クロックタワーのネタバレ解説|選択次第で運命が変わる!

「クロックタワーって、ただのホラーゲームでしょ?」と思っている方にこそ知ってほしい、この作品の“本当の怖さ”と奥深さ。本記事では、孤児院から始まる悪夢の物語や複雑に分岐する全エンディング、キャラクターの生死に関わる選択、さらには正史エンドの考察まで、ネタバレ前提で徹底解説します。

目次

1. はじめに

1-1. 「クロックタワー」はどんなゲームか?

1995年にスーパーファミコン向けに発売されたホラーアドベンチャーゲーム「クロックタワー」は、その不気味な雰囲気とスリリングな展開で、いまもなお多くのファンに愛されている名作です。このゲームは、主人公の少女ジェニファーが、不気味な洋館「バロウズ邸」からの脱出を試みるという物語で進行します。
特徴的なのは、凶悪な敵「シザーマン」から逃げ回る逃走型サバイバルホラーである点です。

プレイヤーは直接戦うことはできず、追いかけてくるシザーマンから隠れたり、逃げたりしながらストーリーを進めていく必要があります。
また、ゲームにはマルチエンディング方式が採用されており、プレイヤーの選択によって全9種類の異なる結末が用意されているのも大きな魅力の一つです。
この仕様により、プレイするたびに新たな発見があり、繰り返し楽しめる奥深いゲームとなっています。

1-2. 本記事の目的とネタバレの前提

この記事では、「クロックタワー」のエンディングの中でも特に重要なAエンドとSエンドについて、詳しい内容とその到達条件を中心に解説します。本作のストーリー展開を理解し、なぜこの2つのエンドが物語の中核をなすのかをしっかり掘り下げていく構成になっています。

そのため、作品全体のネタバレを多く含みます。まだプレイしていない方や、自分で物語の結末を知りたいという方はご注意ください。ただし、ネタバレを前提とすることで、このゲームの深い構造や魅力を余すところなくお伝えできると考えています。

特にSFC時代のゲームらしく、ヒントが極めて少ないゲーム設計になっているため、こうした情報はプレイ済みの方にとっても大きな価値があるはずです。今回は「ジェニファーがどのようにして生き延びるのか」というテーマを軸に、AエンドとSエンドの詳細な流れや、伏線の回収、物語の背景に迫っていきます。

また、Aエンドが公式続編『クロックタワー2』に採用された正史であること、そしてSエンドが唯一ジェニファー以外の生存者が確認できるエンディングである点にも注目していきます。

2. 物語の核心と世界観

2-1. ストーリー概要:孤児院から始まる悪夢

1995年にスーパーファミコン向けに発売された『クロックタワー』は、スローペースで進行するサバイバルホラーの先駆けともいえる作品です。
物語の主人公は14歳の少女ジェニファー・シンプソン。彼女は他の孤児であるアン、ローラ、ロッテとともに、「バロウズ邸」へ引き取られるところから物語が始まります。

この豪奢な洋館での生活に期待を寄せていた少女たちですが、案内役のメアリー先生が部屋を離れた直後、仲間の1人が姿を消す事件が発生します。
この瞬間から、一見平穏だった生活は一転し、少女たちは正体不明の恐怖に巻き込まれていくのです。

最も恐ろしい存在は、巨大なハサミを振り回しながら襲い来る殺人鬼「シザーマン」
彼との遭遇は完全にランダムで、プレイヤーは限られた情報の中で「何が起きているのか」を自分で見極めながら、恐怖と戦い、生き延びなければなりません。
少女たちを待ち受けるのは、ただのホラーではなく、想像を超える闇と家族の狂気に満ちた物語です。

2-2. 舞台「バロウズ邸」の構造と探索ルート

『クロックタワー』の主な舞台となるのが、広大で不気味な「バロウズ邸」です。
この館は東館・西館・中庭・地下・時計塔など、複数のセクションに分かれており、それぞれに異なる仕掛けや謎が散りばめられています。

探索は常に危険と隣り合わせ。特に西館の渡り廊下では、歩いてしまうと特定キャラ(例:アン)の死亡イベントが発生するなど、行動選択ひとつで物語が大きく変わっていきます。また、特定のアイテム——香水、ハム、黒いローブ、殺虫剤、金色の鍵、銀色の鍵など——を入手し、特定ルートに進むことで、エンディング分岐が発生します。

バロウズ邸の構造は、ただの探索の場ではありません。プレイヤーの選択次第で開かれる隠し部屋や儀式部屋、そして最終地点「時計塔」への道筋こそが、クロックタワーのゲーム性と恐怖の核心となっているのです。

2-3. キーパーソン紹介:ジェニファーと孤児たち

物語の主人公ジェニファー・シンプソンは、冷静で機転の利く少女です。
恐怖の中でも希望を捨てず、数々の危機を乗り越えながら、仲間たちを気遣い、真相に近づいていきます。
彼女の行動次第で他のキャラクターの運命も大きく左右されます。

他に重要な存在としては、以下の孤児たちが挙げられます。

  • アン:知的で落ち着いた性格の持ち主。彼女が生き残るかどうかはAエンドやSエンドに直結します。
  • ローラ:陽気でムードメーカー的存在。Sエンドでは、気絶していただけという形で劇的に生還を果たします。
  • ロッテ:行動的で頼れる少女。彼女がジェニファーを助けにくる展開は、Aエンドの中盤で特に印象深く描かれています。

そしてもう一人、重要な存在がメアリー先生
彼女は孤児たちを引き取った養母のような立場でありながら、物語が進むにつれて本性を現し、最終的には黒幕的な存在としてプレイヤーの前に立ちはだかります。
彼女の真の目的や狂気が徐々に明らかになる過程が、ストーリー全体の緊張感を加速させていきます。

このように、ジェニファーと仲間たち、それぞれのキャラクターの運命が選択肢によって複数の結末へと分岐する点こそが、本作の最大の魅力です。
プレイヤーが選ぶ行動の一つひとつが、彼女たちの生死を分けるのです。

3. 全エンディングの概要とルート条件一覧

「クロックタワー」には全部で9種類のエンディングが存在します。
それぞれのエンディングには特定のルート分岐やアイテム使用、イベントの選択が関わっており、1回のプレイでは到底すべてを体験しきれません。
ここでは、その全エンディングを網羅した早見表、生存・死亡の組み合わせチャート、そして分岐に関係するアイテムやイベントの関係図まで、わかりやすく紹介します。
初見プレイヤーでも「あ、なるほど!」と納得できるよう、なるべく丁寧に説明していきます。

3-1. 全9エンディング(A〜H、S)早見表

まずは「クロックタワー」のエンディングを一覧にして整理してみましょう。
それぞれのエンドには大まかにプレイヤーの行動や選択、そして仲間たちの生死が影響しています。

  • Aエンド:最も難易度の高い正史エンド。カラスの助けでメアリーを撃退。ジェニファーのみ生還。
  • Sエンド:唯一の2人生存エンド。カラスの恩返しでメアリーを倒し、ローラ(またはアン)と一緒に生き残る。
  • B〜Hエンド:順に、生還できる人数が減ったり、救出に失敗したり、ジェニファー自身が死亡するバッドエンドも。

ポイントは、「どの仲間が生存しているか」や「どの情報を入手しているか」によって分岐する点です。
また、金色の鍵、銀色の鍵、殺虫剤、香水、儀式の鍵などの使用タイミングもエンディングに大きく関わります。

3-2. 生存者・死亡者パターン別チャート

クロックタワーの魅力のひとつは、仲間たちの運命がプレイヤーの行動で変化する点にあります。
ここでは「誰が生存し、誰が死亡するか」によって到達するエンディングの組み合わせを表にまとめます。

生存者死亡者到達可能なエンディング
ジェニファーのみ全員A、B、C、Gなど
ジェニファー+アンまたはローラ1名死亡Sエンド(唯一の2人生存)
ジェニファー以外死亡ジェニファーH(バッドエンド)
仲間全員死亡アン・ローラ・ロッテE、Fなど

注目すべきは、「2人目の犠牲者を出さない」ことでSエンドにたどり着ける点です。
またAエンドでは、仲間は一時的に登場するものの最終的にはジェニファー1人生還となるため、ギリギリの選択が重要です。

3-3. 分岐に影響するアイテム・イベントの関係図

エンディングの分岐には、アイテムの取得順やイベントの発生順が大きく影響します。
以下に、主な分岐アイテムとイベントを関係図としてまとめました。

  • 殺虫剤 → 金色の鍵 → 金の鍵の部屋:メアリー先生のイベント発生トリガー。
  • ハム:毛むくじゃらの男を落ち着かせるために必要(Aエンド向け)。
  • 香水、黒いローブ:道中での必要イベントを進めるフラグ。
  • 医師の鞄:調べたかどうかでAとSの分岐が発生。
  • ミイラ撃退 → 巣箱の鍵 → カラス開放:カラスの恩返しイベントのフラグ。最終局面でメアリー撃退に繋がる。
  • 儀式の鍵+杖:儀式部屋の隠し通路出現フラグ。時計塔ルート確定。

特に時計塔情報メアリー先生情報は、最終盤の行動に大きく関わります。
これらをどのルートで得たか(ロッテから or 机の本から)でも、エンディングが変わる重要ポイントになります。

まとめると、「誰をいつ失い、どのアイテムをどの順番で取得し、どのイベントを経由したか」で結末が大きく変化します。
まるで迷路のように分岐していくストーリーを、何度も繰り返しながら解いていく楽しさがこのゲームの大きな魅力です。

4. 主要エンディング完全解説

4-1. Aエンド ─ カラスに救われる孤独な生還

Aエンドは、全9種類の中でも最も取得条件が厳しいエンディングです。
このルートではジェニファー以外は生存せず、唯一の生還者として脱出を果たすことになります。
プレイヤーは途中でカラスを解放するという一見些細な行動を経て、終盤にその恩返しを受けるという展開が描かれます。

ルートの流れは、ローラ(またはアン)を最初の犠牲者に選びながら、金色の鍵の部屋でランダムイベントのメアリー先生登場を誘発。
メアリーに気絶させられたジェニファーは中庭物置へ移動し、毛むくじゃらの男にハムを渡すことで好意的対応を受けます。
そこへロッテが登場し、檻を開けてくれるものの、直後にロッテは殺害されてしまいます。

その後、金・銀の鍵を使い、杖を入手して隠し通路を開通。
最終的に時計塔のエレベーターで3階へと到達し、ジェニファーはシザーマンを撃退します。
そして、一命を取り留めていたアン(もしくはローラ)と再会し、共に脱出するかに見えますが、ここでメアリー先生が再登場し、仲間を突き落とします

この絶体絶命の場面で、過去に助けたカラスの群れが登場し、メアリーを襲撃
彼女はそのまま時計塔から落下していき、ジェニファーだけが生き残ります。
一人で生還するこの結末は、サバイバルホラーらしい陰鬱な余韻を残します。

4-2. Sエンド ─ 唯一の二人生存ルートの真相

Sエンドは、ジェニファーともう1人が共に生存する唯一のエンディングです。
条件もやや特殊で、医師の鞄を調べる必要があるため、Aエンドとはルート分岐が異なります。
メアリー先生がジェニファーを気絶させるイベントを回避し、ロッテを生かしたまま地下で時計塔の情報を得る必要があります。

最終局面では、エレベーターで3階へと移動。
ここで倒れているアンまたはローラにジェニファーが駆け寄ろうとしたその時、再びメアリー先生が登場し襲撃します。
しかしここでもカラスが飛来し、メアリーを撃退。
ジェニファーは仲間を起こし、時計塔の屋上で2人並ぶ美しい余韻のラストを迎えます。

一見するとハッピーエンドのようですが、実はこのSエンドは正史ではないとされています。
続編『クロックタワー2』では、ジェニファーが単独で生還したAエンドが採用されているため、Sエンドはあくまでファン向けのボーナス的な扱いです。

4-3. B〜Hエンド ─ ノーマル/バッド/ギャグ展開の裏側

クロックタワーにはA・S以外にも、B〜Hまで多彩なエンディングが存在します。
それぞれに異なる死亡パターンや脱出失敗シナリオが用意されており、まさにマルチエンディングの醍醐味を感じられる構成です。

たとえばBエンドでは、カラスイベントなどを発生させずに地下から脱出する展開が見られます。
Gエンドでは全員が死亡するバッドエンドに繋がり、プレイヤーの選択ミスによって展開が大きく変化します。
また、Hエンドではゲーム開始早々に特定行動を取ることで発生する、ギャグ調な即死エンドも用意されています。

これらのエンディング群は、それぞれに「もしも」の展開が詰まっており、何度もプレイしたくなる動機となっています。
ただし一部は非常に分岐がシビアで、特定のアイテムやキャラの生死が結果を大きく左右するため、攻略情報なしでは達成困難なものもあります。

4-4. Gエンド ─ 全キャラ死亡パターンと悲劇の流れ

Gエンドは最も悲惨な結末であり、全キャラクターが死亡する完全バッドエンドとなります。
このルートでは、アン・ローラ・ロッテの3名が順次死亡し、ジェニファー自身も命を落とすか、逃げ場を失って絶望のまま幕が下ります。

特にロッテが登場する中庭イベントが発生せず、時計塔情報も得られずに終わるケースが多く、展開そのものが極端に暗くなるのが特徴です。
このGエンドを見ることで、他のエンディングが持つ希望の存在がより際立って見えるという構成にもなっています。

Gエンドでは、死亡パターンやイベントがしっかり作り込まれており、それぞれのキャラクターに対する愛着があるほど心に刺さるものとなります。
多くのプレイヤーにとって、「最も見たくないエンディング」の一つかもしれません。

4-5. 正史エンドとされるのはどれか?(クロックタワー2との接続)

『クロックタワー』の物語は続編『クロックタワー2』へと繋がります。
この接続において公式に採用されているのは「Aエンド」です。
ジェニファーのみが生還し、他の友人たちはすべて命を落としているという内容が、続編冒頭の設定に一致しています。

つまり、Sエンドのように二人が生き残る展開は非正史という扱いとなります。
Aエンドの「希望はあるが虚しさが残る結末」は、サバイバルホラーというジャンルに非常にマッチしており、物語の余韻としても効果的です。

正史ルートを意識してプレイするならば、カラスイベントをこなしつつ、ロッテが犠牲になるタイミングも踏まえて行動を選ぶ必要があります。
この緻密な分岐が、クロックタワーのシナリオをより深く楽しませてくれる要素となっています。

5. エンディング条件を深掘り

5-1. 香水・ハム・黒ローブが握る分岐の鍵

『クロックタワー』でAエンドやSエンドといった上位のエンディングに到達するためには、いくつかのキーアイテムの取得と使用が重要な分岐要素になります。その中でも特に重要なのが香水、ハム、黒ローブの3つです。

香水は特定の場所で入手することで、後のイベントを正常に進行させるためのトリガーとなります。一方、黒いローブはアイテムとしての使用だけでなく、「儀式」や「隠し部屋」など一連のシナリオに関係しており、持っていないと一部ルートが開かれません。

そして注目すべきなのはハムの存在です。毛むくじゃらの男が出現するイベントでは、このハムを渡すことで彼の協力を得て、脱出の道を切り開く流れに入ることができます。この展開はAエンドに直結するため、ハムの入手と使用はプレイヤーの選択に大きな影響を与えるのです。

5-2. 金・銀の鍵と隠し部屋のルート変化

金色と銀色の鍵は、いずれもゲーム中盤以降のルートを分けるために極めて重要です。金の鍵は殺虫剤イベントの後に入手でき、メアリー先生の登場イベントを引き起こすために必須です。このイベントを発生させることでジェニファーが中庭の物置へ移動し、後のハムイベントや毛むくじゃらの男との接触が可能になります。

一方、銀の鍵はさらに物語を深く掘り下げるためのアイテムです。銀の鍵を使って進める部屋では、壁画や机の上の本を調べることで「時計塔の情報」が得られ、終盤で時計塔ルートに入るための重要なフラグが成立します。

また、隠し部屋の出現条件もこれらの鍵に依存しており、医師の鞄を調べることでエンディング分岐に決定的な違いが生まれます。例えば、鞄を調べるとSエンド、調べない場合はAエンドに進む可能性が高まります。

5-3. 時計塔情報の取得方法と影響

「時計塔情報」とは、エンディングの成否を大きく左右するシナリオ上の知識イベントです。これを入手する方法は複数あり、プレイヤーの行動次第で得られるかどうかが変わります。

通常はロッテから地下で教えてもらう方法が一般的ですが、ロッテが死亡している場合は銀の鍵の部屋の机上の本を調べることで取得する必要があります。この情報を入手していないと、エレベーターで3階に行ってもエンディングフラグが成立せず、正しいルートに入れない場合があります。

また、時計塔情報を持っていると、エレベーターで最終フロアに移動した際の演出やメアリー先生との対峙にも影響します。これはAエンドやSエンドだけでなく、Eエンドなどにも共通した条件になっているため、情報の取得=生還の鍵といえるでしょう。

5-4. 医師の鞄イベントがもたらす分岐の罠

ゲーム終盤の隠し部屋にある医師の鞄には、意外にも重大なフラグが隠されています。この鞄を調べたかどうかによって、プレイヤーの進むエンディングがAかSかに分岐する仕組みになっています。

鞄を調べない場合はAエンドルートに入ります。このルートでは毛むくじゃらの男との接触が必要であり、ハムを使ったイベント進行が求められます。その結果、ロッテは犠牲になりますが、ジェニファーが一人生き延びるエンドとなります。

反対に鞄を調べた場合はSエンドルートが開かれます。この時、毛むくじゃらの男のイベントを回避する必要があり、それに伴ってロッテが生存します。すると、地下でロッテから時計塔情報を得るという別ルートが開かれるのです。

このように、たった一つの行動――鞄を調べるかどうか――がエンディングの「生存人数」に直結するという点で、非常に巧妙な罠となっています。プレイヤーがうっかり鞄を調べると意図しないエンドに入ってしまうこともあり、エンディング分岐の中でも最も注意が必要なポイントといえるでしょう。

6. 仲間たちの生死分岐ルート

「クロックタワー」では、主人公ジェニファーの友人たち——アン、ローラ、ロッテの運命が、プレイヤーの選択によって大きく分かれます。どの仲間が生き延び、誰が最初に犠牲になるのかは、エンディングに直結する重大なポイントとなります。この章では、彼女たちの死亡条件や、ルート選択による展開の違いを細かく見ていきます。

6-1. アン・ローラ・ロッテの各死亡条件と変化パターン

まず最初に押さえておきたいのは、3人全員が生存したままエンディングに到達することは不可能だという点です。「クロックタワー」では、物語が進行するごとに少なくとも1人、そしてルートによっては2人が命を落とす展開がほぼ確定しています。

たとえばローラは、プレイヤーが最初の犠牲者として彼女を選んだ場合、浴室で謎の死を遂げます。逆にアンを犠牲者に選んだ場合は、西館の渡り廊下を歩いて通過するとアンの死亡イベントが発生します。つまりここでは「走る」ことで死亡を回避できるというギミックが仕込まれています。

ロッテについては、Aエンドに至るルートでは中庭の物置でメアリー先生に殺されるシーンが発生します。しかし、Sエンドのように毛むくじゃらの男に会いに行かないルートでは、彼女は生存し、地下で時計塔情報を提供してくれる重要キャラになります。

6-2. 誰を最初の犠牲者に選ぶかで何が変わる?

プレイヤーが選ぶ「最初の犠牲者」は、物語全体の流れに大きく影響します。ローラを最初に失った場合、プレイヤーはアンやロッテとともに進行し、時計塔のラストでアンが登場するAエンドに到達しやすくなります。

逆に、アンを犠牲にした場合、ラストでローラが登場するパターンになりますが、どちらが登場しても物語の進行自体は同じです。ただし、終盤の演出や感情移入のしやすさが若干変わってくるため、プレイヤーごとに好みが分かれる部分です。

いずれにしても、「二人目の犠牲者を出さないこと」がAエンドやSエンドへの重要な条件となるため、プレイ中の選択には常に注意が必要です。

6-3. ロッテの役割と死亡タイミング別の展開

ロッテはストーリーの中盤から終盤にかけて、情報提供者として極めて重要な役割を果たします。特に時計塔への進行ルートを知る手段が、彼女の生死で大きく変わってきます。

Aエンドのルートでは、ジェニファーが物置で目を覚ましたあと、檻のカギを開けに来るロッテがその場で殺害されてしまう展開になります。この場合、時計塔の情報はロッテ以外の方法(机の上の本など)で入手する必要があります。

一方、Sエンドでは、ロッテは死亡せず、地下に出現してジェニファーに直接情報を提供してくれます。つまり、ロッテの死亡タイミング次第で進行ルートや情報収集のフローが変わる仕組みなのです。

6-4. 最後まで生き残れる仲間は誰か?

「クロックタワー」には9種類のエンディングがありますが、仲間キャラが最終的に生存するのはSエンドだけです。それも、倒れていた仲間(アンまたはローラ)が気絶していただけで生きていたという演出になっています。

Aエンドでも仲間が一時的に登場し、共に脱出できるかと思わせる展開がありますが、最終的にはメアリー先生によって突き落とされて死亡します。この残酷な展開が「クロックタワー」らしいところでもあります。

さらに注目すべきなのは、続編「クロックタワー2」ではAエンドのラストが正史として採用されている点です。つまり、シリーズ全体としてはジェニファーのみが生き残るという前提で物語が続いていくことになります。

以上を踏まえると、最後まで生き残れる仲間は、Sエンドの演出上のみ存在しているにすぎず、シリーズの正史では「仲間は誰も生き残れない」という事実が浮かび上がってきます。

7. 敵キャラクターと真の恐怖の構造

7-1. シザーマンの正体と行動パターン

「クロックタワー」における最大の恐怖の象徴といえば、やはり巨大なハサミを持った殺人鬼「シザーマン」でしょう。彼は突然現れ、こちらがどれだけ逃げても執拗に追ってくる存在として、プレイヤーの心に強烈な印象を残します。その正体は、バロウズ家の双子の片割れであるボビィ。人間離れした外見と異常な執着心を持つ彼は、生まれながらにして「選ばれた狂気」として育てられていたのです。

行動パターンは完全にランダムではなく、プレイヤーの進行状況に応じて特定のトリガーで出現するようになっています。たとえば特定の部屋に何度も出入りしたり、特定のアイテムを取得した瞬間などに出現するケースが多いです。この予測不可能さがプレイヤーに「いつ来るか分からない」という心理的な圧力を与え、恐怖をさらに高めています。

また、倒すことができないという設定も、プレイヤーに無力感を与える重要な要素です。ただしエンディング直前の展開では、時計塔のスイッチを操作することで彼を撃退することが可能。その一瞬だけ、プレイヤーは「支配される恐怖」から「抗う希望」へと感情が転じるのです。

7-2. メアリー先生の狂気と動機の深層

物語が進むにつれ、徐々にその正体が明かされていくメアリー先生。彼女は当初、孤児院の優しい引率者として登場しますが、実際にはバロウズ家の恐るべき後継者を育てる陰の責任者でした。彼女の狂気は、単なる個人の嗜虐性から来るものではなく、家系に課せられた呪われた使命感に根ざしています。

ゲーム終盤、彼女は「息子たちを殺された」とジェニファーに詰め寄りますが、これはプレイヤーに「彼女にとっての正義」も存在していたことを暗示しています。その台詞の裏には、愛情と支配欲、宗教的な信念が混在したゆがんだ母性が透けて見えるのです。

特筆すべきは、彼女が二度にわたって「カラスの群れ」によって倒される演出です。この描写は、プレイヤーが生物室で助けたカラスたちが物語に干渉するという因果の回収でもあり、まさに伏線の回収といえるでしょう。メアリー先生は狂気に呑まれた人物ではありますが、その動機は単純ではなく、一族の業と個人の歪んだ信念が交錯した存在であると言えます。

7-3. 毛むくじゃらの男は何者か?

ゲーム中盤に突如として現れる、毛むくじゃらの男。このキャラクターは、他の敵と違ってジェニファーを直接襲うわけではなく、むしろある条件下では彼女に協力してくれる存在となります。

特定のルート、特にAエンドでは、ジェニファーが気絶した後にこの男が現れ、ハムを与えることで一時的に味方となる演出が挿入されます。さらに、ロッテの協力によって檻から解放されたジェニファーは、毛むくじゃらの男を敵ではなく中立的な存在として認識することになります。

この男の正体については作中で明言されませんが、バロウズ家の実験や血統に関係している可能性が高く、人間の姿を保てなかったもう一人の「失敗作」であるという解釈も存在します。いずれにしても、ただのホラー演出のためのモンスターではなく、プレイヤーの選択次第で立ち位置が変わるという点で非常にユニークなキャラクターです。

またこの男と出会うかどうかは、メアリー先生とのイベント分岐やロッテの生死にも関わっており、エンディング分岐にも影響する重要な存在なのです。彼が完全な敵でも味方でもないという曖昧な立場は、「クロックタワー」という作品が持つ人間関係の不確かさと恐怖の多層構造を象徴していると言えるでしょう。

8. 印象的なイベントと伏線回収

8-1. カラスの救済演出と生物室のミイラ

『クロックタワー』のAエンドおよびSエンドで特に印象的なのが、カラスによる救出劇です。これは単なる演出ではなく、実はゲーム中盤でのプレイヤーの行動が直接つながる伏線回収となっています。

カラスイベントを発動させるには、まず生物室でミイラを倒して巣箱の鍵を入手する必要があります。その後、館内の「カラス部屋」で、檻に捕われたカラスを解放してあげるという、少し地味にも思えるアクションが必要なのです。このイベントを達成しておくと、物語のラストでカラスの群れがメアリー先生を襲撃し、ジェニファーを救出してくれます。

プレイヤーにとっては、それまで明確に意味を持たなかったカラスの存在が、最後の最後で形となって報われる展開に。まさにホラーゲームでありながら、心に残る恩返しのシーンといえるでしょう。

8-2. 子供部屋の人形戦と儀式の鍵

子供部屋の人形との遭遇は、突如として始まるアクション性の高いイベントとしてプレイヤーに衝撃を与えます。この不気味な人形を撃退することで得られるのが、ストーリー進行に不可欠な「儀式の鍵」です。

この儀式の鍵は、ピアノ室で杖を使って隠し通路を出現させるためのトリガーとして重要な役割を果たします。また、儀式の鍵という名前からも分かるように、この館でかつて行われていた異常な宗教的儀式の痕跡を象徴するアイテムでもあります。

このように、ホラー演出としての恐怖だけでなく、物語背景を深堀りする鍵として人形戦が設計されている点に注目すべきです。無機質な人形が動き出すという王道の恐怖演出を取り入れながら、プレイヤーの記憶に残るイベントとして機能しています。

8-3. ピアノ室と隠し通路出現の仕組み

ピアノ室でのイベントは、一見単なる探索の一環に見えますが、ゲーム終盤の展開を左右する重要な伏線回収ポイントとなっています。ここでは「杖」を使用することで儀式部屋に繋がる隠し通路が出現し、地下へ進行することが可能になります。

この仕組みは、序盤から館内に散りばめられた宗教的なアイテムや絵画、壁画の情報と連動しており、プレイヤーの観察力と記憶力が試される仕掛けです。特にAエンド・Sエンドの分岐条件に関わる「時計塔情報」や「メアリー先生情報」も、こうした仕掛けの先にあるため、伏線の連続がプレイヤーに連想力を促す構造になっています。

ホラーゲームにありがちな一方通行の恐怖演出ではなく、自らの行動が直接世界を変えるという体験が、このピアノ室のギミックで顕著に表現されているのです。

8-4. 中庭物置でのハムと毛むくじゃらイベントの伏線

中庭の物置で登場する毛むくじゃらの男と、彼に渡す「ハム」のイベントは、一見コミカルにも思える演出ですが、実はAエンドを達成するために欠かせない鍵イベントです。この場面では、前段階として「メアリー先生に気絶させられる」展開を引き起こし、中庭に連れ去られる必要があります。

そこで登場するのが、これまで何の意味もなかったように見える“ハム”。このアイテムを毛むくじゃらの男に渡すことで、檻の中から出る道が開かれ、結果的にメアリー先生との対峙に繋がるのです。

また、このシーンではロッテが登場して檻を開けてくれるというイベントも発生し、彼女の最後の登場と役割が描かれます。一連の流れは、それぞれ点在していたイベントが1つの線として繋がる伏線の回収とも言える内容であり、プレイヤーにとっては「なるほど」と納得感を持てる重要シーンです。

特にAエンドではこの一連の展開が発生しなければ、最終的な「カラスの恩返し」イベントにすら辿りつけないため、複数のイベントが複雑に絡み合った分岐条件として、作品全体の完成度を高めています。

9. 時系列で追う「ベストエンド攻略ルート」

9-1. Aエンドを狙うための時系列ルートマップ

Aエンドは「クロックタワー」の中でも最も入手難易度が高いエンディングです。まずゲーム序盤、東館の浴室で最初の犠牲者を「ローラ」か「アン」のどちらかに決めます。このとき西館の渡り廊下は必ず走り抜ける必要があります。歩いてしまうとアンの死亡イベントが発生してしまうため注意が必要です。

中盤では、香水・ハム・黒いローブを取得後、殺虫剤を使って「金色の鍵」を入手します。この鍵を使って金色の鍵の部屋へ入り、メアリー先生の登場イベント(ランダム)を発生させます。部屋を出入りすることで発生率が上がります。イベント発生後、ジェニファーは気絶させられ、物置部屋へ移動します。

物置では、毛むくじゃらの男にハムを渡すことで信頼を得ます。ロッテが現れて檻を開けてくれますが、その後すぐにロッテが殺害される展開になります。このとき、選択肢で「木の棒」を選ぶことでメアリー先生を気絶させることができます。

次は金色の鍵の部屋へ再訪し「銀色の鍵」を入手。これで銀色の鍵の部屋に入り、壁画と机の本を調べることで時計塔情報を得ます。ここまでで、ロッテが死亡していても時計塔ルートに進む準備が整います

次に生物部屋のミイラを倒して巣箱の鍵を入手し、カラス部屋で鍵を使用してカラスを解放。その後、子供部屋で人形を倒して儀式の鍵を入手、ピアノ室でを回収して儀式部屋へ。杖を使って地下への隠し通路を開放します。

地下では赤ん坊の怪物から逃げ、エレベーターで3階へ。シザーマンをスイッチで撃退し、終盤へと進みます。ここでアン(またはローラ)が登場し、共に脱出…と思いきや、メアリー先生に突き落とされ死亡。最後は解放したカラスの群れがメアリー先生を攻撃し、ジェニファーだけが生き延びるという流れになります。

9-2. Sエンドを達成するための手順と注意点

SエンドはAエンドに似た流れですが、唯一の“二人生存”エンドとして特別な位置づけです。最大の違いは、「隠し部屋で医師の鞄を調べる」ことが必要である点と、毛むくじゃらの男のイベントを発生させてはいけない点です。

序盤から中盤にかけては、アンまたはローラを一人だけ生存させた状態で進めていきます。ただし、ハムを渡してはいけない=物置イベントを回避し、ロッテを生かすことが求められます。これにより、地下でロッテから時計塔情報を得ることができるようになります。

隠し部屋では医師の鞄を調べることでSエンド条件が成立。以降の流れはAエンドとほぼ同様で、エレベーターで3階に向かい、シザーマンを撃退。

その後、倒れていたローラ(またはアン)にジェニファーが気づき、駆け寄るとメアリー先生が再登場。ここでもカラスがメアリー先生を突き落としてくれることで脅威が完全に去ります。

最後はジェニファーとローラ(またはアン)が並んで時計塔の上に立ち、物語が幕を下ろします。全9種のエンディングの中で、唯一、誰かがジェニファーと共に生き残る結末となるため、感動的なラストといえるでしょう。

9-3. ローラ/アンによって変わる終盤の演出差

Aエンド・Sエンドの両方において、終盤で登場する仲間キャラクターはローラまたはアンのいずれかになります。ただし、どちらを選んでも基本的な展開やイベント内容に大きな差はありません

Aエンドでは、ローラまたはアンが突き落とされるという演出があり、ジェニファーが孤独に生き残るという切ない展開になります。一方Sエンドでは、ローラまたはアンが気絶していただけで無事だったという形になり、二人で終わりを迎えます。

感情移入しやすいキャラクターによって、プレイヤーの印象も変わってくるでしょう。ローラは冷静でしっかり者、アンは少しおちゃめで愛嬌のある存在として描かれています。そのため、どちらと共に脱出するかによって、プレイヤーの心に残る余韻も少しずつ異なってきます。

9-4. まとめ

AエンドとSエンドは細かい条件の違いはあるものの、どちらも物語の核心に触れた“ベストエンド”です。しかし正史として採用されているのはAエンドであり、ジェニファー以外に生き残りはいないとされています。

一方で、Sエンドのように希望を持たせる結末があることも、このゲームの魅力のひとつです。ローラかアン、どちらかの仲間とともに時計塔の上に佇むその姿には、プレイヤー自身の選択の積み重ねが反映された結末として深みがあります。

もし「クロックタワー」を初めてプレイするなら、この2つのエンディングを目指してみるのがおすすめです。心揺さぶられる体験になるはずです。

10. シリーズ全体への繋がりと正史考察

10-1. 続編「クロックタワー2」への繋がり

スーパーファミコン版『クロックタワー』は、その後に続くシリーズの土台となる作品であり、特に「クロックタワー2」(プレイステーション版)との繋がりは、ファンの間でも注目されてきました。
この続編では、前作の主人公であるジェニファー・シンプソンが再登場し、前作での事件を「バロウズ館事件」として明確に言及しています。
つまり、『クロックタワー2』の世界では、前作の物語が実際に起きた事件として語られており、その生き証人としてジェニファーの存在が継承されているのです。

また『2』の冒頭で、ジェニファーが精神的なショックを抱えている描写があり、それが前作で彼女が体験した恐怖を暗に物語っています。
このことから、前作の結末が次回作に色濃く影響を与えていることが分かります。
特に「誰が生き残ったか」という要素は続編におけるキャラクター設定や人間関係の下地となっており、シリーズの中での連続性を感じさせる重要な要素となっているのです。

10-2. 開発側が描いた「正史」のエンディングは?

全9種類のマルチエンディングが用意されている初代『クロックタワー』ですが、その中で開発側が「正史」として採用したエンディングはAエンドであるとされています。
このエンディングでは、シザーマンを倒したあと、最後まで生き延びたのはジェニファーただ一人
一度は合流したアンやローラも、メアリー先生の襲撃によって命を落とし、結局ジェニファーだけが脱出に成功します。

このAエンドが「正史」とされる最大の根拠は、続編『クロックタワー2』で語られる「バロウズ館事件」の証言内容と一致している点です。
つまり、プレイヤーが味わった悲劇的な結末こそが、ゲーム世界の中で本当に起こった出来事として認定されているのです。
他にも“仲間が生き残るSエンド”や“誰も助からないバッドエンド”なども存在しますが、これらはあくまで分岐ルートであり、公式設定とは異なる扱いです。

10-3. Sエンドが“選ばれなかった理由”を考察

ファンの間で高く評価されているSエンド(隠しエンディング)では、ジェニファーだけでなくローラまたはアンとともに2人で生き延びるという、シリーズで唯一の希望ある結末が描かれます。
プレイヤーにとっても“報われた”感が強く、感情移入しやすいエンディングなのですが、なぜこのSエンドが正史に採用されなかったのでしょうか?

理由の一つとして考えられるのは、物語のトーンとシリーズの方向性との整合性です。
『クロックタワー』シリーズは、もともとゴシックホラーをベースとした救いの少ない世界観で展開されており、一人しか生き残れない非情なリアリティこそがテーマとして根底にあります。
もしSエンドのような救済のある結末を採用してしまうと、このシリーズ特有の「生存が奇跡である」という世界観が崩れてしまう懸念があるのです。

もう一つの要因は、続編への接続のしやすさです。
Aエンドでは、ジェニファーの「孤独な生還」が描かれており、この経験が『クロックタワー2』での彼女のトラウマや精神的不安定さに自然と繋がっていきます。
Sエンドで仲間と共に脱出してしまうと、その後のジェニファーの心理描写や物語構造に不整合が生じてしまう可能性があるため、シリーズ全体の一貫性を保つ観点から、Aエンドの方が「正史」として選ばれたと考えられます。

11. おまけ:初見殺し&隠し要素まとめ

11-1. バッドエンドで見られるユニーク演出

「クロックタワー」には、エンディングのバリエーションが豊富に用意されており、その中にはプレイヤーの予想を裏切るユニークなバッドエンドも存在します。代表的なものとして挙げられるのが「Gエンド」。このエンドでは仲間が全員死亡し、ジェニファーだけが逃げのびるどころか、恐怖に囚われたまま終幕を迎えるという展開になります。

特に、屋敷内での行動によって死亡する友人たち――アン、ローラ、ロッテのそれぞれに固有の死に方が設定されており、どれも不気味で不条理な演出が際立っています。例えば、アンが西館の渡り廊下で死亡するイベントは静寂を破るように突然始まる惨劇として、非常にインパクトのあるシーンです。ジェニファーの無力さを痛感させるこのエンディングは、初見プレイでは多くの人がたどり着くであろう典型的なバッドエンドであり、トラウマになったプレイヤーも少なくないでしょう。

11-2. 隠された演出・テキスト・恐怖演出集

クロックタワーの魅力のひとつは、探索の仕方や選択肢によって発生する隠された演出の多さです。たとえば、金色の鍵の部屋におけるメアリー先生とのランダム遭遇は、部屋を何度も出入りしなければ発生しないため、通常のプレイでは見落とされがちです。

また、香水やハムといったアイテムの用途も初見では分かりづらく、「そんなアイテムが生死に関わるなんて…」と驚かされる場面が満載です。特に毛むくじゃらの男にハムを渡すイベントは、初見では戸惑うどころか、アイテムを使うタイミングさえ迷う難所。これに失敗すると檻から出られずゲームオーバーになる可能性すらあります。

さらに、ミイラを倒してカラスを助けることで最終的にジェニファーを救ってくれる「カラスの恩返し」も、特定の手順を踏まないと見られない感動的な伏線回収演出です。一見意味のなさそうな行動が、最終盤でプレイヤーの命を救うという展開は、探索型ホラーゲームとして非常に完成度の高い設計といえるでしょう。

11-3. 実況動画で人気の“笑える死に方”

クロックタワーの実況動画が人気を博している理由のひとつに、「怖いのにどこか笑ってしまう死に方」があります。例えば、シザーマンに追われたジェニファーがドアの前で立ち止まって無言でやられる場面や、ピアノ室でなぜか突然人形に襲われるイベントなど、唐突かつ理不尽な死がテンポよく挟まれることで、視聴者のツボを刺激します。

中でも有名なのが、木の棒を使わずショットガンを手に取るギャグっぽい選択肢。この選択は本来ありえない行動なのに、「パクろうぜ(笑)」というノリで選ばれることも多く、実況者のコメント付きで一層笑いを誘います。

また、メアリー先生の異常なテンションや、落下する時の派手すぎる演出は恐怖と笑いの絶妙なバランスを生み出しており、ホラーゲームでありながらエンタメ性も高いのです。このように、「死に方」ひとつとってもプレイヤーと視聴者にさまざまな感情を抱かせてくれるのが、クロックタワーという作品の懐の深さと言えるでしょう。

12. まとめ

12-1. クロックタワーが今も語り継がれる理由

「クロックタワー」は、1995年にスーパーファミコン向けに発売されたサイコホラー・アドベンチャーゲームです。長年にわたりファンの間で語り継がれる理由のひとつは、マルチエンディングと複雑な分岐ルートにあります。たとえば、同じエリアを通っても「歩く」か「走る」かで友人の生死が変わり、最終的に得られる結末も大きく異なるのです。

こうしたプレイヤーの選択が物語を大きく左右する設計は、当時としては非常に先進的でした。また、メアリー先生やシザーマンといった敵キャラクターも、単なる脅威ではなく、背景や目的が明かされることで人間的な怖さを際立たせています。「怖い」だけではない、「物語としての深さ」や「遊ぶたびに新しい発見がある構造」が、今なお愛される最大の理由でしょう。

12-2. プレイ済みでも楽しめる伏線の数々

本作は、1度クリアしただけでは到底すべてを理解できないほど、巧妙な伏線が張り巡らされています。たとえば、館の随所に現れるカラスは初見ではただの演出に見えるかもしれません。しかし、特定の行動を取ることでカラスが助けに来てくれる展開が用意されており、プレイを重ねるほど「なるほど!」と思える瞬間が増えていきます。

AエンドやSエンドにおける「カラスの恩返し」はその典型で、カラス部屋の巣箱を開けたという選択が、物語のクライマックスで意味を持つという仕掛けは圧巻です。

他にも、メアリー先生の正体やシザーマンの背景についての情報が断片的に散りばめられており、攻略と考察を通じて新たな真実にたどり着く楽しさが詰まっています。これが、何度もプレイしたくなる理由のひとつでもあります。

12-3. 攻略と考察を通して見える“恐怖の本質”

クロックタワーが描く“恐怖”は、単にジャンプスケアや残虐な演出に頼ったものではありません。むしろその本質は、「自分の選択で物語が変わってしまう」ことへの不安にあります。友人を助けられるかもしれなかった、別のルートなら生き残れたかもしれない。

そうした“もしも”がプレイヤーの心に残り、後悔や罪悪感すら呼び起こす点が、本作の真に怖いところなのです。また、Gエンドのように全滅してしまう結末や、唯一の二人生存ルートであるSエンドなど、結末によってプレイヤーの感情の振れ幅も大きく変わります。

Aエンドがシリーズの正史とされていることからも、「助け合って生き延びることの困難さ」というテーマが、より強く浮き彫りになっていると言えるでしょう。考察を重ねるごとに、「恐怖」とは単なる怪物や凶器だけでなく、人間の心の弱さや残酷さを映す鏡であるということが見えてきます。