だから必ず漢字」と1本だけで覚えるより、「厳密な公用文では漢字、読み手に寄り添う広報では仮名も使える」と考えるほうが実態に合っています。
契約書では、法律で一律に「必ず漢字にしなければならない」と決められているわけではありません。 ただし、法令文の書き方にならって、「及び」「又は」「並びに」「若しくは」を使い分ける契約書は多く、長い条件文の構造を示すうえでも役立ちます。 たとえば、「甲及び乙」と書けば両当事者を含み、「書面又は電子メール」と書けば選択関係を示せます。 さらに選択肢が階層化するなら、「書面又は電子メール若しくはFAX」のように、どこが同じグループなのかを意識します。
大切なのは、漢字か仮名かを途中で気分によって変えないことです。 社内規程では「および」なのに、同じページの契約条項では「及び」、さらに別の箇所では「&」となっていると、意味が同じでも読み手は「何か違いがあるのかな」と立ち止まります。 企業の契約書テンプレートや官公庁の書式があるなら、まずその表記ルールにそろえましょう。 JTF日本語標準スタイルガイドの考え方でも、表記ゆれを防ぎ、文体や記号の使い方を文書内で統一することが重視されています。
なお、現在の公用文作成の手引である「公用文作成の考え方」は、2022年1月に政府内へ周知されました。 そこでは、法令に準ずる告示・通知などでは法令・公用文特有の用語を正確に使う一方、専門知識を持たない人向けの解説・広報では、分かりやすく言い換える考え方が示されています。 また、接続詞についても、「及び→および」「又は→または」のように仮名にする例が示されています。 ですから、文書の目的と読み手を見て表記を決めることが大切です。
11-5. 英語の「and/or」は日本語で「および/または」と訳せばよい?
「and/or」をいつでも「および/または」と直訳すればよいわけではありません。 「and/or」は、Aだけ、Bだけ、AとBの両方という複数の可能性をまとめて示すために使われることがあります。 その意味を保ちたいなら、「Aおよび/またはB」と訳す方法もありますが、日本語では斜線を含む表現が少しかたく見えたり、読み手が一瞬立ち止まったりすることがあります。 特に一般向けの記事、利用案内、FAQでは、論理関係を日本語として言い直したほうが親切です。
たとえば、「You may submit a passport and/or a driver’s license.」の意図が「パスポートだけでも、運転免許証だけでも、両方でもよい」なら、「パスポートまたは運転免許証のいずれか、または両方を提出できます」とすれば意味がはっきりします。 反対に、原文の「or」が「どちらか1つだけ」を意味しているなら、「AまたはBのいずれか一方」と訳します。 両方が必須なら、もちろん「AおよびB」です。 まず原文がどの組み合わせを許しているのかを確認し、そのあと日本語を選ぶ順番が安全です。
契約書の翻訳では、原文との対応関係を残す目的で「及び/又は」とすることもあります。 ただし、その表現だけで当事者双方が同じ意味を読み取れるとは限りません。 重要な条件なら、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの双方」のように許容されるケースを列挙したり、定義条項で意味を決めたりすると誤解を減らせます。 子供にルールを説明するとき、「好きなお菓子を選んでいいよ」だけでは1個なのか2個なのか分からないのと同じです。 翻訳で大事なのは単語をそろえることではなく、原文が許している選択肢を日本語でも同じように伝えることだと覚えておきましょう。
12. 「および」と「または」を正しく使い分けて誤解のない文章にしよう
「および」と「または」は、どちらも言葉と言葉をつなぐ接続詞ですが、文章の意味はまったく同じではありません。 いちばん大切なのは、「および」は複数の要素をまとめて含める関係、「または」は複数の選択肢から選ぶ関係を表すと理解することです。 たとえば「履歴書および職務経歴書を提出してください」と書かれていれば、履歴書だけでは足りず、職務経歴書も必要だと読めます。 一方、「履歴書または職務経歴書を提出してください」であれば、2つの書類が選択肢として示されています。 たった1語が変わるだけですが、必要な書類や条件の範囲まで変わってしまうのですね。
日常のメールや案内文なら、前後の流れから意味を補えることもあります。 しかし、契約書、規約、申込条件、社内ルール、法令のように「何を満たせばよいのか」を正確に示す文章では、接続詞の選び方がとても重要です。 「なんとなく似ているから」と置き換えるのではなく、まずは「両方なのか、選択なのか」を確認し、そのうえで文章の階層まで見ていくと迷いにくくなります。
12-1. 「および=AND・両方」「または=OR・選択」が基本
最初に覚えたいのは、とてもシンプルな対応関係です。 「および」は英語のANDに近く、「または」はORに近いと考えると、意味を整理しやすくなります。 「および」は、並べた要素をすべて含める併合の関係です。 「応募時には履歴書および職務経歴書を送ってください」という案内なら、原則として履歴書と職務経歴書の2点が必要だと理解できます。 「住民票の写しおよび印鑑証明書を提出する」という条件でも、片方だけではなく、両方が対象になります。
これに対して「または」は、複数の候補を選択肢として示す言葉です。 「お問い合わせは電話またはメールで受け付けます」とあれば、電話とメールという2つの手段が並んでいます。 「支払いは現金またはクレジットカードでお願いします」という案内も同じで、支払い方法を選ぶ関係です。 ここで「または」を「および」に変えて「現金およびクレジットカード」としてしまうと、両方を使うように読めてしまい、元の意図から大きく離れてしまいます。
反対の間違いにも注意しましょう。 「提出書類は履歴書および職務経歴書」とすべきところを「履歴書または職務経歴書」とすると、本来2点必要だった条件が、どちらかを選べる条件のように見えます。 契約書や規約では、この違いが権利や義務、提出条件の範囲に関わることがあります。 ですから文章を書くときは、接続詞を入れる前に「AとBの両方を求めているのか、それともAとBを選択肢として示しているのか」と自分に問いかけてみてください。 この確認だけでも、「および」と「または」の取り違えはかなり防ぎやすくなります。
12-2. 「もしくは」「ならびに」まで理解すると複雑な文章も読み解きやすい
「および」と「または」の基本が分かったら、次に「もしくは」と「ならびに」も一緒に覚えておくと便利です。 「もしくは」は「または」と同じく選択関係を表しますが、契約書や法令のように階層をはっきりさせる文章では、使われる位置が異なります。 大きな分類どうしの選択には「または」、その内側にある細かな選択肢どうしには「もしくは」を使う、と考えると構造をつかみやすくなります。 日常文では「または」と「もしくは」を厳密に分けないこともありますが、堅い文書ではこの階層が意味を読み取る手がかりになります。
たとえば「書面または電子メールもしくはFAX」という並びを、そのまま平らに読むと、3つが同じ階層なのか、電子メールとFAXだけがまとまりなのか分かりにくくなることがあります。 そこで「書面、または(電子メールもしくはFAX)」のように考えると、「書面」という選択肢と、「電子メールまたはFAX」という選択肢のまとまりが分かれます。 車両を例にしても、「普通自動車もしくは原動機付自転車、または自転車」のようにすると、普通自動車と原動機付自転車が細かな選択肢として結ばれ、それらと自転車が上位の選択関係にあると読み取りやすくなります。 3段階以上の条件が出てきたときほど、接続詞を単語として見るのではなく、「どの言葉とどの言葉を1つのまとまりにしているのかな」と考えることが大切です。
一方、「ならびに」は「および」と同じく、複数の要素を合わせて示す側の接続詞です。 ただし、同じレベルの語句を結ぶときに「および」を使い、異なるレベルや階層を結ぶときには「ならびに」が使われます。 つまり、選択関係では「または」と「もしくは」、併合関係では「ならびに」と「および」というように、階層を意識して読むとよいでしょう。 子供向けの箱分けを想像すると分かりやすく、まず小さな箱の中のものをつなぎ、その小さな箱をさらに大きな箱の中でつなぐイメージです。 長い契約条項でも、この「箱」を探しながら読むと、条件のまとまりを見失いにくくなります。
選択の階層を理解するときには、「普通自動車もしくは原動機付自転車、または自転車」のような例を、いったん頭の中で分解してみましょう。 最初の「普通自動車」と「原動機付自転車」は細かな分類どうしなので「もしくは」で結ばれ、そのまとまりと「自転車」が「または」で結ばれている、と考えます。 つまり、接続詞はただ語句の間に置かれている飾りではなく、「ここからここまでは仲間ですよ」と教えてくれる目印でもあるのです。 文章が長くて難しく感じたときこそ、「または」と「もしくは」がどこにあるかを探すと、選択肢の構造が少しずつ見えてきます。
12-3. 日常文では読みやすさ、契約書・法令では選択範囲と階層を重視する
同じ接続詞でも、日常的な文章と契約書・法令では重視するポイントが少し違います。 日常会話、社内メール、案内文などでは、堅苦しい印象を避けるため、「及び」「又は」「若しくは」ではなく、「および」「または」「もしくは」と平仮名で書くことがあります。 たとえば「会場までは電車もしくはバスをご利用ください」「お支払いは現金またはクレジットカードでお願いします」と書けば、意味を自然に受け取りやすいでしょう。 日常文では「または」と「もしくは」を厳密に区別せずに使うケースもあります。
ただし、日常文でも「および」と「または」の違いは軽く考えないほうが安全です。 「AおよびB」はAとBを含む関係、「AまたはB」はAとBを選択肢として示す関係なので、ここを混同すると読み手が取る行動まで変わることがあります。 イベントの持ち物で「本人確認書類および参加証」と書けば2種類を持参する意味に読めますが、「本人確認書類または参加証」と書けば条件が違って見えます。 読みやすさを優先するときも、条件そのものを変えてしまわないことが大前提です。
契約書、規約、法令などでは、さらに細かく選択肢の範囲と階層を意識します。 「または」は比較的大きな分類や上位の選択肢を結び、「もしくは」はその中の細かな選択肢を結ぶために使われます。 また、「および」は複数の要素をすべて含む関係を表します。 接続詞を誤ると、「何が必須なのか」「どこまでが選択可能なのか」という解釈に幅が生まれ、契約条件や権利義務の読み方にも影響するおそれがあります。 公的な文章を読むときは、「または=選択」という1段階の理解で終わらせず、その「または」がどのまとまりをつないでいるのかまで確認すると、意味を正確につかみやすくなります。
たとえば「本人もしくは代理人が提出する」という文では、「本人」と「代理人」が同じまとまりの中にある選択肢だと分かります。 一方、「本契約は当事者双方の合意または法令に基づき終了する」のような文章では、「当事者双方の合意」と「法令に基づく終了」という、より大きな条件が選択関係になっています。 同じORの仲間でも、どの大きさのまとまりをつないでいるかが違うのですね。 この違いを知っておけば、契約書を読んでいて「なぜここだけ『もしくは』なの?」と疑問に思ったときも、文章の階層を示すためだと考えやすくなります。
さらに注意したいのが、「および」を「どちらか一方」という意味で読まないことです。 たとえば「提出書類は住民票の写しおよび印鑑証明書とする」と書かれていれば、2種類の書類が併合されています。 「どちらか1つを出せばいいんだね」と考えてしまうと、条件を満たせない可能性があります。 反対に、書き手が本当はどちらか1つを求めるつもりだったのに「および」と書けば、読み手には両方必要だと伝わってしまいます。 日常文よりも厳密さを求められる文書ほど、接続詞1つが持つ意味を丁寧に確認することが大切です。
12-4. 複雑な条件では接続詞だけに頼らずカッコや箇条書きで明確化する
条件が2つだけなら、「AおよびB」「AまたはB」でも十分に意味を伝えられます。 難しくなるのは、A、B、C、Dのように選択肢が増え、さらに「この2つは同じグループ」「こちらの2つは別のグループ」という階層が加わったときです。 たとえば「納品は国内工場または海外工場のAラインまたはBラインから行う」と書くと、「国内工場のAラインとBラインなのか」「海外工場だけにAラインとBラインがあるのか」といった読み方の迷いが生まれやすくなります。 このようなときは、「納品は国内工場、または海外工場の(AラインもしくはBライン)から行う」のように、カッコでまとまりを見せると構造が分かりやすくなります。
同じ考え方で、「書面または電子メールまたはFAXで提出」と一列に並べるより、「書面、または(電子メールもしくはFAX)で提出」のようにグループを示すと、選択の階層が見えやすくなります。 文章を書く本人には意味が分かっていても、初めて読む人は、その頭の中にあるグループ分けを知りません。 だからこそ、「ここは1つのまとまりですよ」とカッコなどで見せてあげることが大切です。 特に、上位の選択と下位の選択が1文の中に混ざる場合は、接続詞の使い分けと視覚的な区切りを組み合わせると、読み間違いを減らしやすくなります。
文章がさらに長くなるなら、無理に1文へ詰め込まず、箇条書きにして条件を分ける方法も有効です。 たとえば「提出方法は次のいずれか」と書いたうえで、「1. 書面」「2. 電子メール」「3. FAX」のように並べれば、読み手は選択肢を目で確認できます。 反対に「次の書類をすべて提出」と示してから、「1. 履歴書」「2. 職務経歴書」と並べれば、「および」が意味する両方必要という関係も視覚的に伝えやすくなります。 「いずれか」と「すべて」のような補助的な言葉も使えば、接続詞だけを頼りに意味を読み取らせる文章より、さらに親切です。
複雑な条件を作るときには、まず内容を小さなグループに分けてから文章にすると整理しやすくなります。 たとえば、「AかBを選ぶグループ」と「CとDの両方が必要なグループ」があるなら、最初から全部を一直線につなぐのではなく、それぞれのまとまりを先に作ってみましょう。 そのうえで、グループどうしが選択関係なのか、併合関係なのかを確認します。 こうすると、「または」と「もしくは」、「および」と「ならびに」をどこで使うべきかも判断しやすくなります。
大切なのは、接続詞を正しく選ぶことだけではありません。 読み手が書き手と同じ構造を頭の中に再現できる文章にすることまで考えることが大切です。 「および=AND・両方」「または=OR・選択」という土台を押さえ、「もしくは」や「ならびに」で階層を読み分け、必要ならカッコや箇条書きでまとまりを見せましょう。 そうすれば、日常の案内文は読みやすくなり、契約書や規約のような厳密な文章でも「どこまでが条件なの?」という誤解を減らせます。 迷ったときは、まず「全部必要か、選べるのか」、次に「どこからどこまでが1つのグループか」の2点を確認すると、文章の意味を整理しやすくなります。

