スズキキザシ覆面パトカーの秘密とは?

「スズキキザシの覆面パトカー」と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?実は、かつて「フラッグシップセダン」として誕生したスズキのキザシが、2013年以降、警察の覆面パトカーとして採用されていた事実をご存じでしょうか?

この記事では、キザシが覆面パトカーに選ばれた背景やその特徴、さらに運用の実態から派生モデル、そして覆面パトカー全般に関する豆知識まで詳しく解説します。「どうやって見分けるの?」「なぜキザシが選ばれたの?」といった疑問が、この記事を読むことでスッキリ解消します。

目次

1. スズキキザシ覆面パトカーとは?

1-1. キザシの基本情報:フラッグシップセダンとしての背景

スズキの「キザシ」は、2009年に北米市場をターゲットに開発されたフラッグシップセダンです。静岡県にあるスズキ相良工場で製造され、完全受注生産という形で販売されました。この背景には、スズキが従来の軽自動車やコンパクトカー中心のラインナップから脱却し、高級セダン市場に挑戦する意図がありました。しかし、日本国内では2012年度の販売台数がわずか146台と、一般市場では非常に希少な存在でした。

車両の特徴として、2,000ccエンジンを搭載し、静音性や快適性を重視した設計が施されています。新車価格は約279万円と高価な部類に入り、レザーシートや高級感あふれる内装などが特徴的です。こうした点からも、キザシはスズキの技術力を結集した象徴的なモデルと言えるでしょう。

1-2. 覆面パトカーへの採用経緯:2013年の国費導入プロジェクト

キザシが覆面パトカーとして配備されるきっかけとなったのは、2013年に警察庁が実施した「私服用セダン型無線車(2,000cc級)」の一般競争入札です。このプロジェクトでは、スズキが同クラスのセダンよりも大幅に低価格を提示しました。その結果、スズキは入札で落札し、キザシが全国の警察に約900台導入されることになりました。

導入価格は驚きの1台あたり約105万円とされ、市販価格の約3分の1以下。この価格の背景には、警察仕様への改造に伴う装備の簡略化や、大量発注による価格交渉力の向上があると考えられます。具体的には、フォグランプの非搭載やシートの素材変更などが行われ、コストダウンが図られました。

キザシの配備は捜査用覆面パトカーとしての利用を想定しており、特に目立たないデザインや高い走行性能が評価されたといわれています。しかし、その希少性ゆえに「覆面パトカーであることがすぐに分かる」という課題も生じ、マニアや一般市民から注目を浴びる結果となりました。こうした背景が、キザシ覆面パトカーの独特な存在感を形作っています。

2. 導入背景と選定理由

2-1. 競争入札での異例の価格とスズキの狙い

スズキ・キザシが捜査用覆面パトカーとして選ばれた背景には、競争入札での「異例の価格」がありました。2013年、警察庁が行った「私服用セダン型無線車(2000cc級)」の一般競争入札において、スズキは他社の同クラス車両に比べて大幅に安い価格を提示しました。その結果、スズキは約900台ものキザシを一括受注することに成功しました。

市販車としてのキザシは、フラッグシップモデルとして高い評価を受けつつも、国内販売台数は少なく希少な存在でした。その背景を考えると、スズキが提示した安価な価格には、単に販売数を伸ばすだけでなく「警察車両に採用される」というブランド価値を狙った戦略的な意図があったと推測されます。

実際、官報によると警察が購入したキザシの価格は1台あたり約105万円と市販価格の3分の1以下。大量購入によるコスト削減に加え、内装や装備を簡略化した点もこの価格を可能にした要因です。この戦略により、スズキは警察車両市場で一躍注目を集めましたが、その一方で、配備された車両が目立ちすぎる問題も浮上し、配備初期から多くの議論を呼ぶ結果となりました。

2-2. 他車種との差別化ポイントと警察の評価

キザシが警察車両として採用された理由の一つに、その「差別化ポイント」が挙げられます。競合となったスバルやマツダのセダンと比較すると、キザシはラグジュアリーさを兼ね備えた独自のフラッグシップセダンであり、他車にない存在感を持っています。

警察車両としての改装では、フォグランプの非搭載や簡素化された内装など、実務用途に特化した仕様変更が施されています。また、外観ではユーロアンテナや屋根ピンなど警察車両特有の装備が目立つため、マニアや一般市民にも「覆面パトカー」として認知されやすい車両となりました。

警察内部での評価は、捜査用車両としての基本性能の高さを評価する声がある一方、希少な車種ゆえに目立ちすぎるという課題が指摘されています。このため、一部ではフロントグリルの改装やエンブレムの削除など秘匿性を高める取り組みも行われましたが、それがかえって逆効果になる場合もありました。

こうした経緯を経て、キザシは「異例づくし」の警察車両として知られるようになり、その存在感は警察内部だけでなく、一般の自動車マニアやメディアに至るまで幅広く話題を集めることとなりました。スズキの挑戦と戦略が生んだこの車両は、覆面パトカーの歴史に新たな1ページを刻んだと言えるでしょう。

3. 覆面キザシの特徴

3-1. 外装での見分け方:フォグランプ、アンテナなどのポイント

スズキ・キザシを覆面パトカーとして見分けるためには、以下の外装の特徴に注目する必要があります。

  • フォグランプの非搭載
    通常の市販車に装備されているフォグランプは、覆面キザシには基本的に付いていません。コスト削減や機能的な必要性の欠如が理由と考えられます。
  • ルーフアンテナ
    後付けのユーロアンテナやホイップ・アンテナが設置されている場合があります。特にケーブルの処理が雑になっている車両は、警察車両の可能性が高いです。
  • 屋根ピンとルーフの突起物
    赤色灯脱落防止用の屋根ピンが装着されていることが多く、これが覆面パトカーであることを示す重要なポイントとなります。これを引き抜いた跡がある場合もあります。
  • ブラックアウトされたフロントグリル
    覆面車両は目立たないように、スズキの「S」マークが黒く塗りつぶされたり、社外製グリルが取り付けられている場合があります。

3-2. 内装と装備:警察専用ナビや赤色灯収納バッグの詳細

覆面キザシの内装には、以下のような特殊な装備が見られます。

  • 警察専用のナビゲーションシステム
    一部の車両では市販の安価なオンダッシュナビが使用されていますが、捜査車両では他の車両との位置情報を共有できる専用ナビが搭載されています。
  • 赤色灯収納バッグ
    赤色灯は通常、助手席足元に収納されています。この収納用バッグが確認できれば、覆面パトカーの可能性が非常に高いです。
  • 無線機とサイレンアンプ
    無線機の操作パネルがグローブボックス内に隠されており、サイレンアンプはインダッシュスペースに取り付けられています。これらが確認できると、警察車両であることは明らかです。
  • 座席と内装の簡素化
    レザーシートがファブリック素材に変更されており、パドルシフトやクルーズコントロールも省かれています。これにより、コストを抑えた仕様になっています。

3-3. 価格とカスタマイズ:105万円で手に入れた仕様の内訳

覆面キザシの導入価格について、興味深い事実があります。

  • 驚きの価格
    市販車の新車価格が約279万円であるのに対し、警察は1台あたり約105万円という価格で落札しています。この価格差は、大量購入による値引きや装備の簡略化によるものです。
  • 装備の省略
    ・フォグランプを非搭載
    ・本革シートをファブリックシートに変更
    ・高価な純正ナビを取り除き、代わりに安価な市販ナビを搭載
  • 特注の装備
    赤色灯収納バッグ、警察専用ナビ、無線機など、警察業務に特化した装備が取り付けられています。これらのカスタマイズにより、警察車両としての実用性が向上しています。

このように、覆面キザシはその外観と装備から民間仕様車と大きく異なり、警察業務に特化した仕様となっています。これらの情報を参考にすれば、覆面パトカーを見分ける際の一助となるでしょう。

4. 覆面キザシの運用と実態

4-1. 捜査用車両としての活躍場面と具体例

スズキのキザシが覆面パトカーとして導入された背景には、警察のコスト削減と多用途利用の期待がありました。特に2013年には全国で約900台ものキザシが捜査用車両として配備され、現在でもその多くが現場で活躍しています。

キザシはその珍しい外観から、犯罪捜査において特定の地域を監視する「張り込み」や、移動中の容疑者を追尾する場面で利用されています。その堅牢な車体と安定した走行性能が、長時間の張り込みや迅速な移動を可能にしているのです。

捜査に使われるキザシは、内装にも捜査に特化した装備が施されています。たとえば、助手席には警察専用無線機や、赤色灯を収納する特別なバッグが設置されており、即座に非常事態に対応できる仕様です。また、捜査員が車内で情報収集や作戦会議を行うことも考慮され、暗い車内でも操作がしやすい配置となっています。

さらに、キザシの運用は都道府県警によって異なり、一部地域では特別捜査班の車両として、暴力団事務所周辺での巡回や、重大事件の現場急行にも利用されています。このように、キザシは犯罪捜査における多様なシーンで重宝されているのです。

4-2. 交通取締りへの限定的な活用事例

一方で、キザシの交通取締りへの活用は限定的なものとなっています。その主な理由は、捜査用車両としての仕様が、速度違反取り締まりには適さないことにあります。キザシは通常、刑事課や生活安全課の捜査車両として使用されているため、交通課への貸与が一時的に行われる場合に限られるのです。

このような場合、速度違反の取り締まりには用いられず、以下のような交通違反が主な取締り対象となります:

  • シートベルト未着用
  • 運転中の携帯電話使用
  • 赤信号無視

このような取り締まりは、キザシが持つ目立たない外観と柔軟な運用によって実施されています。しかし、装備の関係から、スピード測定や追跡に必要な機能を持たないため、交通取締り専用車両とは一線を画しています。

それでも一部の地域では、刑事事件の捜査が比較的少ない場合に、交通課への短期間の貸与が行われ、シートベルトや信号無視といった違反取締りに利用されることもあります。この柔軟な運用が、キザシの価値をさらに高めています。

覆面キザシの導入によって、捜査や交通取締りの現場がより効率的に進められるようになったと言えるでしょう。

5. 覆面パトカーの進化と課題

5-1. グリルのカスタマイズと秘匿性向上の取り組み

覆面パトカーとして使用されるスズキ・キザシの秘匿性向上のため、さまざまなカスタマイズが施されています。特に注目されるのが、フロントグリルの改造です。キザシには元々スズキの「S」マークがフロントグリルとトランク部分に目立つ形で配置されていましたが、このマークが覆面パトカーとしての目立ちやすさを増してしまう問題がありました。

そのため、警察は「S」マークを目立たないようにブラックアウト加工したり、メッシュグリルと同化させるような変更を加える取り組みを進めました。さらに、一部の車両ではスクリット製の社外グリルに交換し、ラグジュアリー感を増すとともに秘匿性を向上させています。この変更により、車両の外見は一般のカスタムカーのように見えるため、街中での目立ちにくさが向上しました。

しかし、こうしたカスタマイズは時として逆効果となることもあります。特に「ブラックアウト」や社外製グリルへの交換が目立ちすぎ、逆に「覆面パトカー」としての特異性を示してしまうケースも指摘されています。秘匿性を高めるための努力が新たな課題を生む結果となることもあるのです。

5-2. バレやすさの課題とマスコミ報道による影響

スズキ・キザシの覆面パトカー化は、一部マスコミや車両マニアの間で大きな注目を集めました。その原因の一つが「希少車種であること」でした。キザシは国内市場での販売台数が少なく、警察による900台もの大量導入が一般市民にも目立つ結果となったのです。このような状況が覆面パトカーの本来の目的である「目立たずに取り締まりや捜査を行う」という機能を損なう一因となりました。

具体的には、週刊誌やテレビで「覆面パトカーの見分け方」が報じられたことで、一般市民にも覆面キザシの外見や特徴が広く知られるようになりました。例えば、「フォグランプが搭載されていない」「ルーフアンテナの設置が雑で目立つ」といった点が指摘され、これらがキザシの覆面車両としての認識を高めてしまったのです。

また、過度な報道によって一部の地域では捜査に支障が出るケースもありました。警察としては秘匿性向上のための取り組みを進めていますが、情報が漏れればその効果も薄れてしまいます。マスコミや一般市民の注目度が高い車種を覆面パトカーに選定することのリスクが改めて浮き彫りになりました。

覆面パトカーの役割を果たすためには、目立たないデザインや運用方法の模索が必要です。キザシを例に、秘匿性向上の施策とその効果を評価しながら、警察車両としての適正を見極めることが今後の課題と言えるでしょう。

6. リコール問題とその影響

6-1. サイレン不具合の詳細とリコール対象の範囲

スズキ・キザシの覆面パトカーにおけるリコール問題は、緊急車両としての機能において重大な課題を浮き彫りにしました。このリコールの主な原因は、サイレン用スピーカーに水抜き穴が設けられていなかったことです。この設計上の不備により、雨天時や水たまりを通過した際にスピーカー内部に水が溜まり、サイレンの音量が低下するという問題が発生しました。

リコール対象となった車両は、緊急指定された覆面パトカー仕様のキザシであり、全国で約1,070台が該当しました。この問題は警察の捜査車両や緊急対応車両の運用に直接影響を及ぼし、緊急時の迅速な対応に支障をきたす可能性があると指摘されました。

スズキは迅速に対応し、水抜き穴を設ける改修作業を実施しましたが、この一連の騒動は、覆面パトカーとしてのキザシの運用における新たな課題を露呈する結果となりました。

6-2. メディアでの取り上げ方と警察内の対応

キザシのリコール問題は、ただの技術的な不備に留まらず、メディアでも大きな話題となりました。特に、「サイレンに水がたまり、音量が低下」という問題のインパクトが強く、テレビや週刊誌で取り上げられた結果、一般市民の間でもキザシ覆面パトカーの知名度がさらに上昇しました。これにより、捜査用覆面車両としての秘匿性がさらに低下するという副次的な影響も発生しました。

警察内部では、この問題に迅速に対応するため、リコール対象車両の改修計画が速やかに進められました。また、各警察署での車両点検が強化され、今後同様の問題が発生しないよう運用体制の見直しも図られました。警察庁や各県警は、車両導入時の品質管理基準を厳格化することで、類似のトラブルを未然に防ぐための体制構築に取り組んでいます。

一方で、このリコール問題は、覆面パトカーとしてのキザシの運用に関する議論を呼び起こし、警察車両の選定基準や運用方法の再考を促す契機ともなりました。特に、秘匿性の確保と機能性のバランスについては今後も改善が求められる分野といえるでしょう。

7. キザシ覆面パトカーの派生モデル

7-1. 白黒警らパトカー仕様への発展:神奈川県警の導入例

2014年4月、神奈川県警察本部は、スズキ・キザシを白黒パトカーとして初めて導入しました。この仕様変更により、キザシは覆面パトカーから警ら用パトカーへの新たなステージへと突入しました。白黒の車体に赤色灯の昇降装置を備え、特徴的な外観で注目を集めました。特に、フォグランプを搭載しない点は覆面仕様と共通しています。

さらに、この白黒警ら仕様のキザシにはAED(自動体外式除細動器)が搭載され、トランクリッドにはその旨を示すステッカーが貼られています。この装備は緊急時の救命措置にも対応できる車両として評価されました。しかしながら、白黒仕様のキザシが普及したのは神奈川県のみで、他府県警察では導入されませんでした。この限定的な採用は、キザシが持つ独特な個性が影響しているとも考えられます。

その結果、キザシは全国的な白黒警らパトカーの主流にはならず、神奈川県警内でのみ運用されるレアな車両となりました。その独特な存在感は「ミニクラウン」とも評される外観からも伺えますが、全国的な支持を得るには至らなかったのが現状です。

7-2. ドラマや映画での登場とその影響

スズキ・キザシはその特異な存在感ゆえに、ドラマや映画にも登場しています。例えば、2014年放送のドラマ『金田一少年の事件簿N』では、劇用車として覆面仕様のキザシが登場しました。この車両はフォグランプを搭載しており、劇中での印象的なシーンを彩りました。また、2020年には『未満警察 ミッドナイトランナー』にも同車が登場し、視聴者の注目を集めました。

こうした映像作品での登場は、キザシの希少性をより広く認知させる結果となりました。一方で、一般市民の間で「キザシ=覆面パトカー」というイメージが定着する原因にもなり、車両としての秘匿性を損ねる一因ともなっています。

劇中での使用が増えることで、スズキ・キザシは「覆面パトカー」や「警察車両」のイメージがさらに強化され、結果として車両そのものが話題の中心に据えられるようになりました。このような影響は、警察車両としてのキザシの独特な存在感をさらに強調していますが、同時に警察活動における課題も浮き彫りにしたと言えるでしょう。

  • 神奈川県警が初めて白黒警ら仕様を採用し、救急対応能力も備えた車両に進化。
  • ドラマや映画での使用により、車両の認知度が上昇し話題性が向上。
  • 一方で、これらの要因が秘匿性の低下を招くという問題点も。

8. 覆面キザシの今後とまとめ

8-1. 廃止と次世代車両への切り替え状況

スズキ・キザシは、2013年から全国の警察に約900台が配備され、捜査用覆面パトカーとしてその名を馳せました。しかし、2015年に製造が終了して以降、新規導入はなく、現在では車両の耐用年数の影響で徐々に数を減らしています。今後、これらの車両は順次廃止され、次世代の車両へと置き換えられる予定です。

特に、近年の警察車両では、環境性能やコストパフォーマンスが重要視されており、トヨタ・プリウスやマツダ3など、燃費性能や維持管理費に優れる車種が主流になりつつあります。これにより、キザシのようなレアモデルが採用されるケースはますます減少する見込みです。

一方で、一部の地域では、キザシが交通課や生活安全課などの運用にも転用されており、シートベルト未着用や信号無視の取締りなど限定的な役割を果たしています。こうした取り組みは、旧型車両の有効活用という側面でも注目されています。

8-2. 覆面パトカーとしての功績と車種選定の未来

キザシは、その独特の外観と希少性から、導入当初から注目の的となりました。特に、フォグランプ非搭載やユーロアンテナの装備といった特徴は、一般車両との差別化を図るための工夫でしたが、結果的に「バレやすい覆面」としてのイメージが定着してしまいました。

それでも、キザシは警察活動において重要な役割を果たしました。広範囲での捜査や監視、さらには目立つ存在としての威圧感を活用するなど、特定の状況下では大きな効果を発揮しました。その意味では、覆面パトカーの「見せる力」を再認識させた存在といえます。

一方で、将来の車種選定においては、環境性能やコスト、そして目立たないデザインがより重視されるでしょう。特にハイブリッド車やEV車は、エコフレンドリーであるだけでなく、走行音が静かで追跡や張り込みに適しているため、警察車両としての需要が高まると考えられます。

これからも警察車両の進化は続きますが、キザシのような個性的な車両が残した功績は、覆面パトカーの歴史に刻まれ続けることでしょう。未来の警察車両がどのような形を取るにせよ、キザシのような挑戦的な選択が時代を切り開く一助となるはずです。

9. 覆面パトカー全般への応用知識

9-1. 覆面パトカー全般の見分け方と共通装備

覆面パトカーを見分けるには、いくつかの共通する特徴を把握することが重要です。特に、スズキの「キザシ」など希少車両が採用される場合、その特徴が際立っています。

見分けるポイント

  • アンテナ配置
    一般車両には見られない日本アンテナ製のユーロアンテナがルーフやトランクリッドに取り付けられることが多いです。茨城県警ではアマチュア無線偽装タイプのホイップアンテナが見られる例もあります。
  • 赤色灯の収納
    助手席足元には赤色回転灯を収納する専用のバッグが備え付けられており、これが覆面パトカー特有の装備といえます。
  • 車両の内装
    警察無線用ハンドマイクや警光灯のメタルコンセントなどが装備されている場合、覆面車両である可能性が高いです。
  • 車体の装備削減
    フォグランプの非搭載や本革シートのファブリック化など、コスト削減のための仕様変更が見受けられます。

他の特徴的な装備

  • パーキングセンサーが取り付けられる例もありますが、これは非常に稀です。
  • グリルのエンブレムが目立たないようブラックアウト化される場合があります。

覆面パトカーはこうした工夫がなされている一方、これらの特徴が逆に目立ってしまうこともあります。そのため、近年ではさらに秘匿性の高い装備が進化しています。

9-2. 他車種との比較:プリウス、クラウンなどとキザシの違い

覆面パトカーとして使用される車種にはトヨタのプリウスやクラウンなども含まれますが、スズキ・キザシにはこれらとは異なる特徴があります。

キザシの特性

  • 希少性の高さ
    キザシは完全受注生産であったため、元々市場に出回る台数が少なく、覆面車両として使用される割合が非常に高いのが特徴です。
  • 外装の目立たなさ
    キザシは他の高級セダンに比べて目立たないデザインであるため、捜査車両としての秘匿性が高いとされています。ただし、一部のマニアにはその希少性が逆に注目されています。
  • コストの大幅削減
    新車価格279万円のキザシが、警察向けには1台約105万円で購入されるなど、非常にリーズナブルな調達が可能となっています。

プリウスやクラウンとの違い

  • プリウス
    プリウスは燃費性能が良く、エコカーとしての側面が評価されています。交通取り締まり用覆面車として採用されることが多く、高速道路などでの燃費効率が際立っています。
  • クラウン
    クラウンは高級感とパワーを兼ね備えた車種で、取り締まり用だけでなく捜査車両としても広く採用されています。キザシよりも知名度が高いため、秘匿性の面では劣るといえます。

運用方法の違い

  • キザシは捜査用覆面車両としての運用が中心ですが、一部の県警では交通違反の取り締まりにも活用されています。一方、プリウスやクラウンはその特性に合わせて役割が分けられています。

スズキ・キザシは、その希少性やコスト面での優位性から、覆面パトカーとして異彩を放っていますが、他車種と比べると一長一短があります。運用上の特徴を理解することで、各車種の違いがより明確に把握できるでしょう。