「プレジデント くだらない」と検索する人が増えている背景には、多くの読者が感じる“違和感”があります。ビジネス誌としての体裁を取りながら、実務的な深さや信頼性に欠ける内容、繰り返されるワンパターンな特集、そして「年収」「成功」といった夢を煽る構成に疑問を抱く声が少なくありません。本記事では、なぜ『プレジデント』が“くだらない”と評価されるのか、その構造的な要因を多角的に分析します。
1. はじめに:「プレジデント くだらない」と検索される背景
「プレジデント」という雑誌を一度でも手に取ったことのある人なら、どこかモヤッとした違和感を覚えた経験があるかもしれません。
「年収1500万円の男が必ずやっている7つの習慣」や「超一流の朝の過ごし方」といった、いわゆる“釣りタイトル”の数々。
それらは、まるで自分も明日から大成功できそうな錯覚を与えてくれますが、読み進めるうちにふと冷める瞬間が訪れるのです。
そんなときに多くの人が検索窓に打ち込むのが、「プレジデント 雑誌 くだらない」というワード。
そこには、単なる誹謗中傷ではなく、読者自身の違和感や疑問を整理したいという、本音の感情が込められているのです。
1-1. 検索者の本音:「釣りタイトル」か、「真面目な怒り」か
検索者の動機は、大きく2つに分けられます。
ひとつは、「またこんなタイトルか」と半ば呆れながら検索する“軽い違和感”のパターン。
もうひとつは、何冊も読んだ上で「中身がまるで伴っていない」「データの信頼性が低い」といった構造的な不信感を抱いた“真面目な怒り”のパターンです。
たとえば、「年収1500万円の人が持っている手帳」という特集では、母数や調査方法の明記が不十分なまま、仰々しいタイトルが躍ります。
読み手は「これは本当に年収1500万円の人が答えたアンケートなの?」と、根拠の薄さに苛立ちを覚えるのです。
また、掲載されているグラフの多くがパーセンテージ表示で、有効回答数や属性が見えません。
このような表現は、情報としての信頼性に欠け、読者をただ夢物語に浸らせるだけのものに見えてしまうのです。
1-2. 読者の誰もが感じた“違和感”の正体とは
ある読者はこう感じました。
「ファンタジーを読みたい気分だったから、ちょうど良かった」──これは皮肉を込めた正直な感想です。
「プレジデント」の多くの記事は、年収や成功、ビジネスマナーといった“成功者の幻想”を繰り返し提示します。
しかし、読者の多くはその「幻想」と現実のギャップに疲れているのです。
読んでいるうちに、「年収1500万円だから良い手帳を買うのであって、良い手帳を買ったから年収が上がるわけではないよね?」という、因果の逆転に気づきます。
この違和感は、多くの特集に共通するものであり、ある意味では「プレジデント」という雑誌の構造的な問題点を表しているとも言えるでしょう。
最も皮肉なのは、「最もためにならなかった本ランキング」の1位として、堂々と「プレジデント」が紹介されていたという事実。
そこだけは誠実すぎて、思わず笑ってしまったという読者もいるほどです。
2. プレジデント誌とは何か?──その立ち位置と特徴
2-1. 創刊の経緯とターゲット層の変遷
「プレジデント」誌が創刊されたのは1963年、日本の高度経済成長が加速していた時代です。
日本初の本格的ビジネス誌として、もともとは企業の経営層──とくに経営者や役員クラスを主な読者ターゲットに据えていました。
創刊当初は、ハーバード・ビジネス・レビューのようなアカデミックな要素と、経営哲学・人材育成に関する深掘りが主軸でした。
しかし、時代が進むにつれターゲットは大きくシフトしていきます。
とくに2000年代以降、「年収アップ」「成功者の習慣」「管理職の心得」など、**年収500万〜800万の中間管理職層が“経営者の思考”を覗き見るようなファンタジーの提供者**としての側面が強まります。
この変遷は、まるで経営者向けだったクラシックな料理店が、若者向けのカフェへと転身したかのようです。
「年収1500万円の人はどんな手帳を使うか」「成功者は朝5時に起きるのか」といった特集に見られるように、**読者の“理想像”に向けたノウハウや情報提供を行う雑誌へと変化**していきました。
そこにあるのは、実務者ではなく“向上心あるビジネスパーソン”に向けた夢と希望の設計図なのです。
2-2. メディア戦略:「年収・成功・経営」三本柱の黄金フォーマット
プレジデント誌の誌面構成には、ある一定の“型”があります。
それが「年収」「成功」「経営」という三本柱です。
このフォーマットは、ビジネスパーソンにとっての憧れや劣等感を巧みに刺激する構造になっています。
たとえば、「1500万円稼ぐ人が持つ共通点」「社長はなぜ午前4時に起きるのか」「仕事がデキる人のメモ術」など、**読者の自己改善欲求をピンポイントで突く見出しが目を引きます**。
しかし、こうした特集の構成を見ると、読者に夢を売っている側面が色濃く見えてきます。
「1500万円稼ぐ人は、他人に優しい」「決断が早い」などの抽象的な美徳が並ぶものの、それを実現するための現実的な手法や実務的な裏付けは乏しいのです。
これは、ある意味で“共感型ファンタジー”。
まるで自己啓発書と同じように、「自分もこうなれるかも」という期待感をくすぐる構成となっています。
このようなフォーマットは読者のリピート購買を促進するうえで非常に効果的です。
なぜなら、読者は毎号「今回は自分に役立つかもしれない」と思って購入するからです。
しかし、肝心の情報が曖昧なままでは、期待とのズレも生じやすく、「くだらない」との評価に繋がるのです。
2-3. ビジネス誌なのに“実務”を語らない?
プレジデント誌は一見すると、ビジネスパーソン向けの情報誌に見えます。
しかし、その実態は“実務の現場”よりも“成功の物語”に重きを置いたストーリーメディアに近いのです。
読者が抱く最大の疑問は、「この雑誌は本当に使えるのか?」ということです。
とくに、統計やアンケートに基づく特集では、データの出所や有効回答数が明示されていないことが多く、信頼性に欠けると感じる人もいます。
「年収1500万円以上のビジネスマンからの回答を元に」と書かれていても、読者は「本当にそんな人がこんな雑誌のアンケートに答えるのか?」と疑問を抱くのです。
また、よく特集される内容の多くは、「手帳の使い方」「朝活のすすめ」「成功者の習慣」など、誰にでも当てはまりそうな汎用的な話ばかりです。
一見すると有益そうですが、実際の業務に直結するようなスキルや戦略的な知識には乏しく、**ビジネス誌としての実用性はやや低い**と見ることもできます。
ある意味、プレジデントは「自己啓発」と「自己投影」を融合させた雑誌です。
自分を磨きたいと思う人に“物語”としての成功を提供することには成功していますが、それが現実的なビジネスの場でどこまで役立つかは読者の受け取り方次第なのです。
それゆえ、「くだらない」と一部で評価される背景には、**期待と現実の乖離**、つまり“ビジネス誌”というラベルに見合った中身を見出せない苛立ちがあるのかもしれません。
3. “くだらなさ”を生む7つの構造的要因
3-1. 特集のワンパターン化と再利用コンテンツ
プレジデント誌を数冊手に取れば、すぐにわかるのが特集内容のパターン化です。たとえば「年収1500万円の男はこう生きる」「できる人の手帳術」など、繰り返し登場する企画が目立ちます。実際、過去5冊を一読した読者が「共通して1500万特集がある」と指摘するほど、その内容は再利用されたテンプレートで成り立っています。
これは読者に新しい発見や驚きを与えるどころか、「またこれか」と感じさせる要因になります。新鮮味のない特集は知的好奇心を満たすどころか、退屈さを助長してしまうのです。
3-2. 年収や成功モデルの「神格化」
プレジデント誌はしばしば「年収1500万円」や「エリート経営者」像を美化しすぎる傾向があります。それ自体が問題なのではなく、こうした成功モデルが現実離れしているにもかかわらず、あたかも誰にでも実現可能であるかのように描かれている点が問題です。
読者の多くが年収500万円程度の層であるにもかかわらず、成功者像を過度に持ち上げ、「憧れ」ではなく幻想に近いイメージを植えつけています。この構造は、「成功したいけれど、現実は遠い」という乖離をむしろ強調してしまい、結果的に読者の虚無感につながります。
3-3. 取材・調査不足が露呈するアンケート設計
プレジデント誌に見られるデータやアンケート結果には、取材や調査の甘さが目立ちます。「年収1500万円以上のビジネスパーソンのアンケート」と銘打つにもかかわらず、その有効回答数や母数は明かされず、すべてパーセンテージのみで表記されています。これでは読者は数字の信頼性を判断できません。
さらに、アンケート自体もウェブで簡易的に行われていると見られ、「少額報酬目的の参加者」によって歪んだデータになっている可能性すらあります。本来、読者が知りたいのは質の高いエビデンスであり、数合わせのようなアンケートではないはずです。
3-4. 読者の知的好奇心をくすぐらない「浅さ」
プレジデント誌が陥っているのは、浅く広くを狙いすぎて、深さがなくなっていることです。例えば「人気作家の文章術を盗む」という興味深いテーマがあっても、その実態は「〜してみましょう」という表面的なアドバイス止まりで、知的な探究にはつながりません。
ページ数を消費しながらも、読み終えた後に何も残らないのは、この浅さが原因です。特集ごとのテーマ自体は魅力的でも、内容の掘り下げが足りないため、読者は「で、結局何だったの?」という気分になります。
3-5. ステレオタイプ強化に寄与する構成
誌面構成そのものが、社会的なステレオタイプを強化する作りになっています。「成功する人は朝4時に起きる」「できる男はスーツが違う」といった描写は、あたかもビジネス成功の条件のように語られます。
しかし、これらは極めて一面的な価値観にすぎません。多様な生き方や働き方が求められる今、一部の価値観だけを正義のように描く姿勢は、逆に時代錯誤な印象を与えてしまいます。
3-6. 読者層との認知ギャップ:幻想としてのビジネス成功像
もっとも深刻なのが、読者層と雑誌の描く理想像との間にある認知ギャップです。購買層の現実は中堅社員や中間管理職が多い一方で、誌面には「一流経営者の一日」や「成功者の思考法」が並びます。
このような内容は一見刺激的に見えても、実際には読者の生活とはかけ離れており、共感を生みにくいのです。「成功者たちの話」を通じて学びを得るどころか、逆に「自分とは別世界の話」と切り離されてしまいます。
3-7. 「自分もなれる」と思わせるファンタジー構造
そして最後に指摘したいのは、プレジデント誌が構築しているファンタジー構造です。「手帳を変えれば年収が上がる」「朝活で人生が変わる」——そんな魔法のようなロジックが誌面に満ちています。もちろん、実践的なヒントとして捉えることはできますが、それが全体として「自分もなれる」と思わせる夢物語として語られることに問題があります。
しかもその背後にある現実的な努力や失敗、再挑戦のストーリーはほとんど描かれません。これでは努力よりも演出が目立ち、読者を夢中にさせるファンタジー雑誌になってしまいます。
4. 競合記事の鋭い指摘に学ぶ──なぜ「くだらない」と断言されるのか
4-1. アンケートの信憑性と母数の不明瞭さ
プレジデント誌がしばしば用いる「アンケートによる分析」には、大きな疑問がつきまといます。
特に「年収1500万円以上の人にアンケートを実施した」という記述には、情報の透明性の欠如が感じられます。
例えば、ある号では「高年収者の習慣」と題して特集が組まれていますが、その元になっている調査データには有効回答数も記載されておらず、すべてが%で示されているだけです。
これは、読者にとっては非常に重要な「母集団の規模」や「調査手法」が分からず、記事の信頼性を損なう要因となります。 そもそも、年収1500万円を超えるような多忙な経営者が、無報酬で細かいアンケートに答えるだろうか?という素朴な疑問も湧いてきます。 このような読者の違和感に対し、誌面では明確な説明がされていません。 つまり、記事の根拠となる「データ」が、そもそも読者に納得感を与えるレベルに達していないのです。
4-2. データの因果関係を無視した論理展開
もう一つの問題は、因果関係を無視した短絡的な論理展開です。
たとえば、「成功者は高級手帳を使っている」→「だから高級手帳を使えば成功する」といった論調は、多くの読者にとって疑問を感じさせる構成です。
本来であれば、「成功する人は手帳にこだわる傾向があるのか、それとも成功してお金に余裕があるから高級手帳を買うのか」といった、相関と因果を冷静に区別する視点が必要です。 しかし、誌面ではそのような深い検証はされておらず、まるで「モノを買えば年収も上がる」と言わんばかりの書きぶりです。 このような浅い構成は、読者にとって「ただの思い込みの押し付け」と受け取られやすく、結果として「くだらない」と感じさせてしまうのです。
4-3. 「1500万円稼ぐ男」の“作り話”に見る編集方針
プレジデント誌では、しばしば「1500万円稼ぐ男」や「トップ経営者の習慣」といった見出しが登場します。
しかし、これらの多くは現実の人物ではなく、あたかも架空のロールモデルのように描かれていることがあります。
記事の中で紹介される“成功者”たちは、やたらと合理的で、正しい行動だけを取り、決して失敗しない人物として描かれがちです。
その結果、読者は「こんな人、本当にいるの?」と疑いの目を向けざるを得ません。 これはファンタジーを売る商業戦略読後に「これは作り話では?」と感じてしまうのです。
4-4. 読後感として残る「薄っぺらさ」の要因とは
最終的にプレジデント誌を読んだ人が感じるのは、「読んだけど、何も残らない」という虚しさではないでしょうか。
競合記事では、「5冊読んでも付箋を貼ったのは1ページだけ」と書かれていました。
この指摘が示すのは、情報の深さや独自性の欠如です。
また、特集内容がどれも似たり寄ったりで、いつも「年収1500万円の秘密」「経営者の朝習慣」といったテンプレートが使われており、読者は既視感を覚えるばかりです。 内容は変わっているようで、結局のところ読者の憧れやコンプレックスを刺激しているだけなのです。 つまり、読者の「知りたい」に応えるのではなく、「羨ましいと思わせたい」構成が繰り返されているわけです。 それでは当然、読者の成長や行動には結びつかず、読後には「時間を無駄にした」という感覚が残ってしまうのです。
5. 読者心理のメカニズム:なぜ人は“信じたい”のか?
5-1. コンテンツとしての“希望”と“欲望”の供給
「年収1500万円の男の特徴」「成功者が使っている手帳」など、雑誌『プレジデント』が打ち出す見出しには、共通して“こうすればあなたも成功できる”という暗黙の約束が込められています。
こうした特集は、冷静に考えれば根拠が曖昧だったり、母数の少ないアンケート結果に基づいていたりするにも関わらず、人々の関心を集めます。
これは「希望」や「欲望」を商品として提供しているからです。
雑誌にとって記事は単なる情報ではなく、読者の心に「まだ自分にも可能性がある」と思わせるためのエンターテインメントなのです。
例えば、調査の母数が開示されていなかったり、1500万円稼ぐ人が実際にアンケートに答えたかどうか疑わしかったりしても、その内容にリアリティを求める読者は多くありません。 読者は自分の理想像を重ね合わせ、「これを実践すれば近づけるかもしれない」と思い込むのです。 この心理的メカニズムは、テレビの占いや自己啓発書にも通じるものがあります。 つまり、“信じたい”という気持ちこそが、雑誌を成立させる燃料なのです。
5-2. 承認欲求とリンクした「読み物」としての魅力
現代人、とくにビジネスパーソンは日常の中で承認される機会が極端に少ないと言われています。
そんな中、「年収が高い人はこういう習慣を持っている」という記事は、読者にとって自分を確認するための鏡のような役割を果たします。
たとえ年収が届かなくても、「自分も似たような手帳を使っている」「朝型生活をしている」など、自己を肯定する材料として読まれているのです。
つまり、プレジデントのような雑誌は、「成功者とはこうあるべきだ」という社会的モデルを示しつつ、読者自身の承認欲求と密接にリンクしています。
競合記事にもあるように、実際にはその因果関係が曖昧だったり、逆である可能性(=成功したから良い道具を使う)もあるのですが、それでも読者は自分の現状を肯定するために記事を読み続けます。 なぜなら、それが読者の中にある「私は間違っていない」「あと少しで届くかもしれない」という感情を満たしてくれるからです。
5-3. 批判しながらも読んでしまう人間心理
「くだらない」と思いながらも手に取ってしまう。
これは雑誌やテレビといったマスメディアにありがちな現象です。
批判的な視点を持ちながらも、なぜ人は『プレジデント』を読んでしまうのでしょうか。
理由のひとつは、内容が“軽くて消化しやすい”ことにあります。 ビジネス雑誌でありながら、記事はストーリー仕立てで展開され、グラフや図解も多く、難解な論理を要求されることはありません。 そのため、昼休みや通勤時間など、“何となく頭を使いたい”時間にちょうどいい存在として機能しています。
また、「くだらない」と思うことで、読者自身は自分がそれを鵜呑みにしない知的存在であると再確認することもできます。 これはいわば、自分の“賢さ”を確認するための消費行動なのです。 このように、『プレジデント』のような雑誌は、批判を前提としつつも消費されるという不思議な循環構造を持っています。 ファンタジーとしての読み物である一方、読者に“上から見下ろす視点”という快感も提供しているのです。
5-4. まとめ
「プレジデントがくだらない」と感じながらも読者が手に取る背景には、希望、欲望、承認欲求、そして優越感といった複雑な心理メカニズムが存在しています。内容の信頼性に疑問があっても、雑誌が提供するのは事実ではなく、「読者が信じたい現実」なのです。情報の正確さよりも、心のすき間を埋めるコンテンツであることが、ビジネス雑誌としての役割なのかもしれません。それゆえ、批判と消費が共存する“読まれる雑誌”であり続けているのです。
6. 他のビジネス誌との違いと比較
6-1. 週刊東洋経済・日経ビジネス・ダイヤモンドとの立ち位置比較
ビジネス誌の中で「プレジデント」は、非常にユニークなポジションを占めています。たとえば、「週刊東洋経済」は経済分析と企業動向に重きを置き、データと現実に基づいた記事が主軸です。「日経ビジネス」は経営層に向けて構造改革やイノベーション事例などを淡々と伝える硬派な内容で知られています。「ダイヤモンド」はやや幅広い層にアプローチしながらも、投資や金融に関する実用的な知見に強みを持っています。
一方、「プレジデント」はというと、その編集方針は少し毛色が異なります。「年収1500万円」「一流の習慣」「成功者の朝習慣」など、キャッチーな見出しが目を引きますが、実際に記事を読むと、それがファンタジーに近い内容であることも少なくありません。ある読者は「5冊読んで付箋を貼りたくなったのは、たった1箇所だけだった」と感想を述べています。「年収1500万の人は〇〇をしている」といった構成が繰り返され、因果関係の不明瞭さやアンケートデータの信頼性の低さが目立つのです。
6-2. プレジデント独自のエンタメ要素
プレジデントの最大の特徴は、ビジネス誌でありながら読者に「夢」を見せる構成にあります。これはある種の「エンタメ性」であり、成功者の生態を描くことで読者に自己投影や高揚感を与えています。「経営者はみな良い手帳を使っている」「出世する人の通勤ルート」など、科学的根拠というより読者の憧れや希望に訴えかける内容が多く見られます。
もちろんそれが悪いわけではありません。むしろ、仕事に疲れたビジネスパーソンにとっては、ちょっとした息抜きや刺激になることもあるでしょう。しかし、それを現実的なアドバイスや知見と錯覚させてしまう構成には注意が必要です。「良い手帳を使えば年収が上がる」という単純なロジックでは、因果関係が逆転しているという批判も避けられません。
6-3. 書店やSNSでの露出と人気のカラクリ
それではなぜ、そんなプレジデントが常に書店の一等地に並び、SNSでも話題になるのでしょうか。答えは簡単で、表紙と特集タイトルのキャッチーさにあります。「部長で終わる人・社長になる人」「あの人が出世した理由」など、誰もが気になるテーマを並べて、興味を引く仕組みができているのです。
また、書店に並べる際の営業力や、SNSでの広告投下なども大きな要因です。内容の中には「最もためにならないビジネス書ランキングで1位」と紹介されていたという皮肉な事実すらあります。それを逆手にとって正直に掲載してしまうあたり、編集部のしたたかさや商業的センスが伺えます。つまりプレジデントは、単なる情報誌ではなく、マーケティング戦略に長けた「売れる雑誌」という側面が強いのです。
6-4. まとめ
プレジデントは、他のビジネス誌とは明らかに違うコンセプトで作られています。データ重視の「東洋経済」や構造的分析の「日経ビジネス」、実用性に富む「ダイヤモンド」に対し、プレジデントは「ビジネス風味のエンタメ誌」とでも呼べるでしょう。
その魅力は確かにあるものの、内容をうのみにするのではなく、話半分で読む視点が求められます。信頼性の低いアンケートや逆転した因果関係に気づくことができれば、読者として賢く付き合うこともできるはずです。大切なのは「夢を見る時間」と「現実を見る時間」のバランスを自分で取ることなのです。
7. それでも読む意味はあるのか?
「プレジデントなんてくだらない」と感じた人が、それでもページをめくる意味ってあるのでしょうか?実際、あるブログでは「ファンタジーを見たい気分で読んだ」と語られていました。それくらい、この雑誌にはリアルなビジネスとは異なる“夢の年収1500万円”がちりばめられていて、読者の現実逃避の道具になっているとも言えるのです。でも、そういう前提で読めば、むしろ楽しめる可能性もあります。だからこそ、ここでは情報誌としてではなく“読み物”としての意味を考えてみましょう。そして「くだらない」と切り捨てる前に、どう使いこなせばいいのかを考える視点を持ってほしいのです。
7-1. 「情報メディア」としてではなく「読み物」として読むべき?
プレジデントには、「1500万円稼ぐ男には〇〇の習慣がある」といった特集がよくあります。けれど、そもそもそのデータの信頼性には多くの疑問がつきまといます。たとえば、記事中で紹介されるアンケートの「母数」が不明で、グラフはすべて%表示。「年収1500万円の人が回答」と書かれていても、果たして本当に彼らがそんな調査に時間を使うのか、常識的に考えて難しいところです。
それでも、読み物として楽しむ分には、これはむしろ「成功者ファンタジー」を覗き見るエンタメと考えることもできます。現代人の多くがスマホで動画やSNSに逃げる中、「雑誌」という形で活字に触れながら空想に浸るというのは、案外悪くない娯楽です。つまり、情報収集というより「これはそういう夢の世界なんだな」と割り切れば、意外と心は軽くなるのです。
7-2. プレジデントの“使いどころ”と“割り切り”視点
たとえば、会社の休憩室や待合室に置かれているプレジデント。ああいう場所で手に取るとき、みんな真剣に読んでるように見えて、実はそんなに内容を鵜呑みにしているわけではありません。実際に読んでみたある人は、5冊読んで付箋を貼ったのは「人気作家の書き方を盗む」記事だけだったと述べています。つまり、“全部が役立つ”という幻想を持たず、「1つでもヒントがあれば御の字」というスタンスが必要なんです。
これはまさに「割り切り」が求められる読み方。ニュースや専門誌のように信頼性や精度を期待して読むとガッカリしますが、生活のヒントや意識づけの材料として捉えれば、ちょっとした発見があるかもしれません。だからこそ、読む人のスタンスが何より重要なのです。
7-3. 読み手のリテラシーが試されるメディア
結局のところ、「プレジデントくだらない」と感じるかどうかは、その人の情報リテラシー次第です。雑誌に載っている内容をすぐに「正しい」と受け入れてしまうのか、「これは本当かな?」と疑ってかかれるか。そこに大きな分かれ道があります。
記事では「因果関係が逆では?」という指摘もされていました。たとえば「年収1500万の人は良い手帳を持っている」とあれば、「だから手帳を持てば年収が上がる」と思ってしまう人がいます。けれど、逆かもしれませんよね。収入が高いからこそ、高い手帳を買えるだけかもしれない。そうした思考の整理ができるかどうかで、この雑誌を“くだらないゴミ”と感じるのか、“意外と使える読み物”と感じるかが分かれるのです。
つまり、「プレジデントがくだらないかどうか」は、読み手の視点が全て。あなたがどう読むかによって、その価値は大きく変わるのです。
8. 結論:「くだらなさ」との付き合い方
「くだらない」とされる雑誌に、私たちはなぜ惹かれてしまうのでしょうか。それは単に中身が空虚だからではなく、読む側の期待や心の拠り所に深く関わっているのかもしれません。とりわけ『プレジデント』のようなビジネス誌は、数字やデータ、成功者の習慣といった形で「上を目指す幻想」を提供してきました。それが読者の共感を得るか、反発を招くかは、その人自身の情報リテラシーと人生観によって分かれるのです。
8-1. 批判とユーモアのあいだにある読者の成熟
たとえば、件の記事では筆者が『プレジデント』を「ファンタジー」と表現しています。年収1500万円の経営者像を、年収500万円の読者に提示する構図は、まるで中世のおとぎ話のようです。そしてこの「ファンタジー」の中には、現実の苦しさから逃げたいという素直な願望が潜んでいます。それを笑い飛ばすのか、真に受けてしまうのかは、読者の成熟度によって大きく変わるでしょう。
また筆者は、「プレジデントは最もためにならない本」と自ら紹介している点に対し、「妙に愚直だ」と評価しています。ここには批判精神とユーモアの絶妙なバランスがあり、それを読み解ける力が問われているのです。つまり、こうした雑誌を通して私たちが鍛えるべきは、「読む力」よりも「読み方を問う力」なのです。
8-2. 情報リテラシー時代における“選ぶ力”とは
現代は「情報爆発の時代」とも言われています。SNSやWebメディアを通じて、膨大な数の成功法則や自己啓発のノウハウが日々発信されています。『プレジデント』もそうした情報の海の中にあるひとつの島にすぎません。では、何を選び、何を捨てるべきか。
記事では、データの不透明性に対する鋭い疑問が呈されています。たとえば「1500万円稼ぐ人の特徴」とされる特集に対し、「そのデータは本当に有効なのか?」「因果関係が逆転していないか?」と冷静な視点で検証しています。このような視点こそ、真の意味での情報リテラシーだと言えるでしょう。単に「役に立ちそう」と感じて読むのではなく、「なぜこの特集が組まれているのか」「誰の得になるのか」と問い直す力が、選び取る力へとつながっていくのです。
8-3. プレジデントは「大人のファンタジー」なのか?
プレジデントのような雑誌を、単なる情報源としてではなく、「物語」として読むという視点はとても重要です。なぜなら、そこに描かれる「理想のビジネスマン」像は、リアルというよりは憧れや虚構に近いからです。記事の筆者も、「今日はファンタジーを見たい気分だった」と正直に述べていました。つまり、プレジデントの読者たちも、本当は夢と現実のあいだを知っているのです。
このように考えると、プレジデントとは一種の「大人のファンタジー」であり、現実に疲れた社会人が週に一度だけ「上昇気流に乗った気分」を味わうためのメディアだとも言えるでしょう。それを真に受けすぎると危険ですが、ユーモアを交えて読み、そこから何か一つでも気づきを得ることができれば、決して「くだらない」と切り捨てるべきではないのかもしれません。
結局のところ、くだらないかどうかを決めるのは、そのコンテンツそのものではなく、それに向き合う私たちの姿勢なのです。