生活保護は親と同居でも受給できる?制度の仕組みと注意点を解説

親と同居していると、「生活保護は受けられないのでは?」と悩む方は少なくありません。同居=一世帯と見なされるという制度上のルールがある一方で、実は条件を満たせば受給が可能なケースもあるのです。

本記事では、生活保護と親との同居に関する基本的な制度の仕組みから、同居しながら生活保護を受けるための具体的な条件、別世帯として認められるための準備や証拠、さらには福祉事務所との対応ポイントまでを詳しく解説します。

目次

1. 生活保護制度と「親との同居」の基本理解

1-1. 生活保護とは何か?制度の目的と仕組み

生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、経済的自立を支援する制度です。

日本国憲法第25条に基づき、生活保護法によって定められており、収入や資産が国の定める最低生活費を下回る場合に支援が行われるのが基本的な仕組みです。

この制度は、単なる金銭の給付にとどまらず、生活の安定や再出発の支援といった社会的役割も担っています。

また、生活保護の支給は一律ではなく、地域や世帯構成、年齢などに応じた「必要最小限の額」を支給することが原則とされます。

例えば、東京都に住む単身高齢者と、地方の若年夫婦では、必要とされる生活費に差があるため、支給額も異なります。

1-2. 「世帯単位の原則」が持つ意味とは

生活保護制度の大原則のひとつが、「世帯単位の原則」です。

つまり、生活保護の申請や受給は、個人ではなく一緒に住んでいる家族全体を一つの単位(世帯)として判断されるということです。

例えば、親と子が同居している場合、たとえ子どもが無職で困窮していても、親に収入や資産があればその子どもだけの生活保護申請は原則として認められません。

これは、親子が生活費や住居を共有しているとみなされるためで、世帯内の誰かに「扶養能力」があれば、その支援が優先されるからです。

この「世帯単位」の考え方は、生活保護だけでなく、国民健康保険料や就学援助、奨学金制度など多くの公的制度にも共通して適用される仕組みです。

1-3. 親と同居=一世帯とみなされる理由

親と同居している場合、生活保護の申請では「同一の生計を営んでいる」=一世帯と判断されるのが通常です。

これは、たとえ住民票上で「世帯分離」していても、実際に食費や光熱費を共有していれば、生活実態としては一世帯とされてしまうためです。

たとえば、親の年金で食事をまかなっていたり、同じ冷蔵庫や電気・ガス代を分け合って使っている場合などが該当します。

そのため、親に一定の収入があると、子どもだけが生活保護を受けたいと申し出ても、「親がまず扶養すべきではないか」と判断されるケースが大半です。

また、生活保護法第4条には、民法の扶養義務が優先されると明記されており、福祉事務所から親に対して「扶養義務照会」が行われることもあります。

その結果、親に「扶養能力あり」と判断されれば、生活保護は認められず、「親と話し合って支援を受けてください」と助言されることもあるのです。

こうした事情から、実家で親と同居しながら子どもだけが生活保護を受給するのは極めて困難といえます。

ただし例外的に、「実質的に生計を完全に別にしている」「病気や家庭内問題などにより実家からの支援が困難」と認められる場合に限り、別世帯として保護される可能性がありますが、これは非常に厳しい条件のもとで判断されるものです。

2. 同居しながら生活保護を受けられるケースとその条件

生活保護は基本的に「世帯単位」での判断となるため、同居している家族がいれば、その家族も含めて収入や資産の状況が確認されます。

つまり、一人だけの困窮ではなく、家族全体が生活に困っている場合に初めて、生活保護の対象となるというのが原則です。

しかしながら、いくつかの例外的なケースでは、実家で親と同居していても生活保護の対象になることがあります。

ここでは、どのようなケースでそれが可能となるのかを、わかりやすく説明していきます。

2-1. 家族全体の収入が最低生活費を下回る場合

もっとも基本的な要件は、家族全体の収入が国が定めた最低生活費を下回っていることです。

たとえば、親が年金生活をしており、その年金額がわずかしかない場合や、子どももアルバイトでわずかな収入しか得られていないような家庭では、生活保護の対象になる可能性があります。

最低生活費は地域や世帯の人数・年齢構成によって異なり、東京23区と地方都市では数万円の差が出ることもあります。

実際の額は福祉事務所で確認する必要がありますが、厚生労働省のホームページでも試算は可能です。

収入が少なく、資産もない家族が一つ屋根の下で暮らしている場合には、世帯全体として保護の対象になることがあります

2-2. 同居親が高齢・無収入・要介護の場合

同居している親が高齢で年金収入もほとんどない、あるいは介護が必要な状態である場合、生活保護の必要性が高まります。

たとえば、80代の親が軽度認知症で働けず、子どもが非正規雇用で家計を支えているという家庭では、親の介護費用や医療費がかさみ、生活が破綻しやすい状況にあります。

このような場合、親子の両方が生活保護の対象となるケースが少なくありません。

介護認定を受けている親がいると、介護サービスに関する扶助(介護扶助)が加算される可能性もあります。

要介護状態の親を抱えた世帯では、生活保護を申請することで、介護と生活の両立を図るサポートを受けることができるのです。

2-3. 特例で「別世帯扱い」される要件とは

生活保護では基本的に「同じ家で暮らしている=同一世帯」とみなされますが、特例として「別世帯扱い」が認められるケースも存在します。

それは、親と子が同じ家にいても「生計をまったく別にしている」と客観的に認められる場合です。

具体的には、次のような条件が該当します。

  • 親子で収入・支出を完全に分けて管理している
  • 食事や光熱費、生活費をそれぞれ別に支払っている証拠がある
  • 税金や公共料金の契約名義が異なっている
  • 銀行口座や携帯電話などの契約も個別になっている

また、学生が生活保護世帯に同居する場合には、別世帯扱いされることもあります。

これは、保護対象者と学生では制度の適用が異なるため、進学により保護から外れるという判断が下されるからです。

ただし、これらはごく一部の例外であり、多くの同居世帯では「別世帯」とはみなされません。

そのため、生活保護を個人単位で受けたい場合には、明確な理由と実態の証明が求められることを理解しておく必要があります。

2-4. 家族との生計が明確に別であると認められる具体例

別世帯扱いを認めてもらうためには、日常生活の中で「親と生活を完全に分けている」と客観的に証明する必要があります。

たとえば、次のような具体例が該当します。

  • 親とは玄関・キッチン・風呂場なども別にしている「二世帯住宅」のような生活スタイル
  • 毎月、家賃や光熱費を「居候」として一部支払っている
  • 食事を別々にとり、食費も別会計で管理している
  • 郵便物や連絡先などが完全に分離されている

これらの事実がある場合は、「同じ家にいても別々に暮らしている」と判断され、福祉事務所が個別に生活保護の必要性を認める場合があります。

もちろん、最終的な判断はケースワーカーによる調査に基づいて行われますが、このような生活実態が確認されれば、生活保護が認められる可能性があるのです。

2-5. まとめ

親と同居しながらでも、一定の条件を満たせば生活保護を受けることが可能です。

ポイントは、「世帯全体の収入が最低生活費を下回っていること」や「別世帯としての実態が明確であること」です。

また、親が高齢や要介護であるといった事情がある場合にも、生活保護の対象になる可能性があります。

しかし、これらはいずれも例外的なケースであり、生活保護の申請は慎重な準備と証明が必要です。

不明な点は、福祉事務所や社会福祉協議会などの専門窓口に早めに相談することが大切です。

3.「別世帯扱い」にするために必要な準備と証拠

生活保護を申請したいけれど、親と同居していると「世帯が一緒だから」と申請が却下されることがあります。この壁を乗り越えるには、「別世帯扱い」の認定を受けなければなりません。つまり、福祉事務所に「この家の中でも生計は別々で、家族に頼らず自立している」と納得してもらうことが大切です。ここでは、別世帯認定を得るために用意すべき証拠や、実際に認められた事例について解説していきます。

3-1. 生計が分かれていることを示す証拠一覧

「生計が別」とは、生活費のやり取りをしておらず、金銭面での依存関係がないという意味です。ただし口頭で「お金は別にしてます」と言うだけでは不十分です。福祉事務所は書類や生活の実態から総合的に判断するため、以下のような具体的かつ客観的な証拠を用意する必要があります。

  • 別々の銀行口座の利用明細(お互いの収支が混ざっていない)
  • 家賃・光熱費の支払い証明(自分の分だけを負担していることがわかる)
  • 食費の個別管理(買い物のレシート、個別の冷蔵庫・棚の利用など)
  • 日用品や家具の購入履歴(共用ではないことの証明になる)
  • 郵便物や保険・契約関係書類の住所・名義が本人名義
  • 実際の生活スタイルが異なることを示す写真やメモ(居室が完全に分かれている等)

こうした「見える化された証拠」が揃っていないと、たとえ気持ちが自立していても別世帯と認められない可能性が高いです。些細なことでも、できるだけ記録として残しておくことが重要です。

3-2. 住民票の世帯分離だけでは不十分な理由

「住民票上で世帯を分ければ別世帯として扱ってもらえるのでは?」そう考える人も少なくありません。しかし生活保護の世界では住民票の世帯分離=別世帯認定とはなりません。

生活保護では実態に基づいた「生計の同一性」が問われるからです。いくら住民票を分けていても、たとえば食事を一緒にしていたり、光熱費や家賃を親がまとめて払っていたりすれば、「実質的に一緒に暮らしている」と判断されます。

逆に言えば、住民票を分けていなくても実際の生活が完全に分かれていれば別世帯と認められるケースもあるのです。福祉事務所が重要視するのは、「書類」よりも「生活の中身」です。

3-3. 電気・ガス・食費などの分離の工夫とポイント

別世帯と見なされるためには、生活費を完全に分けることが求められます。ここでは、光熱費や食費を分離する具体的な工夫を紹介します。

電気・ガス代:メーターが一つしかない住宅でも、個別に使った分を計算し、親と折半または別々に支払うようにしましょう。たとえば、スマートメーターや電気使用量の明細を写真で残すことも有効です。

食費:冷蔵庫を分けたり、調味料や食材の棚を個別に使ったりすることで、「一緒に食事をしていない」ことをアピールできます。自分の分の食材は自分で買い、レシートを保管しておくと証拠になります。

生活用品:洗濯洗剤やトイレットペーパー、掃除用具など、共用されやすいものはできる限り個別に購入し、保管場所も分けましょう。

支払い方法:日用品や光熱費などを支払う際は、現金ではなくできるだけクレジットカードや口座振替を利用し、後で証明できるようにしておくと安心です。

3-4. 別世帯を認めさせたケーススタディ

ここでは、実際に「親と同居しながらも別世帯として認定された」ケースを紹介します。あなたの状況と重ねながら読み進めてください。

ケース1:40代男性・就労不能、母親と同居
母親は年金受給者で生活費に余裕がなく、本人はうつ病のため就労困難。生活費をすべて本人が自己管理しており、食事も別々。福祉事務所に光熱費の折半記録、食費の支出メモ、医師の診断書を提出。結果として「生計は完全に分かれている」と判断され、単身世帯として生活保護が認定されました。

ケース2:30代女性・親と同居だが、昼夜逆転生活
介護職で夜勤が多く、親とはほとんど顔を合わせない生活。キッチン・トイレは共用だが、家賃・光熱費は別口座で支払っており、食事はほぼ外食。生活費のレシートを提出し、居室の独立性も写真で説明。生活の実態が明確に分かれていたため、別世帯扱いが認められました。

こうした事例に共通しているのは、「たまたま親と同じ家にいるだけで、生活のすべてを自分で管理している」という点です。自己完結した生活スタイルをいかに裏付けられるかが、別世帯認定の鍵となります。

3-5. まとめ

親と同居していても、生活保護を単独で受けたいと考えるなら、「生計が別であること」をしっかりと証明する準備が必要です。住民票の世帯分離だけでは不十分であり、生活の実態を裏付ける具体的な証拠が求められます。

電気・ガス・水道・食費・家賃など、日々の出費を分け、記録に残しておくことが、福祉事務所とのやり取りでも大きな助けになります。また、実際に別世帯と認められた事例を参考に、自分の状況に足りない部分があれば、改善する意識も大切です。

生活保護の目的は「自立」にあります。その考えに沿った行動を取っているかどうかが、最終的な判断を分けるポイントになります。安易に保護を求めるのではなく、誠実に準備を重ねることで、別世帯として認められる可能性は決してゼロではありません。

4. 親と同居していても生活保護が受けられないケースと対策

生活保護は、経済的に困窮した人が最低限度の生活を送るために設けられた制度ですが、親と同居している場合には、その制度の利用に大きな制限がかかることがあります。

なぜなら、生活保護は「世帯単位」での支給が原則とされており、同居している家族が扶養できると判断されれば、本人だけの困窮では保護を受けられないケースがあるからです。

ここでは、親と同居していても生活保護が受けられない典型的なケースと、その対策について具体的に解説していきます。

4-1. 親に年金や資産がある場合の影響

同居している親に年金収入や預貯金、不動産といった資産がある場合、その資産は「世帯全体の収入・資産」とみなされます。

たとえば、親が毎月13万円の年金を受け取っている場合、本人の収入が0円でも親の年金が世帯収入として計算されるため、生活保護の基準を超えてしまう可能性が高くなります。

また、親が一軒家やマンションを所有している場合、その不動産が居住用であるかどうか、そして資産価値がどの程度あるかなども審査の対象になります。

不動産が高額資産と判断されれば、たとえ本人に収入がなくても生活保護の対象にはなりません。

対策としては、親の資産状況を明確に整理し、「自分の生活費には使えない」理由を証明する必要があります。

例えば、年金がほとんど医療費や借金返済に使われている、親の認知症や浪費癖でお金をコントロールできないなど、客観的な資料や医師の診断書が有効です。

4-2. 同居親が扶養能力ありと判断された場合

福祉事務所が生活保護の申請を受け付けた場合、同居する親に「扶養能力があるかどうか」が厳しく審査されます。

民法第877条では、親子は互いに扶養義務を負うことが定められています。そのため、親に安定した収入(年金・労働収入)がある、または不動産収入などがある場合には、「親があなたを養える」と判断されることがあります。

このような判断が下されると、福祉事務所からは「まず親に養ってもらってください」と指導され、生活保護の申請が却下されるケースもあります。

扶養能力があるとされても、実際に扶養されていない、もしくは扶養を拒否されている場合は、その実態を証明する必要があります

親が扶養の意志を明確に拒否しているのであれば、その旨を文書で記してもらうことで、福祉事務所の判断に影響を与える可能性があります

また、親自身が生活に困っている、病気を抱えているなどの事情がある場合も、「扶養能力なし」と判断されやすくなります。

4-3. 生活保護申請時に想定される「扶養照会」への対応方法

生活保護を申請すると、福祉事務所は申請者の親や兄弟姉妹などに対して「扶養照会」を行うのが通例です。

これは「この人をあなたが養うことはできますか?」という確認であり、回答次第で申請者の生活保護受給が左右される場合があります。

扶養照会には文書が郵送され、親が「養えない」と回答すれば、その内容が生活保護の審査に加味されます。

ただし、「扶養照会が来た=扶養を強制される」というわけではありません。あくまで意向を確認するための手続きであり、扶養の意思がないなら、その旨をしっかり伝えることが大切です。

対応としては、親に「自分の生活で精一杯であり、扶養は困難」と正直に回答してもらうことが最も重要です。

また、事前に親とよく話し合い、どのような回答をするのが現実的かを相談しておくと安心です。

4-4. 扶養拒否や困難を示すための客観的証明とは?

扶養を拒否された、もしくは親に扶養する能力がないと主張する場合、ただの口頭説明では不十分です。福祉事務所は、書面や証拠に基づいて事実を確認するため、客観的証明が必要となります。

たとえば以下のような証明方法が考えられます:

  • 親の年金額がわかる書類(年金通知書や通帳の写し)
  • 親が多額の借金を抱えていることを示す資料(債務整理の記録など)
  • 医師による親の病状・認知症診断書
  • 親が扶養を拒否した旨の自筆署名入り文書

これらはすべて、「親が実際には扶養できない、またはしない意志がある」ことを裏付ける材料になります。

特に、親が精神疾患や身体的な病気で自分の生活も難しいという場合には、診断書や介護認定の情報が非常に有効です。

また、家庭内の不和や虐待の事実がある場合には、過去の相談履歴や警察・行政への通報記録なども証明として使えます。

重要なのは、どんなに厳しい家庭状況でも、「証拠がなければ説明は通らない」という現実です。

福祉事務所の判断材料となるよう、できる限り文書や第三者の証明を準備することが、生活保護受給への第一歩になります。

5. 実家を出て生活保護を受けるという選択肢

5-1. 「生活保護目的の一人暮らし」がNGな理由

生活保護を受けるために「とりあえず実家を出て一人暮らしを始めればいい」と考える人もいますが、この考え方には大きな落とし穴があります。

福祉事務所では、申請者のこれまでの生活や家族との関係、引っ越しに至った事情などを丁寧に聞き取ったうえで、本当に生活保護が必要かどうかを判断します。

そのため、もし「生活保護をもらうために家を出ました」という説明になってしまうと、「自立を妨げているだけ」とみなされてしまい、保護が認められないことも少なくありません。

生活保護はあくまでも自立の支援です。実家を出る理由に正当性がないと、かえって生活が行き詰まってしまう可能性もあるのです。

5-2. 実家を出る前に必要な準備とチェックリスト

実家を出て生活保護を受けたいと考えている場合、いきなり荷物をまとめて出るのではなく、事前の準備が欠かせません。

以下の準備とチェック項目を確認しておきましょう。

  • 現在の収入・預金残高を把握しているか
  • 引っ越し先を探しているか(家賃が住宅扶助の範囲内か)
  • 生活保護の申請前に相談できる窓口を知っているか
  • 実家を出る理由が「やむを得ない事情」と説明できるか
  • 必要最小限の家財や生活用品の準備ができているか

特に大切なのは、「実家を出なければ自立ができない」という事情をきちんと整理し、それを言葉にできるようにすることです。

福祉事務所での聞き取りに備えて、あらかじめメモなどを作っておくと、気持ちが整理しやすくなります。

5-3. 家を出るための初期費用と住宅扶助の限度額

一人暮らしを始めるには、どうしてもまとまったお金が必要になります。

敷金・礼金・仲介手数料・前家賃といった初期費用に加え、家具や家電など生活必需品の購入費もかかります。

仮に家賃5万円のアパートを借りるとすれば、入居時には少なくとも15~20万円程度の出費が発生するのが一般的です。

生活保護には「住宅扶助」という制度があり、地域や世帯人数に応じた上限額までの家賃を補助してもらえます。たとえば、東京都23区内の単身者なら住宅扶助の上限は月額53,700円です。

しかし、初期費用は原則として自己負担であることを忘れてはいけません。例外として、「住宅一時扶助」を活用できる場合もありますが、その場合は引っ越しの必要性が明確であることが条件です。

また、あらかじめ家賃相場と住宅扶助の限度額を把握しておかないと、「高すぎる物件」として入居を拒まれるケースもあります。

5-4. やむを得ない事情として認められるケース(DV・精神的疾患・搾取)

実家を出る理由としてやむを得ない事情がある場合には、生活保護が認められる可能性が高くなります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 家族からDV(家庭内暴力)を受けている
  • 精神疾患の治療にあたり、実家では療養が困難
  • 働いて得た収入を家族に搾取されている

こうした状況では、「このままでは自立も健康維持もできない」と判断され、実家を出て保護を受けることが適切とされる場合があります。

福祉事務所に相談する際には、診断書や被害届、相談記録など客観的な証拠を持っていくことで、事情が正当に評価されやすくなります。

さらに、家を出る際には「婦人保護施設」「母子生活支援施設」などを一時的に利用することも可能です。こうした施設は、DVなど緊急性のあるケースでの避難場所として機能しています。

いずれにせよ、実家を出る理由が「やむを得ない」ものかどうかは福祉事務所の判断にゆだねられます。

一人で抱え込まずに、支援団体や専門相談窓口を積極的に活用しましょう。

5-5. まとめ

実家を出て生活保護を受けたいと考えたとき、まず理解しておかなければならないのは、生活保護は「自立のための支援」であるということです。

ただ「実家が嫌だから」「一人になりたいから」という理由だけでは、保護は認められません。

保護を受けるには、やむを得ない事情と、将来の自立に向けた計画が必要です。

また、引っ越しに必要な費用や住宅扶助の条件など、制度の仕組みを正しく理解することが何より重要です。

実家を出る決断は、人生の中でも大きな一歩になります。焦らず、無理せず、支援してくれる人と一緒に準備を進めましょう。

あなたの今後の生活が、少しでも安心できるものになるように、正しい情報とサポートを味方につけてください。

6. 福祉事務所とのやりとりで押さえるべきポイント

生活保護の申請では、福祉事務所とのやり取りが避けて通れません。申請が受理されるかどうか、スムーズに支援を受けられるかどうかは、この窓口での対応にかかっているといっても過言ではありません。とくに、親と同居している場合は「世帯全体で本当に困っているのか」が厳しく見られるため、しっかりと準備して臨むことが大切です。ここでは、福祉事務所とのやりとりで気をつけたい点や対応のコツを、具体的に解説します。

6-1. 申請時に聞かれる内容・必要書類のまとめ

生活保護の申請時には、福祉事務所の窓口でさまざまなことを聞かれます。まず、家族構成や同居している親の収入状況、家計の管理方法、就労の有無、健康状態などが丁寧に確認されます。また、生活保護の制度は「世帯単位」で判断されるため、家族全員の情報が必要です。

必要な書類としては、以下のようなものがあります。

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 収入証明(給与明細、年金振込通知書など)
  • 資産状況がわかる書類(通帳、保険証書、不動産登記簿など)
  • 家計の支出状況(家賃、水道光熱費、医療費などの領収書)

とくに親と同居している場合、親の収入や資産もすべて調査対象になります。生活費を完全に分けていたとしても、住居が同じであれば「生計を一にしている」と見なされることが多いためです。

6-2. ケースワーカーとの面談で誤解されないための対話術

申請をすると、担当のケースワーカーとの面談があります。この面談では、今の生活状況や申請に至った経緯、家族との関係性などを詳しく聞かれます。ここで大切なのは、「感情的にならずに、事実を冷静に伝えること」です。

たとえば「親とは仲が悪く、お金を出してもらえない」と伝える場合でも、感情的な表現ではなく、具体的なやりとりや証拠を交えて説明しましょう。「給与をもらっても親に取り上げられてしまう」「口座の管理をされている」など、客観的に問題があると分かる説明が有効です。

また、面談では「今後どうしたいか」も必ず聞かれます。ここでは、生活保護は一時的な支援であり、最終的には自立を目指しているという姿勢を示すと、信頼につながりやすくなります。

6-3. よくある水際作戦とその対応法

「水際作戦」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、福祉事務所が制度の乱用を防ぐために、あえて申請を断るような対応をすることを指します。たとえば「親に養ってもらえるでしょ」「まだ若いんだから働きなさい」などと、申請そのものをさせてもらえないケースもあります。

しかし、生活保護は誰でも申請できる権利です。法律では、本人が望めば申請書を受け取ってもらえることが定められています。そのため、口頭でのやり取りに応じず、申請書の提出を求めることが重要です。

対応のコツは、次のようなポイントを押さえることです。

  • 申請書を印刷して持参する
  • 「これは申請の意思表示です」と明確に伝える
  • 拒否された場合は理由を文書で求める
  • 録音やメモをとって、後日の証拠に備える

どうしても不安な場合は、生活保護支援団体やNPOの同行支援を受けるのも有効な方法です。

6-4. 福祉事務所で不当な対応を受けたときの対処方法

もしも福祉事務所で不当な対応を受けたと感じたら、一人で抱え込まず、すぐに相談や行動を起こすことが大切です。

たとえば、「親と同居しているなら申請できない」と言われた場合でも、実際には例外的に別世帯として認定される可能性があるのです。そのため、申請を門前払いされるのは明らかにおかしいと言えます。

不当な対応があった場合の主な対処法は以下のとおりです。

  • 窓口の対応を録音・記録しておく
  • 都道府県の福祉監査課に連絡して対応を訴える
  • 行政相談センターや法テラスでの相談を活用する
  • 信頼できる第三者に相談し、同行してもらう

また、「申請却下」ではなく「申請を受け付けない」場合は、違法の可能性があるため要注意です。その場では押し切られてしまっても、記録をとっておけば後から行動を起こすことができます。

最終的には、「自立に向けて努力したい」という本人の意志がどこまで伝わるかが大きなカギとなります。理不尽な対応に泣き寝入りするのではなく、声をあげることで状況が変わることもあるのです。

7. 実際に親と同居しながら生活保護を受給できた人の事例集

親と同居していると「生活保護は受けられないのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし実際には、家庭の事情や個別の状況によって、同居しながらでも生活保護を受給できたケースは存在します。ここでは、3つの具体的な事例を紹介しながら、どのようなポイントで受給が可能となったのかをわかりやすく解説していきます。

7-1. 40代男性:実家で別世帯として認定されたケース

40代の男性Aさんは、うつ病を患い長年の就労が困難な状態にありました。実家で両親と同居していましたが、生活費は一切別で、日々の食事や光熱水費も個別に管理していました。また、住民票は別世帯として登録されていたものの、それだけでは生活保護上の「別世帯」にはなりません。

Aさんが生活保護を申請した際、福祉事務所のケースワーカーによる調査では、実際に生計が完全に分かれている実態が認められました。例えば、電気やガスの契約が個人名義であったこと、日常の買い物もすべて自分の収入で賄っていたこと、そして両親からの扶養は一切受けていないことが確認されたのです。

このような実態が評価され、Aさんは「同居だが別世帯」と認定され、単独で生活保護の受給が開始されました。ポイントは「住民票」よりも「生活実態」が重要視されたことです。

7-1.1 まとめ

実家での同居であっても、生計が完全に分かれていれば、生活保護上「別世帯」と認定される可能性があります。住民票の世帯分離だけでは不十分であり、日常生活の細部にわたって証明できる資料を用意することが重要です。

7-2. 60代女性:親が高齢・無年金で世帯ごと受給できたケース

60代の女性Bさんは、80代の母親と二人暮らしをしていました。母親は年金を受け取っておらず、長年無年金状態で生活していたため、Bさんのわずかなパート収入のみで二人の生活を支えている状況でした。

福祉事務所に相談した結果、世帯全体で最低生活費を大きく下回っていることが判明。また、Bさん自身も持病があり、長時間の就労が困難であることを医師の診断書で証明できたため、生活保護の申請に踏み切りました。

このケースでは、親子二人ともが生活困窮状態にあり、かつ他に頼れる扶養者もいないことが決め手となり、世帯全体での生活保護受給が認められました。生活扶助のほかに住宅扶助も支給され、安心して生活を続けることができるようになりました。

7-2.1 まとめ

親が高齢で無年金、かつ扶養が困難な場合には、世帯全体での生活保護申請が認められる可能性が高いです。このようなケースでは、扶養義務照会があっても、実際の扶養能力がないと判断されれば保護が優先されます。

7-3. 30代女性:親との確執で家を出て生活保護を受給した事例

30代の女性Cさんは、精神的なストレスにより仕事を続けられず、実家に戻ることを余儀なくされました。しかし、家族との関係が非常に悪化しており、家庭内での暴言や過干渉が原因で精神疾患が悪化。医師からも「家族との同居が病状悪化の要因」と診断されていました。

この状況でCさんは家を出て、ネットカフェを転々としながら福祉事務所に相談。状況を詳細に説明し、医師の診断書と本人の陳述書を提出したことで、やむを得ない事情として単身での生活保護申請が受理されました。

ケースワーカーからは「実家に戻れない正当な理由」として認められ、住宅扶助も利用してアパートに入居。その後、心身の安定とともに就労支援も受け、将来的な自立に向けた生活の再建が進められました。

7-3.1 まとめ

家庭内の確執や精神的な問題が原因で実家を出る場合でも、「やむを得ない事情」が証明できれば生活保護を受けることは可能です。ただし、その理由や経緯を福祉事務所に丁寧に説明することが必要です。医師の診断書や第三者の証言など、客観的な資料をそろえて申請に臨むようにしましょう。

8. 弁護士や支援団体に相談すべきタイミングと方法

実家で家族と同居している場合、生活保護の申請は非常に複雑になります。特に、親と同居している場合は、福祉事務所が「世帯単位での収入や資産の確認」を徹底して行うため、単独での保護申請はほとんど認められません。また、経済的に困窮していても「親が扶養できる」と判断されれば、生活保護の対象外になるケースも多いです。

このように、自力で生活保護を申請するには高いハードルがあるため、信頼できる第三者に早めに相談することが大切です。特に、家族に事情を話せない、DVや経済的虐待を受けている、自立のために実家を出る必要があるといったケースでは、法的知識を持つ弁護士や生活困窮者支援の専門団体が大きな助けになります

8-1. 法テラス・無料法律相談の活用法

法テラス(日本司法支援センター)は、収入が一定以下の人を対象に、無料の法律相談を提供しています。生活保護の相談だけでなく、家族との関係、住居問題、借金問題、DVなど、幅広い困りごとに対応してくれます。

生活保護を申請したいけれど、親との関係がこじれていて自立できない生活費を搾取されているといった場合、法律的に「やむを得ない事情」があるかどうかを判断するために、まずは法テラスに相談してみましょう。

法テラスの利用方法はとても簡単です。電話やインターネットから予約を取り、地域の法律事務所や提携機関で相談を受けられます。また、収入や資産が少ない方には弁護士費用の立替制度もありますので、訴訟が必要になった場合でも心配せずに進められます。

8-2. 生活困窮者支援NPO一覧と利用の流れ

実家を出て生活保護を申請する際に頼りになるのが、生活困窮者支援を専門にしているNPO法人です。こうした団体は、法的手続きだけでなく、住まいや生活の立て直しまで包括的にサポートしてくれるところが多くあります。

たとえば、一都三県で活動している「リライフネット」という団体では、生活保護の申請支援だけでなく、初期費用ゼロの物件提供・就労支援・入居後のフォローアップまで、幅広く対応しています。特に「実家にいられないけれどお金がない」といった人にとっては、こうした団体の支援はまさに救世主になります。

利用の流れはシンプルです。まずは電話やメールで相談をして、自分の状況を説明します。その後、団体のスタッフと面談し、住まいや申請の流れ、今後の支援計画を立てていきます。

支援団体には相談のハードルが低いというメリットがあります。役所に行く前に相談することで、気持ちの整理ができることもあり、無理なく申請の準備が進められます。

8-3. 支援団体が提供する「住まい・生活支援」の実態

「支援団体って、どんなことをしてくれるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。実際、多くの団体では、住まい探しから生活保護の申請同行、保護開始後の就労支援まで、一人一人に寄り添ったサポートを行っています。

リライフネットのような団体では、以下のような支援を行っています。

  • 敷金・礼金不要で入居できる住居の紹介
  • 生活保護申請時の役所への同行
  • 住民票や身分証がない場合の手続き支援
  • 就職活動や生活設計のサポート

特に「実家を出たいけど、どこに住めばいいか分からない」という人にとって、住居の支援は非常に重要です。生活保護の住宅扶助制度には家賃の上限があり、その範囲内で住まいを見つける必要があります。こうしたことを熟知している支援団体だからこそ、物件の選定から契約、入居後の支援まで安心して任せることができるのです。

また、団体によっては無料の食糧支援や家具の提供を行っているところもあります。心身ともに疲れている状態で、ゼロから一人暮らしを始めるのはとても大変ですが、支援団体を活用すれば、負担を大きく減らすことが可能です。

8-4. まとめ

親と同居している場合の生活保護申請は、制度上とても難易度が高く、家を出てからの申請もまた複雑です。だからこそ、弁護士や支援団体への早めの相談が鍵になります。

法テラスで法律的な判断をもらいNPOや団体で生活の立て直しや住まい探しの支援を受けることで、安心して次のステップに進めます。一人で抱え込まず、困ったときには必ず頼れる場所があるということを、ぜひ知っておいてください。

人生の立て直しは一歩ずつで大丈夫です。「今、何をすればいいか分からない」という方こそ、まずは相談することから始めましょう。

9. 地域差に注意!生活保護の運用は全国共通ではない

生活保護制度は全国どこでも共通の法律に基づいて運用されているように見えますが、実は地域ごとに運用に差があるのが実情です。とくに「親と同居して生活保護を受けたい」と考えている人にとって、この地域差は見逃せないポイントになります。

地域によって最低生活費の基準が違ったり、福祉事務所の対応方針にも違いがあるため、同じような状況でも、ある自治体では保護が受けられたのに別の地域では却下されることもあります。ここでは、都市部と地方での最低生活費の違いや、扶助水準のばらつき、申請しやすさの傾向について詳しく解説していきます。

9-1. 都市部と地方での最低生活費の違い

生活保護を受けられるかどうかは、収入と「最低生活費」を比較して決まります。この最低生活費は全国一律ではなく、居住地域によって大きく異なります。都市部では物価や家賃が高いため、最低生活費の水準も高めに設定されており、一方で地方の中小都市では水準が低くなる傾向があります。

たとえば東京都23区に住む単身者と、地方の過疎地域に住む同じ年齢の単身者では、生活扶助費と住宅扶助費の合計額に1万円以上の差が出ることも珍しくありません。これは生活扶助の「級地区分」によるもので、たとえば東京23区や大阪市などは「第1級地-1」に分類されており、地方の市町村では「第2級地-2」やそれ以下に設定されています。

また、住宅扶助(家賃に相当する支援)の上限も大きく異なります。東京都内であれば単身者でも月額53,700円程度が上限となるのに対し、地方都市では4万円台になることも。これにより、「実家から出て保護を受けたい」と考える場合にも、地域によって家賃の基準額を満たす住まいが見つけやすいかどうかが左右されます。

9-2. 自治体による扶助水準のばらつきと調べ方

生活保護の基準額は国が定めているものの、実際に支給される内容や判断の細かい運用は、自治体によって少しずつ異なります。たとえば、同じように「親と同居しているが、親の収入が不安定で困っている」というケースでも、ある自治体では「世帯全体として最低生活費を下回っている」として受給が認められる一方、他の自治体では「まだ親に扶養能力がある」とされて却下されることがあります。

こうしたばらつきの背景には、自治体の財政状況や地域の物価、さらには福祉事務所の職員数や対応方針などが影響しています。また、申請時の調査や面談の厳しさ、必要書類の扱い方も異なるため、同じように生活に困っている人でも、自治体によって受け取る印象が大きく変わることがあります。

具体的な扶助水準を知りたい場合は、厚生労働省のホームページに掲載されている「生活扶助基準額表」や「住宅扶助限度額一覧」などを活用できます。ただし、これらはあくまで制度上の「上限額」であり、実際に受け取れるかどうかはケースバイケースです。一番確実なのは、住んでいる地域の福祉事務所に直接相談し、世帯構成や状況に応じた具体的な試算をしてもらうことです。

9-3. 「申請しやすい自治体」と「厳しい自治体」の傾向

生活保護を申請する際、同じ制度であっても「相談しやすい自治体」と「対応が厳しい自治体」が存在することも事実です。とくに実家暮らしの人がひとりで生活保護を申請しようとする場合、福祉事務所の対応に大きく左右されます。

例えば、東京都内や大阪市などの大都市では、支援団体やNPOと連携して、生活保護申請者をサポートする体制が整っている自治体が多く見られます。このような自治体では、申請に必要な書類の説明が丁寧だったり、住まいの紹介から保護の開始までスムーズに進む傾向があります。

一方で、地方の中には財政的な事情や人手不足などから、生活保護の申請に対して消極的な対応をする自治体もあります。特に「親と同居している=扶養可能」とみなして、保護を受けられないと判断される例もあるため注意が必要です。また、住民票の分離や別居状態でも、「実態として生計を一にしている」と判断されると、申請が通らない場合もあります。

そのため、申請を検討している人は、できるだけ生活保護の受給実績が豊富な自治体を選ぶ、または相談支援団体と連携して進めるのが安心です。引っ越しを伴う場合には「現在地保護」の考え方を利用して、一時的に滞在している地域で申請を行うことも選択肢となるでしょう。

9-4. まとめ

生活保護制度は全国共通の仕組みに見えて、実際には住む地域によって運用や判断が大きく異なるのが現実です。とくに親と同居している人が生活保護を受けたい場合には、都市部と地方で最低生活費や住宅扶助額が異なること、自治体による判断のばらつきに注意が必要です。

相談しやすい自治体や、支援体制のある地域を選ぶことは、申請成功の可能性を高める有効な戦略です。まずは居住地の福祉事務所で現実的な相談を行い、必要があれば信頼できる支援団体にも協力を求めましょう。「どこに住んでいるか」は、生活保護を受ける上で非常に重要な要素のひとつなのです。

10. まとめ:親と同居でも諦めない!正しい知識と準備がカギ

10-1. 自立のために生活保護を「戦略的に使う」視点

親と同居していると、「生活保護なんて無理だろう」と感じる方が多いかもしれません。ですが、そこであきらめるのではなく、「どうすれば使えるか?」という視点に立ち返ることが重要です。生活保護は、ただ援助を受けるだけの制度ではなく、自立を目指す人を後押しする仕組みなのです。

例えば、「親と同居していても経済的に完全に依存していない」「食費や光熱費はすべて自分で支払っている」など、生計が別であることを示せれば、稀ではありますが別世帯として生活保護を受けられる可能性があります。ただし、これは書類上の世帯分離だけでは通用しません。福祉事務所では、水道や電気の契約名義、食事の管理状況、金銭のやり取りなどまで細かく確認されます。そのため、「実態として別の生計を立てている」ことが分かる準備が必要なのです。

また、どうしても親と同居では自立できない場合、実家を出て生活を立て直す選択肢も視野に入れましょう。もちろん、「保護を受けるために家を出る」という理由だけでは認められません。しかし、「過干渉で精神的に病んでいる」「DVに近い状態にある」など、自立を阻害する深刻な事情がある場合には、福祉事務所が柔軟に判断してくれることもあります。

10-2. 支援制度を複合的に活用して未来をつくる

生活保護だけに頼るのではなく、他の支援制度と組み合わせることで、より現実的で安定した生活の基盤を築くことが可能です。

例えば、就労支援や住居支援、医療扶助、教育扶助など、生活保護にはさまざまな支援メニューがあります。また、NPO法人や自治体の就労訓練制度、住まい探しのサポートをしてくれる団体もあります。記事でも紹介されていた「リライフネット」のように、住居の確保から就労支援までを一括でサポートしてくれる団体を活用すれば、実家を出るというハードルも乗り越えやすくなるはずです。

特に、一人暮らしを始める場合には敷金・礼金・前家賃などの初期費用が重くのしかかります。これらをクリアするためには、自治体によっては「住宅確保給付金」や「住居確保支援制度」が利用できる場合があります。生活保護の枠内だけで解決しようとせず、「使える制度は全部使う」という姿勢で準備を進めましょう。

10-3. 最初の一歩は「相談から」

「こんなこと相談していいのかな」「門前払いされるのでは」と不安に思う人も多いかもしれません。しかし、生活保護制度は誰もが利用できる国の制度です。そして、福祉事務所の窓口は申請だけでなく相談も受け付けていることをご存じでしょうか。

相談に行くと、ケースワーカーが状況を丁寧にヒアリングしてくれます。「今の暮らしで何に困っているのか」「なぜ実家を出たいのか」などを率直に話すことで、自分でも気づかなかった選択肢が見えてくることもあります。また、社会福祉協議会や地域包括支援センター、NPO法人など、複数の相談先を持つことで視野が広がります。

重要なのは、自分一人で抱え込まず、信頼できる大人や専門家に早めに相談することです。たった一度の相談が、あなたの人生を大きく変えるきっかけになるかもしれません。生活保護は「最後の砦」であり、同時に「次へのステップ」でもあります。それを活かすかどうかは、あなたの行動次第なのです。