初心者でもわかるステップシークエンス入門

フィギュアスケートの演技を見ていて、「この滑り、なぜこんなに心を惹きつけるんだろう?」と感じたことはありませんか?その答えのひとつが、ジャンプやスピンに隠れがちな“ステップシークエンス”にあります。この記事では、ステップシークエンスの基本から最新ルール、レベルの違いや評価のポイントまで、2024-25シーズン対応で詳しく解説します。

目次

1. ステップシークエンスとは?

1-1. フィギュアスケートにおけるステップシークエンスの役割と魅力

ステップシークエンスとは、氷の上で多彩なステップやターンを組み合わせながら、氷面を広く使って滑る演技要素のことです。リンクをダイナミックに移動しながら、まるで音楽に乗って踊っているかのように滑るその姿は、観客の心を強く引きつけます。

この要素はジャンプやスピンと並んで、フィギュアスケートにおいて非常に重要なパートとされています。なぜなら、選手のスケーティング技術・表現力・音楽性を総合的に見ることができるからです。

ステップシークエンスでは、単にステップを踏むだけではなく、難度の高いターンや複雑な動きを織り交ぜることで、選手自身の個性やスケートスキルの深さを示すことができます。観客からの拍手が自然と起こるのもこのセクションで、演技全体のハイライトとなることもしばしばです。

1-2. ISUルールにおける定義(2024-25シーズン対応)

2024-25シーズンのISUルールでは、ステップシークエンスは「氷面を十分に活用して構成され、音楽の特徴に合わせて行われる連続的なステップとターンの集まり」とされています。シークエンス中には、表外ジャンプ(リストに載っていないジャンプ)を含めることも可能ですが、音楽に合った動きであることが求められます。

また、リンクのほぼ全体を使ってはっきりと認識できる形で行う必要があります。具体的には、ストレートライン(直線)、サーキュラー(円)、サーペンタイン(蛇行)といったパターンで構成されることが多いですが、これに限定されるものではありません。

ステップの中にはジャンプや足換えを含んでも構いませんが、それらが主になってはいけません。また、ターンやステップはシークエンス全体にバランスよく分布していなければならず、長時間ターンがない部分があるとレベル評価が下がってしまうこともあります。

1-3. 2011年以前との違い|廃止されたステップの種類

2011年以前、ステップシークエンスは3種類に分類されていました。具体的には「ストレートライン」「サーペンタイン」「サーキュラー」といったタイプ別に明確な分類があり、選手はその中から1つを選んで演技していました。

しかし、2012年以降、この「種類」という概念が撤廃されました。現在では、どのような形状であってもリンクを十分に使っていれば、すべて同じ「ステップシークエンス」として扱われます。

この変更により、選手はより自由に表現を追求できるようになり、創造的な構成が可能になったというメリットがあります。逆に言えば、決まった「型」がなくなったため、ジャッジが求める「氷面の活用」や「ステップの分布」に対してシビアに見られるようになりました。

1-4. ステップシークエンスが評価される理由(演技構成点との関係)

ステップシークエンスが高く評価されるのは、演技構成点(PCS)との密接な関係があるからです。特に「スケート技術」「トランジション(繋ぎの工夫)」「音楽の解釈」など、複数の評価軸に影響を与えます。

例えば、ターンの精度や滑らかさは「スケート技術」を示しますし、複雑なステップを音楽に合わせてスムーズに組み込むことで「音楽表現」や「構成力」も評価されます。ジャンプやスピンの前後で自然にステップが組み込まれていれば、「繋ぎの工夫」が評価され、PCS全体の底上げにつながるのです。

また、レベル判定に必要な「難しいターンの多様さ」「両方向の回転」「身体の動き」「複雑なターンの組み合わせ」などをしっかりクリアすることで、技術点(TES)も高得点が狙えます。つまり、ステップシークエンスはPCSとTESの両方に大きく関わる要素であり、試合で上位を狙うには絶対に欠かせないものとなっています。

2. ステップシークエンスの分類とルール

フィギュアスケートで登場する「ステップシークエンス」は、ジャンプやスピンと並ぶ大切な要素です。リンク全体を使って氷の上を自由自在に滑りながら、たくさんのターンやステップを組み合わせて演技を魅せます。でも、ただ滑るだけではダメで、ちゃんとルールに沿って行わないと評価されません。ここでは、ショートプログラムとフリースケーティングでの違いや、選手が使うパターンについて詳しく見ていきましょう。

2-1. ショートプログラムでの要件と注意点

ショートプログラムでは、必ず1つのステップシークエンスを入れなければいけません。このとき大事なのは、「氷面をしっかり活用していること」。リンクのほんの一部でちょこっとだけ滑っても、それはステップシークエンスとして認められないんです。

それから、音楽に合ったリズムで滑るのもポイントです。急に止まってしまうのはダメですが、音楽の中で自然な「小さな停止」はOKです。ちなみに、後ろ向きに滑る“逆行”も、意外かもしれませんが禁止されていません。

ステップシークエンスの中でジャンプしてもよいのですが、半回転を超えるジャンプには注意が必要です。特にショートプログラムでは、ジャンプの種類によってはジャッジからGOE(出来栄え点)を1点減点されることもあります。選手たちは、このような細かいルールにも気を配って演技をしているんですね。

2-2. フリースケーティングでの自由度と戦略

フリースケーティングでは、ショートと同じく1つのステップシークエンスを必ず入れるルールがあります。でも、ショートに比べて自由度がぐんと高く、自分らしさを思いきり出せる場面でもあります。

たとえば、どんなパターン(形)で滑るかは、選手の完全な自由です。円を描くような「サーキュラー」、直線的に滑る「ストレート」、波のようにくねくねと進む「サーペンタイン」など、どれでもOKです。それぞれに特徴があるので、自分の得意な滑り方や、音楽にぴったり合うパターンを選べるのが嬉しいところですね。

フリーではジャンプを入れても減点されないので、ジャンプとステップをうまく融合させる演技も見どころのひとつです。ただし、シークエンスがあまりにも短いと、「ステップシークエンス」として認められないので注意が必要です。しっかりと氷面を活用し、音楽に合わせて滑ることが評価につながります。

2-3. 選手が選ぶ主なパターン(ストレート、サーキュラー、サーペンタイン)

ステップシークエンスのパターンには、いくつかの代表的な形があります。現在では公式には「パターンの種類」は廃止されていますが、演技の中で自然と以下のような形が使われています。

ストレート・ライン(Straight Line)は、リンクの端から端へ、まっすぐ進んでいくタイプです。スピード感や直線的なキレが表現できるため、ダイナミックな印象を与えます。特にスピードに自信がある選手がよく使うスタイルです。

サーキュラー(Circular)は、円や楕円を描くようにリンクをぐるりと回るスタイル。観客やジャッジの目を引く構成にしやすく、回転の方向を切り替えるのにも向いています。音楽と一体になって踊るような雰囲気が出しやすいので、表現力の高い選手に選ばれる傾向があります。

サーペンタイン(Serpentine)は、S字カーブを描くようにリンクを進むスタイルです。滑りのバランスやリズムの変化を表現するのに向いていて、技術と芸術性の両方が問われるパターンです。

どのパターンを選ぶかは、演技の戦略やテーマによって決まります。氷をどう使うか、どんなステップを組み込むかは、選手にとってとても重要な「魅せ場」なんです。パターン選びひとつで演技の印象が大きく変わるので、観る側も楽しみにしたいポイントですね。

3. 採点プロトコルの読み方と基礎点

ステップシークエンスは、フィギュアスケートの中でも特に評価が分かれる難しい要素です。
その評価は、ISU(国際スケート連盟)によって細かくルール化されており、競技者にとっても観戦者にとっても、正しい知識を持ってプロトコルを読み解くことがとても大切です。
ここでは、ステップシークエンスに関連する記号やレベル、基礎点、GOE(出来栄え点)の仕組みについて、できるだけわかりやすく説明していきます。

3-1. ステップシークエンスの記号とレベル(B〜レベル4)

採点プロトコルでステップシークエンスを見ると、「StSq4」や「StSqB」などの記号が使われています。
これはステップシークエンスの略で、「StSq」はStep Sequence、「4」や「B」はそのレベルを示しています。

レベルは全部で5段階あり、「B(ベーシック)」「1」「2」「3」「4」と上がっていきます。
レベルを決める判断基準は、以下のような要素に基づいています。

  • 難しいターンやステップの数と種類(例:ツィズル、ブラケット、ロッカーなど)
  • 左右両方向への完全な回転が含まれているか
  • 身体全体の動きをしっかり使っているか(腕や頭、胴体など)
  • 難しいターンを組み合わせた「コンビネーション」を両足で行っているか

例えば、レベル4を獲得するには、11種類以上の難しいステップを両方向でバランスよく使い、身体の動きも全体で明確に見せ、さらに高度なターンのコンビネーションも入れる必要があります。
とても複雑な要求が詰まっているんですね。

逆に、これらの条件を満たしていなければ、たとえ見た目に派手でもレベルは上がりません。
「B(ベーシック)」と判定されてしまうこともあります。

3-2. 基礎点の推移と最新傾向(実例:ネイサン・チェンの構成)

レベルが上がると、それに応じて基礎点(Base Value)も高くなります。
ISUの過去のルール改正を見ても、ステップシークエンスの基礎点は年々調整されており、選手の技術レベルに合わせて細かく見直されています。

たとえば、世界トップの選手であるネイサン・チェン選手は、試合で「StSq4」を連発しており、基礎点を確実に稼ぐ要素としてステップを活用しています。
彼のステップは、氷面の端から端までを大きく使い、ループやブラケットといった難しいターンがリズム良く織り交ぜられています。
そして身体全体の動きや回転方向の切り替えも非常に鮮やかで、レベル4に必要なすべての要素を満たしているのが特徴です。

また、ネイサン選手のようなトップスケーターたちは、ステップシークエンスを「魅せ場」として音楽と完全にシンクロさせて演技します。
そのため、ジャッジの目にも非常に印象的に映り、GOE(出来栄え点)での加点も狙えるわけです。

最近では、基礎点よりもGOEでどれだけ加点を引き出せるかも重要視されており、単に「難しいターンが多い」だけでは通用しない傾向が強まっています。

3-3. GOE(出来栄え点)の加点・減点要因

ステップシークエンスは、実は基礎点以上にGOE(Grade of Execution)での評価が重要です。
出来栄えが良ければ+5までの加点がつき、逆に不十分だと−5までの減点もあり得ます。

加点される要素には次のようなものがあります。

  • リズムに乗って軽やかに動いている
  • 音楽と完全に調和している
  • ターンやステップに明確なエッジが見える
  • 身体の動きが豊かで、観客に伝わる演技である

一方、減点の対象になるのは、以下のような場合です。

  • ターンやステップが不明確だったり、ブレがある
  • ターンが途中でジャンプになってしまっている(ジャンプするとカウントされない)
  • 同じ方向にばかり回っていて、左右バランスが取れていない
  • 途中で身体の動きが止まってしまう

特に注意したいのは、「ジャンプの多用」。
フリースケーティングではステップ中のジャンプは認められていますが、ショートプログラムで1/2回転を超えるジャンプを行うと、GOEで1点減点されてしまいます。

つまり、ステップシークエンスは技術と芸術性の両方が求められる、非常にバランスの取れた要素なのです。

3-4. まとめ

ステップシークエンスは、ただ滑るだけでは高い評価を得ることはできません。
レベルを上げるためには、技術的な条件をすべて満たすことが必要であり、それに加えて、GOEでの加点を得るためには音楽表現や身体の使い方にも細心の注意が必要です。

観戦する際も、プロトコルの記号をチェックして選手の演技を読み解くことで、さらに深くフィギュアスケートを楽しめますよ。

4. レベル判定の仕組みと必須要素

4-1. レベル認定の4条件とは?(難易度別に解説)

ステップシークエンスのレベルは4つの評価ポイントに基づいて決まります。この条件に1つ該当すればレベル1、4つすべてに該当すれば最高のレベル4になります。ここでは、それぞれの条件がどんな内容なのか、やさしく解説しますね。

① 難しいターン・ステップの多様性:難しいターンやステップがどれくらいたくさん、種類も豊富に使われているかで評価されます。種類が5個以上で「最低限に多様(レベル1)」、11個以上で「複雑(レベル4)」とされます。ただし、同じ種類のターンは2回までしかカウントされないので注意が必要です。

② 両方向への完全な回転:左回転と右回転の両方で、パターン全体の1/3ずつを占めている必要があります。これは、「時計回り」と「反時計回り」に体全体がくるっと1回転する動きを指します。

③ 身体の動きを使った滑り:両腕、頭、胴体、腰、脚などを使って、氷の上でしっかり表現されていること。これらの動きが全体の1/3以上含まれていると評価されます。

④ 難しい3つのターンの組み合わせ:難易度の高いターンを連続で3つ組み合わせた動きを、左右の足それぞれ1回ずつ行います。最初の試みしか評価されませんので、成功させるのが大切です。

4-2. 難しいターン・ステップの具体例(ツィズル、ブラケットなど)

では、「難しいターン」って、どんなものがあるのでしょうか?フィギュアスケートには、実は6種類の「難しい」とされるターンとステップがあります。それぞれ少しクセがあり、覚えておくと試合観戦ももっと楽しくなりますよ!

ツィズル(Twizzle):氷上で連続回転する動き。回転しながら前進する姿がとってもダイナミック。

ブラケット(Bracket):スリーターンのようだけど、曲がる方向とエッジの向きが逆なのが特徴。足元をよく見るとわかります。

ロッカー(Rocker):スリーターンの回転方向を変えたような動き。難度が高く、バランス感覚が重要です。

カウンター(Counter):ロッカーと似ていますが、ターンの前後でカーブの方向が逆。混乱しやすいけど、違いがわかるとカッコいい!

ループ(Loop):体をきゅっと絞るように回転していくターン。小さな円を描くのがポイントです。

チョクトウ(Choctaw):片足からもう片足に切り替える動きで、エッジの向きとカーブが入れ替わる特殊なステップです。

4-3. 両方向への完全回転とは?【よくある誤解も解説】

フィギュアスケートでいう「両方向への完全回転」は、よく誤解されやすいポイントです。「左にも右にも向きを変える」だけではダメなんです。

ポイントは「体全体が1回転する」こと。単に進行方向を変えるような「半回転」では評価されません。シークエンス全体のうち、1/3を右回転、1/3を左回転にすることで初めて条件を満たすのです。

さらに、「連続した回転」でなくてもOK。シークエンスの中で合計すればいいので、少しずつ分けて入れても評価されます。この柔軟さを活かして、無理のない構成を組む選手も多いですね。

4-4. 身体の動きの使い方と注意点(1/3の使用ルールとは)

ステップシークエンスでは「身体全体の動き」も大切な評価ポイントです。でも、ただ手を動かすだけでは不十分なんですよ。

評価のカギは「体幹のバランスに影響する動き」です。たとえば、腕を大きく広げたり、胴体を傾けたり、頭や脚を使って動きを表現すること。これらの動きがステップ全体の1/3以上に含まれていれば、評価の対象になります。

逆に、手をちょこっと動かす程度では「動き」とは見なされません。身体全体で氷上を舞うように表現することで、観客の心もつかめますよ。

4-5. 難しい3つのターンの組み合わせとは?(片足ごとの条件と失敗例)

レベル判定の条件のひとつに、「難しいターンの3つ組み合わせ」があります。これは特に難しく、失敗も多いポイントです。

左右の足でそれぞれ1回ずつ、違うターンを3つ連続で行わないといけません。しかも、ジャンプ、スリ―ターン、足換えなどを途中に挟んだらNG!最初に試みた1回だけがカウントされるので、一発勝負の緊張感があります。

たとえば、「ブラケット → カウンター → ループ」とスムーズにつなげることができれば、理想的です。ただし、ひとつでも失敗してしまうと評価の対象から外れてしまいます。選手たちは、この部分に多くの練習時間をかけて、正確さとリズムを磨いているんですよ。

5. レベル別に見るターンとステップの“多様さ”

フィギュアスケートのステップシークエンスでは、「どんなターンやステップをどれだけ多く、バランスよく取り入れているか?」がとっても重要なんだよ。実はこれ、演技の完成度を示すだけじゃなくて、得点にも大きく影響するから見逃せないポイントなんだ。レベル1からレベル4までの段階で評価されていて、難易度や多様さ、身体の使い方、ターンの方向などの条件を満たすごとにレベルが上がる仕組みになっているんだよ。

5-1. レベルごとの必要要素数まとめ(最低限~複雑)

ステップシークエンスのレベルは、簡単に言うと「何個の難しいターンやステップを入れたか」で決まるんだ。それだけじゃなく、どれくらい多様で複雑か、つまり“バリエーションの豊かさ”がポイントになるよ。

まず、「難しいターンやステップ」っていうのは、たとえばツィズル、ブラケット、カウンター、ループ、ロッカー、チョクトウなどのこと。それぞれ、片足で行うことが条件で、ジャンプしてたり両足でやっちゃうとカウントされないの。

以下がレベルごとの目安になるよ。

  • 最低限に多様(レベル1):難しいターン・ステップを5個以上
  • やや多様(レベル2)7個以上
  • 多様(レベル3)9個以上
  • 複雑(レベル4)11個以上+それぞれ両方向に行うこと

そして、どのターン・ステップも同じ種類は2回までしかカウントされないから注意が必要だよ。たくさん同じ技を繰り返しても、得点にはつながらないんだ。

5-2. ターン・ステップの分布バランスで減点されないために

いくら難しいステップやターンをたくさん入れても、リンクの一部だけで固まってやっていたらNGなんだ。ステップシークエンスは「リンク全体を使って、ターンやステップがまんべんなく散らばっていること」が求められるんだよ。

たとえば、ステップの始まりから終わりまで、氷の上の広い範囲で滑っているか?途中で長い区間、ステップやターンがないところがないか? そういう点も見られるよ。

ISUのルールでは「ターンとステップがシークエンス全体にバランスよく分布していないと、それだけでベーシック扱い(ノーレベル)になってしまう」ことが明記されているんだ。これはつまり、どれだけ難しい技を入れてもリンクの使い方が悪ければ評価されないってこと。

だから選手は、リンク全体を意識して、ターンやステップの配置をしっかり考える必要があるんだね。リンクの四隅や端っこもちゃんと使ってる? 真ん中だけで終わってない? こういう細かいところが評価につながるんだ。

5-3. 逆に「ベーシック扱い」になるNG例(リンク全体を使わないなど)

ちょっと悲しいけど、ステップシークエンスでは明確なルール違反をすると「ベーシック(B)」として扱われてしまうんだ。これはレベルなし=最低評価ってこと。一生懸命滑っても、これじゃ意味がないから要注意だよ。

たとえば、こんな場合がNGの代表例:

  • ステップやターンの数が足りない(5種類未満)
  • リンクの一部分しか使ってない(全体を活用していない)
  • ステップ・ターンの分布が偏っている(ある範囲に集中しすぎ)
  • ターンがジャンプしている(ジャンプしたターンは無効)
  • 両方向の回転がない(時計回りと反時計回りの回転が1/3ずつ必要)

たとえば、「左回りのツィズルを5回やったけど、右回りはゼロ」なんて場合、評価されるのは左だけ。バランスが悪いと判断されて、高レベル認定されないよ。

難しい技を入れることはもちろん大切だけど、それだけじゃ足りないんだ。氷の上をどれだけ広く、バランスよく使えるか。それがレベルアップのカギなんだよ。

6. ジャンプとの関係とルール注意点

6-1. ステップシークエンス中のジャンプの扱い(0.5回転以上は禁止?)

ステップシークエンスの中でジャンプをすること自体は、基本的にルールで禁じられているわけではありません。ただし「0.5回転を超えるジャンプ」には要注意です。このようなジャンプが含まれていると、場合によってはジャッジによる評価に影響を与えてしまうのです。

具体的には、ジャンプ要素として国際スケート連盟(ISU)のジャンプリストに記載されている技(たとえばトウループやサルコウなど)を、ステップシークエンス中に0.5回転以上行った場合が問題となります。ショートプログラムでは、これらのジャンプは要素としては無視されますが、それでも「ステップシークエンス中に含まれていた」として、GOE(出来栄え点)が1点減点されてしまうルールがあります。

このため、演技の印象が良くても「ジャンプが多すぎた」または「意図せず0.5回転を超えてしまった」といった小さな違反が、最終的な評価に大きく影響することがあります。ジャンプの種類や回転数を慎重に選ぶことが、ステップシークエンス全体の完成度と得点を守るカギなのです。

一方で、ジャンプリストにない、いわゆる「表外ジャンプ」や0.5回転以下のジャンプは、ステップシークエンス中に入れてもペナルティはありません。そのため、ジャンプの技術をうまく取り入れて、ステップにリズムやアクセントを加える演出として使うことは、むしろ推奨される場合もあります。

6-2. ショートとフリーで異なるジャンプルール

フィギュアスケートでは、ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)でジャンプの扱い方に違いがあります。これはステップシークエンス中におけるジャンプにも同様に適用される重要なポイントです。

まず、ショートプログラムでは、ステップシークエンス中にジャンプリストに載っているジャンプ(0.5回転を超えるもの)を含めること自体は構いません。しかし、これらは要素として正式に認められず、さらにステップシークエンス全体のGOEが1点減点されてしまいます。このため、基本的にはショートではジャンプを入れないか、0.5回転以内に抑えることがベストとされています。

一方でフリースケーティングでは、ステップシークエンス中にジャンプリストにある技を入れても問題ありません。これらはジャンプ要素として認定され、演技構成点にも加算される可能性があります。その代わり、こうしたジャンプは「ジャンプ・ボックス(技術要素のひとつ)」を占めるため、技の配置や種類に注意が必要です。

このように、同じステップシークエンスでも、ショートとフリーではジャンプの影響がまったく異なります。選手やコーチは、それぞれのプログラムの目的やルールに応じて、ジャンプの配置や種類を緻密に設計しなければならないのです。

ステップシークエンスの得点を最大限に引き出すには、演技の流れを壊さずにジャンプを入れる工夫、そしてルールを踏まえた判断力がとても大切です。ルールを知っていれば、観る側も選手の細かな工夫や難しさをより深く楽しむことができますよ。

7. 実例で学ぶレベル4と減点の差

7-1. レベル4の認定例と構成(例:羽生結弦のバラード1番)

ステップシークエンスの中で、最も高い評価であるレベル4を獲得するためには、ただスムーズに滑るだけでは足りません。選手がどれだけ「難しい動き」を「氷の上いっぱいに広げて」「左右の体をしっかり使い」「リズムを持って」滑っているかが大切なんです。

たとえば、羽生結弦選手が2015年に披露した『バラード第1番』のショートプログラムは、ステップシークエンスがまさにお手本のような内容でした。この演技では、ツィズルやブラケット、ロッカーなど難しいターンを片足で11個以上入れており、それぞれがとても滑らかで正確でした。

さらに、羽生選手は時計回り・反時計回りの両方向にしっかりと体を1回転させる動きを、シークエンス全体の3分の1ずつに割り当てていました。このようにしてバランスよく方向を変えることが、レベル4の条件のひとつなのです。

また、彼の演技では両腕や上半身の動きも美しく、氷の上で音楽に合わせてリズム良くターンを重ねていました。特に印象的なのが、「ロッカー → カウンター → ツィズル」という3つの難しいターンの組み合わせを、左足と右足でそれぞれ入れていた点です。この組み合わせがリズムよく実行されていることも、レベル4を獲得するための大きなポイントです。

こうして羽生選手の『バラード第1番』は、氷上を目一杯使い、技術と芸術性がしっかり融合したステップシークエンスとして、満点に近い評価を得ることができました。

7-2. レベルが取れないステップ例(何が足りないのか?)

では逆に、レベル4が取れなかった演技では、どんなところが足りなかったのでしょうか?実は「難しいターンを入れているのにレベル1止まり」ということもあるんです。

たとえば、ある選手がステップシークエンスに5種類以上のターンを入れていても、それが左右両方の方向に行われていなかった場合は、それだけでレベルアップの条件を満たさなくなってしまいます。

また、ターンやステップの種類が偏っていたり、繰り返しが多いと、「多様性がない」と判断されます。どの種類も2回までしか数えられないというルールもあるので、同じターンを何回も使っても意味がないんですね。

さらに、「氷面全体を使っていない」と見なされた場合も厳しいです。たとえば、リンクの真ん中だけでステップを終わらせたり、ターンが偏った方向にしかなかったりすると、シークエンス全体としての完成度が不足とされ、ベースレベル(B)扱いになることも。

そして忘れてはいけないのが、「体の動き」です。腕を大きく動かす、上半身をひねる、バランスを取りながら滑る……これらをきちんと意識して使っていないと、「身体の動きを使っている」と評価されないんです。

つまり、難しい技術を入れても、それがしっかり伝わらなければ評価にはつながらないということ。見せ方やバランス、構成の工夫がとても大切だということがわかりますね。

7-3. まとめ

ステップシークエンスでレベル4を取るには、4つの評価基準すべてを満たす必要があります。具体的には、「難しいターンやステップが11個以上かつ多様性がある」「左右両方向にしっかり回転している」「身体の動きを3分の1以上で使っている」「3つの難しいターンの組み合わせを両足で実行している」といった条件が求められます。

一方で、これらの条件を1つでも欠いてしまうと、どんなに一生懸命滑ってもレベルは上がりません。ステップは、ただ動くだけではなく、考えて滑る芸術なんですね。

羽生結弦選手のように、技術・構成・音楽表現のすべてを融合できれば、ステップシークエンスは観客を魅了する最高の演技になります。あなたもこれを見本に、演技の中の「どこが評価されたか」「何が足りなかったのか」を見つける楽しみを持ってみてくださいね。

8. 観戦・採点・練習時にチェックすべきポイント

8-1. どこを見る?レベル判定チェックリスト

ステップシークエンスを観戦するうえで、「レベルが高い演技かどうか」を見極めるには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。特に注目すべきは、ターンとステップの種類と数身体の動きの多さ回転の方向、そして難しいターンの組み合わせです。

例えば、レベル4を獲得するには、11種類以上の難しいターンやステップを含め、それぞれを両方向(右回りと左回り)で行う必要があります。「ブラケット」「カウンター」「ループ」「ロッカー」「ツィズル」といったターンをしっかり両足で見せているかどうかをチェックしましょう。

また、ターンやステップはシークエンス全体にバランスよく配置されていなければなりません。途中でターンがほとんどない部分があると、レベルはベーシック扱いになることもあります。このように、見た目が華やかでスピードがあるだけでなく、「どれだけ技術的に詰め込まれているか」を目で追うことで、評価の深みが増していきます。

8-2. 音楽とのシンクロ・構成力に注目

フィギュアスケートは「音楽の芸術」ですから、ステップシークエンスも当然、音楽との調和が大切です。ISUルールでも「ステップシークエンスは音楽の特徴に合わせて行われなければならない」と明記されています。つまり、ただ難しいターンをこなすだけでなく、リズムやメロディとリンクした動きであることが求められるのです。

特に注目したいのは、曲の盛り上がりやサビに合わせて動きが活発になる構成や、音の変化に合わせた身体の使い方です。腕や上半身、膝の柔らかい使い方で、音楽と一体になって表現しているかを見てみましょう。例えば、宮原知子選手の演技では、曲のクライマックスに合わせてステップの難易度が上がっていきます。このような「見せ場」を音楽の展開と合わせて構成する力は、芸術点にも大きな影響を与える要素です。

観客としては、音楽と演技が一つに見える瞬間に出会えたら、それが素晴らしいステップシークエンスだと感じていいでしょう。

8-3. 自分でステップ練習する人のためのポイントまとめ

ステップシークエンスを自分で練習したいと思っている人もいるかもしれませんね。その場合、大切なのは基礎を丁寧に繰り返すことと、明確な目的をもって構成を組むことです。

まずは「スリーターン」や「モホーク」などの基本ターンを片足で安定して行えるようにしましょう。その次に、「ブラケット」「カウンター」「ツィズル」などの難しいターンへステップアップしていきます。ここで重要なのは、どのターンも左右両方向でできるようにすること。これはレベルアップの条件にもなっているので、スキルを高めるには避けて通れません。

練習では「明確なパターン」を意識するとよいです。例えば円を描く「サーキュラーパターン」や、リンクを縦に使う「ストレートラインパターン」など、どのパターンでも構いませんが、氷面を広く使っているかどうかが大切になります。また、途中でジャンプを混ぜてみるのも良い練習になりますが、公式ルールではGOE(出来栄え点)に影響があることもあるので、ジャンプの種類にも気をつけましょう。

最後に、自分のステップをスマホで撮影して見直すのも効果的です。「ターンが連続しているか」「両腕や上体の動きがちゃんとあるか」「パターンが崩れていないか」など、自分では気づきにくい点もチェックできますよ。

ステップシークエンスは、一見地味なようで、実はフィギュアスケートの奥深さがぎゅっと詰まった要素です。見て楽しい、やってみて難しい、でも続けていくときっと楽しくなる――そんな魅力をたくさん感じてほしいですね。

9. まとめ:ステップシークエンスは“技術と表現”の融合

ステップシークエンスというのは、単にリンクを滑り回るだけの要素ではありません。それはスケーターの「技術力」と「音楽表現力」を同時に見ることができる、まさに“融合”の演技なのです。

たとえば、リンクの氷面全体を使ってバランスよくターンやステップを入れることが求められていますし、ルール上もステップやターンが含まれていない部分が長く続いてしまうと、レベル評価が下がってしまうのです。

また、ステップシークエンスの難易度評価も、ただ数をこなせば良いというものではありません。ロッカー、カウンター、ツィズルなどの「難しいターン」をどのくらいバリエーション豊かに組み込めているか、その難しさや構成力で「レベル1〜4」まで細かく分けられます。しかも、使えるターンやステップの回数にも制限があるんですから、これはもうパズルのような計算も必要ですね。

さらに、“左右両方向への回転”や“体全体を使った動き”など、見た目の印象に直結する要素も高評価には欠かせません。これはつまり、ジャッジは技術面だけでなく、演技全体の調和や流れ、音楽への同調性をもしっかり見ているということです。

そして、音楽と調和した滑らかな流れの中で、ひとつひとつのターンを“リズム”に合わせて構成していくことも重要です。明確なリズムで行われた難しい3つのターンの連続(例えばロッカー→ツィズル→ループなど)が、足ごとに1セットずつ必要で、ここが美しく決まると、ステップシークエンスは一段と輝きを増します。

つまりステップシークエンスは、スケーターの芸術性とスポーツ性がもっとも濃密に絡み合うパートなのです。ルールを知れば知るほど、観ていて「なるほど、これはすごい!」と思えるポイントが増えていきます。

技術の緻密さと、音楽への感情表現、そして難しいステップやターンをリンク全体に広げて構成する大胆さ──それらすべてが組み合わさって初めて、観客の心に届く演技となるのです

だからこそ、ステップシークエンスを理解すれば、フィギュアスケートの奥深さをより一層楽しめるようになります。テレビや大会で演技を見るときは、ぜひステップシークエンスに注目してみてくださいね。きっと今まで見逃していた「すごい!」が見えてきますよ。