「承知しました」と言っただけなのに、「なんかイラッとする」と言われた経験はありませんか?
一見丁寧に聞こえるこの言葉が、時に冷たく、上から目線に感じられてしまうのはなぜでしょうか。
本記事では、「承知しました」が嫌われる背景を世代・職場文化・心理の3つの視点から解き明かします。
1. 「承知しました」がイラッとされるのはなぜ?
ビジネスの現場で「承知しました」という言葉を耳にすると、一見とても丁寧に聞こえますよね。
でも実は、この言葉に「何か冷たい」「機械的」と感じてしまう人が少なくないのです。
ここでは、なぜそんな印象が生まれるのかを、世代や職場文化、心理的な側面からじっくり見ていきましょう。
1.1 一見丁寧なのに嫌われる言葉の不思議
「承知しました」は、敬語の中でもとてもフォーマルで、ビジネス敬語の教科書にも必ず出てくる表現です。それなのに、なぜ人によってはイラッとするのでしょうか。
理由の一つは、この言葉が「感情を伴わない受け答え」に聞こえるからです。
例えば、上司が何かを頼んだときに部下が「承知しました」とだけ答えると、まるでロボットのように感じてしまう人もいます。人は、コミュニケーションの中で「温度」や「気持ち」を求めます。
「はい、ありがとうございます!対応しますね!」のように、少し感情が伝わる言葉を添えるだけで印象は大きく変わります。つまり、「承知しました」という言葉そのものが悪いのではなく、使い方次第で“冷たく感じられる”という点がポイントなのです。
1.2 世代間での感じ方の違い(Z世代 vs 昭和世代)
昭和世代にとって「承知しました」は、上司への最大限の敬意を表す丁寧語です。
しかし、Z世代の若者には「形式ばっていて不自然」と感じられることが多いのです。
Z世代は、SlackやTeamsなどのチャットツールでのやり取りに慣れており、フラットでスピーディな会話を重視します。そのため、「了解です」「わかりました!」のようなカジュアルな表現に安心感を覚える傾向があります。
一方で、昭和世代は「了解」は失礼、「承知しました」は正解と学んできた世代。このように、ビジネス敬語への価値観の違いが、ちょっとした言葉に“ジェネレーションギャップ”を生んでいるのです。
1.3 職場文化によるギャップ:スタートアップと老舗企業
「承知しました」が与える印象は、職場の文化によっても大きく変わります。
たとえば、老舗企業ではフォーマルな敬語が好まれ、上司に対して「承知しました」と答えるのが自然。銀行や保険会社のような組織では、言葉遣いも信頼の一部と考えられます。
一方、スタートアップ企業やIT業界のようなカジュアルな職場では、「承知しました」はむしろ硬すぎる印象を与えることもあります。「了解です」「わかりました!」といった柔らかい返答のほうが、距離感を縮める効果があるのです。
つまり、同じ言葉でも職場の空気によって“正解”が変わるということ。コミュニケーションは、相手や環境に合わせて“服装を変えるように”言葉も着替えることが大切です。
1.4 「承知しました」が機械的に聞こえる心理的要因
心理学的に見ると、「承知しました」という言葉が冷たく感じるのは、「相手の感情への共感が欠けている」からです。
「承知しました」は、命令や依頼を受け入れる完了形の言葉であり、そこには“会話の余地”がありません。つまり、相手の気持ちを受け取る柔軟さや、温かさを感じにくいのです。人は会話の中で、ほんの少しの「間」や「共感の言葉」に安心感を覚えます。
「承知しました。ありがとうございます。」や「承知しました。早速対応いたしますね。」と、一言添えるだけで心理的距離はぐっと縮まるのです。言葉はツールであると同時に、心を伝える手段でもある。そこに“気持ち”がこもっているかどうかで、相手の感じ方は180度変わります。
1.5 実際のSNSでの声:「承知しました」に関するリアルな反応
SNSを見てみると、「部下の『承知しました』がなんか冷たい」「AIみたいでムッとする」という声が多く見られます。特にX(旧Twitter)やThreadsなどでは、「丁寧なのに心がない」「気持ちが伝わらない」といった投稿が定期的に話題になります。
一方で、「『了解です』より『承知しました』のほうが安心感がある」という意見も根強く存在します。つまり、受け手の価値観次第で印象がまったく変わる言葉なのです。
中には、「新人の頃に『了解しました』で注意されたから『承知しました』に変えたけど、今度は“硬い”と言われた…」という声も。
このように、社会では「言葉のバランス」がますます難しくなっているのが現実です。最も大切なのは、“言葉そのもの”ではなく“相手にどう伝わるか”を意識することです。
2. 「承知しました」と「了解しました」の本当の違い
ビジネスメールや会話の中で、何気なく使っている「承知しました」と「了解しました」。でも、実はこの2つの言葉には明確な違いがあります。
ちょっとした使い分けひとつで、相手の印象がガラッと変わってしまうのです。ここでは、それぞれの正しい使い方と背景を、やさしく、そして具体的に見ていきましょう。
2.1 敬語としての正確な位置づけ
まず、「承知しました」は謙譲語に分類されます。
つまり、自分がへりくだって相手の言葉を受け入れる、という意味を持っています。上司や取引先など、目上の相手に対して使うのが基本です。
- 「ご指示の件、承知しました」
- 「ご連絡ありがとうございます。承知いたしました」
といった形が自然ですね。
一方、「了解しました」は丁寧語ではあるものの、謙譲のニュアンスが弱く、同僚や部下など、対等な関係で使うのが一般的です。
たとえば、プロジェクトチーム内で「資料は明日までにお願いします」と言われたときに「了解しました!」と返すのは問題ありません。しかし、上司やお客様に対して使うと、「ちょっと軽いな」と感じさせてしまうことがあります。
このように、「承知しました」は敬意を強く示す表現、「了解しました」はカジュアルな了承の表現と覚えておくと、使い分けがスムーズになります。
2.2 なぜ「了解しました」は上司NGとされるのか
「了解しました」という表現が上司やお客様に対してNGとされる理由の一つに、敬意が十分に伝わらないという点があります。
もともと「了解」は、「相手の意見や意図を理解する」という意味を持つ言葉。そのため、目上の人に使うと、まるで「あなたの意見を理解してあげました」と上から目線に聞こえてしまう可能性があるのです。
特に、日本のビジネス文化では「敬語=相手への尊敬」が重視されます。
たとえば、大手企業で上司に「了解しました」と返した場合、「フランクすぎる」「なれなれしい」と受け取られるケースがあるのです。反対に、「承知しました」と言えば、相手の指示を丁寧に受け入れている印象を与えられます。
ただし、スタートアップやクリエイティブ業界など、フラットな企業文化では「了解しました」が自然な場合もあります。そのため、組織の雰囲気や相手の性格に合わせて使い分けることが大切です。
2.3 軍隊用語のルーツと日本語の文化的背景
「了解」という言葉には、実は軍隊用語としての背景があります。
もともと、上官の命令に対して「了解!」と返すことで、「命令を理解し、実行します」という意味を持っていました。そのため、ビジネスシーンで使うと、どこか命令口調や冷たい印象を与えてしまうことがあります。
一方で、「承知しました」は、相手の言葉を丁寧に受け入れるという日本的な文化を反映しています。日本語は上下関係を非常に重視する言語であり、「承知しました」には「あなたのご指示を謹んでお受けします」という柔らかい敬意が込められています。
たとえば、クライアントから「この内容を修正しておいてください」と言われた際、「了解しました」と返すと冷たく響くことがあります。そこで、「承知しました。修正して再送いたします」と言えば、受け取る側も温かみを感じるのです。
2.4 実際のビジネスメールでの使い分け例(文例付き)
最後に、実際のメールでどのように使い分ければよいか、具体例を見てみましょう。
<上司やお客様に対して>
- ご指示の件、承知しました。明日中に対応いたします。
- お見積もりの件、承知いたしました。確認後、再度ご連絡いたします。
このように「承知しました」は、フォーマルな印象を与え、相手への敬意がしっかりと伝わります。
<同僚やチーム内でのやり取り>
- 了解しました!こちらで進めておきます。
- 了解です、後ほど資料を共有しますね。
このように、「了解しました」は社内のカジュアルなやり取りに最適です。しかし、相手が上司や取引先の場合は「承知しました」を使う方が安全です。
また、最近では「ありがとうございます、承知しました」と感謝の気持ちを添えることで、人間味のある丁寧な印象を与えることができます。ただ形式的に使うのではなく、「相手の立場」「状況」「温度感」に合わせて言葉を選ぶことで、信頼される社会人になれるのです。
3. 相手がイラッとしない「承知しました」の使い方
「承知しました」という言葉は一見とても丁寧に聞こえますが、実は相手によっては少し堅苦しく、冷たく感じられることがあります。
特にビジネスの現場では、状況や相手に応じた言葉の選び方がとても大切です。「言葉づかい一つで印象が変わる」というのは本当で、柔らかい言い回しや気持ちを添えた言葉に変えるだけで、相手の受け取り方がまったく違ってくるのです。
ここでは、そんな「承知しました」をうまく使いこなすためのコツを紹介します。
3.1 響き方を変える一言:「かしこまりました」「承知いたしました」
まず、「承知しました」という言葉の響きを柔らかくしたいときは、「かしこまりました」や「承知いたしました」に言い換えてみましょう。どちらも丁寧でありながら、印象がぐっと良くなります。
例えば、上司から「明日までにこの資料をまとめておいて」と言われたときに、ただ「承知しました」と返すと、機械的に聞こえてしまうことがあります。そこで「かしこまりました。早速取りかかります」と返せば、柔らかく、しかも前向きな印象を与えられます。
また、「承知いたしました」はよりフォーマルな場面で使うのに最適です。クライアント対応や外部メールでは、「ご依頼の件、承知いたしました」と書くことで、丁寧で誠実な印象を与えることができます。
3.2 感情を添える:「ありがとうございます」「早速対応いたします」
「承知しました」だけだと、どうしても冷たく響くことがあります。そんなときに使えるのが、感謝や行動を示す言葉を添える方法です。つまり、相手の気持ちを汲み取りながら、「受け止めました」という姿勢を見せるのです。
例えば、「ご連絡ありがとうございます。承知いたしました」や「ありがとうございます。早速対応いたします」のように、一言加えるだけで印象が大きく変わります。ビジネスメールだけでなく、チャットでも「ありがとうございます!」の一言を添えるだけで、相手の気持ちが和らぐことが多いです。
また、指示を受けたときには「早速取りかかります」「対応を進めます」といった言葉を添えるのもおすすめです。これにより、受け身の姿勢ではなく、主体的で頼れる印象を与えることができます。
3.3 LINE・チャット・Slackでの自然な返信術
最近では、LINEやSlackなどのチャットツールでやり取りをする機会が増えています。こうしたカジュアルなコミュニケーションの場では、少し柔らかめの言葉遣いを意識するのがポイントです。
例えば、同僚や上司から「この件、確認しておいて」と言われた場合、ただ「承知しました」と返すよりも、「了解です!確認します」「はい、すぐ見てみますね」といった表現のほうが自然です。Slackでは、スタンプを添えたり、短文でテンポよく返すのも印象が良いでしょう。
ただし、クライアントや目上の方とのチャットでは、やや丁寧めにするのが無難です。「かしこまりました。ありがとうございます」や「承知いたしました。完了次第ご連絡いたします」など、礼儀とスピード感のバランスを取るのが大切です。
3.4 会話・メール別の言い換えテンプレート10選
最後に、「承知しました」を自然に言い換えるためのテンプレートを紹介します。場面別に使い分けることで、あなたの言葉づかいの印象がぐっと良くなります。
■会話で使える表現
- かしこまりました(フォーマル)
- 承知いたしました(上品で誠実)
- 了解です(フラットで親しみやすい)
- わかりました(柔らかく自然)
- ありがとうございます、すぐ対応します(感謝+行動)
■メールで使える表現
- ご連絡ありがとうございます。承知いたしました。
- かしこまりました。対応の準備を進めます。
- ご指示の件、早速対応いたします。
- 内容を確認のうえ、改めてご連絡いたします。
- 承知いたしました。引き続きよろしくお願いいたします。
これらの表現をうまく使い分けることで、あなたの印象がより「丁寧で感じがいい人」へと変わります。言葉のトーンやタイミングも意識して使ってみてくださいね。
4. 「御意」「かしこまりました」など類語の正しい使い分け
ビジネスの現場では、「承知しました」以外にもさまざまな返答表現がありますね。
でも、その使い分けを間違えると、思わぬ誤解を招いたり、「この人、堅苦しいな」と感じられてしまうこともあります。
ここでは、「御意」「かしこまりました」「承りました」「了解です」などの類語を、相手やシーンに合わせて正しく使うためのコツを、やさしく解説します。
4.1 「御意」は冗談?それとも本気?(現代での使用リスク)
「御意(ぎょい)」という言葉、時代劇やアニメでよく耳にしますね。
武将が主君に向かって「御意!」と叫ぶシーン、かっこいいですが……実は、現代のビジネスで使うとかなり危険なんです。
本来「御意」は、「仰せのとおりにいたします」という意味で、絶対服従のニュアンスを含みます。そのため、現代のオフィスで上司に「御意です!」と返すと、冗談や皮肉に聞こえることが多いのです。
特に若い世代やフラットな企業文化では、「御意」は時代遅れで、わざとらしい印象を与えます。心理的に距離を感じさせるため、信頼関係を築きたい場面では避けた方が無難です。
4.2 「かしこまりました」と「承知しました」のニュアンス差
「かしこまりました」と「承知しました」は似ているようで、じつは敬意の深さが違います。
「かしこまりました」は、相手の指示を謙って受け入れる表現です。
つまり、「あなたのご命令をありがたくお受けします」というニュアンスがあり、もっともフォーマルな敬語のひとつです。ホテルや百貨店、接客業などではこの表現が定番ですね。
一方、「承知しました」は、ややビジネスライクな言葉です。
意味としては「理解しました」「了解しました」と同じですが、少し格式を保った印象になります。ただし、強く形式的な印象を与えることもあるため、上司や取引先には丁寧すぎず自然な距離感を意識しましょう。
4.3 「承りました」「了解です」などTPO別の適切表現一覧表
言葉の印象は、使う場面でまったく変わります。ここで、ビジネスシーンや相手の立場ごとに、どの言葉を使うのがふさわしいかを整理してみましょう。
| シーン | 適切な表現 | 注意点・ニュアンス |
|---|---|---|
| 上司・クライアント | かしこまりました/承りました | 最も丁寧な表現。相手の立場を立てたい場面に◎ |
| 社内の上司 | 承知しました | 丁寧でフォーマル。堅すぎずバランスが良い |
| 同僚やチーム | わかりました/了解です | カジュアルな環境なら自然。上司や顧客には避ける |
| 部下や後輩 | お願いします/頼むね | 上下関係を意識しつつ、柔らかく伝えると◎ |
| メールでの返信 | 承知いたしました | 「いたしました」を加えるとより丁寧で安心感を与える |
このように、相手との関係性や場のフォーマル度によって言葉を切り替えることが大切です。
4.4 シーン別比較:上司・同僚・顧客・目下への返答パターン
ここでは、実際の会話シーンを想定して、どんな返答が自然なのかを見てみましょう。
① 上司からの指示:
上司:「この件、明日までにまとめておいて。」
あなた:「承知しました。早速取り掛かります。」
→ 丁寧で行動を伴う返答。信頼感がアップします。
② クライアントからの依頼:
クライアント:「次回の打ち合わせは火曜日でお願いします。」
あなた:「かしこまりました。日程を調整の上、改めてご連絡いたします。」
→ 「かしこまりました」は相手への敬意をしっかり伝えられます。
③ 同僚との日常会話:
同僚:「このデータ共有お願い。」
あなた:「了解です。今送りますね。」
→ カジュアルな職場ではこれが自然。堅苦しくならずにすみます。
④ 部下や後輩への返答:
後輩:「この書類、確認していただけますか?」
あなた:「もちろん。ありがとう、すぐ見ますね。」
→ 上下関係が逆の場合は、やわらかい口調で安心感を与えましょう。
大切なのは、“誰に”“どんな気持ちで”伝えるか。その意識が、言葉の印象を優しく変えてくれるのです。
5. 言葉が与える印象と信頼形成のメカニズム
人と人との関係は、言葉一つで大きく変わります。
「承知しました」という言葉がイラッとされる背景には、心理学的な要因やコミュニケーションの温度差が潜んでいます。
ここでは、「なぜ敬語ひとつで信頼が変わるのか」を心理学的に探りながら、誠実さを伝える言葉選び、トーンやタイミングの工夫、そして対面・メール・オンラインなど異なる場面での対応策を紹介します。
5.1 なぜ敬語ひとつで信頼が変わるのか(心理学的視点)
心理学の観点から見ると、人は「言葉の温度」を敏感に感じ取る生き物です。
どれほど丁寧でも、無機質で形式的な言葉は、相手に「距離を置かれている」と感じさせることがあります。特に「承知しました」というフレーズは、指示を忠実に受ける印象が強く、時に「冷たさ」や「機械的な応答」に聞こえてしまうのです。
また、世代間の心理的ギャップも無視できません。
年配の世代は「承知しました」を礼儀として自然に使いますが、若い世代には「感情のこもらない言葉」として受け取られる傾向があります。
実際、心理学者のアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によると、コミュニケーションの印象のうち、言語情報はわずか7%しか占めません。残り93%は声のトーンや表情、態度で決まるといわれています。「承知しました」がイラッとされるのは、言葉自体よりも、その「言い方」に感情の温度が欠けているからなのです。
5.2 「誠実さ」を伝える言葉選びのコツ
信頼される人は、いつでも「言葉に心が乗っている」ものです。
たとえば、上司からの指示に対して「承知しました」だけでなく、「ありがとうございます。早速対応いたします」と添えるだけで、印象は大きく変わります。これは、相手に感謝の気持ちを伝えると同時に、行動への意欲を表しているからです。
さらに、感謝の言葉や柔らかい言い回しを使うことで、堅苦しさを和らげることができます。
「かしこまりました」「承知いたしました」「承ります」など、丁寧な中にも自然な響きを持つ言葉を選ぶのがポイントです。これらの表現は、相手に「自分の気持ちをきちんと理解してくれている」という安心感を与えます。
5.3 トーンとタイミング:返事の速さが印象を左右する
どんなに丁寧な言葉を使っても、返事が遅いと「やる気がない」と思われてしまいます。実際、ビジネス心理学の研究でも、「返答のスピード」が信頼形成に直結するといわれています。
たとえば、メールで上司から「明日の会議資料、準備できていますか?」と来たとき、すぐに「はい、承知しました。確認の上、すぐにご連絡いたします」と返信すれば、「仕事が早い」「信頼できる」という印象を与えます。
しかし、数時間後に淡々と「承知しました」とだけ返すと、同じ言葉でも「反応が鈍い」「気持ちがこもっていない」と受け取られることがあります。
大切なのは、言葉の丁寧さよりも、相手への「即応性」と「誠意」です。メールでもチャットでも、数分以内に反応を返す習慣をつけるだけで、あなたの評価はぐんと上がります。
5.4 メール/対面/オンライン会議での「言葉の温度差」対策
同じ「承知しました」でも、メール・対面・オンラインでは伝わり方がまるで違います。それぞれの場面で、言葉に温度を加える工夫が必要です。
- メールの場合:
文章だけでは感情が伝わりにくいため、「ご指示ありがとうございます」「確認いたしました。対応いたします」といった文を添えることで、温かみを補いましょう。 - 対面の場合:
声のトーンと表情がカギです。「承知しました」と言うとき、少しうなずきながら、穏やかな声で返すと、それだけで印象が柔らかくなります。 - オンライン会議の場合:
映像と音声のタイムラグで誤解が生まれやすい環境です。「はい、承知しました!」と語尾を明るくし、カメラに向かって軽くうなずくなど、視覚的なリアクションを加えると、距離を感じさせません。
言葉の選び方と伝え方を意識することで、「承知しました」がイラッとされるどころか、「信頼できる人」として印象に残るようになります。
6. 「承知しました」に潜む上下関係の影
「承知しました」という言葉を聞いたとき、なぜか心の中にチクッとした違和感を覚える人がいますね。
それは、単に言葉の響きが堅いからではなく、そこに日本特有の上下関係意識が深く関係しているからなんです。
この表現には、言葉を使う側と受け取る側の間に、見えない「立場の線引き」が生まれてしまうことがあります。
6.1 日本的ヒエラルキー文化と敬語の関係
日本の職場文化は、長い間「上下関係」を基盤として発展してきました。
「承知しました」は、もともと上位者の指示に対して従順に応じる表現として使われてきました。つまり、上下関係を明確に認めたうえで「私はあなたの指示に従います」という意味合いを持っているのです。
たとえば、昭和期の企業文化では、上司が「この書類を明日までにまとめて」と言えば、部下が「承知しました」と即座に返すのが当たり前でした。
ところが、平成以降の世代やミレニアル世代・Z世代にとっては、そうした上下意識が息苦しく感じられることがあります。彼らの価値観では、「意見を尊重し合う対等な関係」が重視され、形式よりも本音の伝わる会話が好まれます。
このようなギャップが、「承知しました」にイラッとする心理を生み出す背景のひとつといえるでしょう。
6.2 フラット組織で「承知しました」が浮く理由
現代の職場では、「フラットな組織文化」を掲げる企業が増えています。
特にIT企業やスタートアップなどでは、役職に関係なく意見を出し合える環境が重視され、「上司」「部下」という垣根をなるべく取り払う風潮があります。
こうした文化では、「承知しました」という言葉が、まるで古い時代の名残のように感じられるのです。
渋谷のITベンチャー企業で働く20代の社員が、リーダーに「承知しました」と返すと、少しよそよそしく聞こえてしまい、「そんなに堅くしなくていいのに」と思われることがあります。
Googleやメルカリのようにフラットな企業文化を重んじる組織では、相互のリスペクトを前提に話し合うスタイルが当たり前です。その中で「承知しました」と言うと、まるで相手を「上位者」と位置づけてしまうような印象になり、対等な関係を崩してしまうことがあるのです。
6.3 海外ビジネスでの「Yes, understood」との比較
一方、海外では「承知しました」にあたる表現として「Yes, understood」や「Got it.」などが使われます。
しかし、これらの言葉には上下関係のニュアンスはほとんどありません。相手の指示や意図を理解したことをフラットに伝えるだけの言葉であり、「命令を受け入れる」という響きはありません。
アメリカの企業では上司に「Please send me the report by tomorrow」と言われた際、「Got it!」と返すのが一般的です。日本語に直訳すれば「了解です」に近いですが、そこには上下の意識よりも、チームの一員としての「協働意識」が感じられます。
日本語の「承知しました」は、文法的にも文化的にも「下から上への報告」に適した言葉として使われてきた経緯があります。だからこそ、海外のフラットな職場文化では少し堅苦しく感じられるのです。
7. 実践:シーン別「気持ちの伝わる」返答例集
「承知しました」という言葉は、たしかに丁寧ではありますが、少し堅苦しく感じたり、相手によっては冷たい印象を与えてしまうことがありますね。
ここでは、場面ごとに「気持ちが伝わる」「イラッとされない」返答例を紹介します。大切なのは、相手に敬意を伝えながらも、やわらかく自然な言い回しを選ぶことです。
7.1 上司からの指示に対して
上司から「この資料、明日までにまとめておいて」と言われたときに、ただ「承知しました」と返すだけでは、少し機械的な印象を与えてしまうことがあります。
ここでのポイントは、具体的な行動を添えること。
- 「かしこまりました。早速取りかかります。」
- 「了解いたしました。確認後、明日中に共有いたします。」
こうした一言を加えることで、相手に「この人はすぐ動いてくれる」と信頼感を与えることができます。
また、指示に感謝の気持ちを添えるのも効果的です。
「ご指示ありがとうございます。進捗は夕方までにご報告いたします。」という返答なら、丁寧さと前向きな姿勢が両方伝わります。
7.2 クライアントからの依頼に対して
クライアントから依頼や要望を受けたとき、「承知しました」だけではやや無機質に聞こえてしまうことがあります。相手はお客様ですから、敬意と感謝を込めた表現を意識しましょう。
- 「ご依頼ありがとうございます。確認のうえ、明日中にご連絡差し上げます。」
- 「かしこまりました。対応準備を進めさせていただきます。」
ここでは、「受け止めて終わり」ではなく、次のアクションを示すことが大切。クライアントは「任せて大丈夫そうだな」と感じ、安心感を持ってくれます。
7.3 同僚やチームメンバーへの返答
同僚とのコミュニケーションでは、堅苦しすぎる言葉よりも、親しみやすいトーンが重要です。
たとえば、「承知しました」ではなく、「わかりました!」「了解です、やっておきますね。」のように柔らかい言葉を使うと、協力的な印象を与えられます。
ただし、チーム内でも立場や状況によって言葉を使い分けることが大事です。たとえば、リーダーやプロジェクトマネージャーに対しては、「ありがとうございます。対応しておきます。」といった言い方が丁寧で自然です。
7.4 チャット・メールでの柔らかい表現まとめ
文章でのやり取りは、声のトーンが伝わらない分、少しの言葉の選び方で印象が変わります。
「承知しました。」とだけ書くと、淡々とした冷たい印象になりがちです。
代わりに、以下のような工夫をしてみましょう。
- 「承知いたしました。ありがとうございます!」
- 「確認いたしました。早速対応いたしますね。」
チャットの場合は、「了解しました!」や「わかりました!」など、軽いトーンもOKです。ただし、クライアントや上司宛てのメールでは、「かしこまりました」「承知いたしました」といったフォーマルな言葉を基本に使いましょう。
さらに、送信前には一度読み返して、語尾がぶっきらぼうになっていないかチェックすると安心です。「よろしくお願いします。」を「よろしくお願いいたします。」に直すだけでも、柔らかく丁寧な印象になります。
8. まとめ:「承知しました」は悪くない。使い方次第で印象は変わる
「承知しました」という言葉は、決して悪い表現ではありません。むしろ、状況に応じて適切に使えば相手に誠実さや信頼感を与える力強い敬語です。
ただし、その印象を左右するのは“使い方”です。
「ありがとうございます」「早速対応いたします」など、少しの言葉を添えるだけで、ぐっと柔らかく温かみのある印象に変わります。つまり、「承知しました」は万能ではなく、相手に合わせた“言葉の温度調整”が大切なのです。
8.1 一言の選び方が信頼を左右する
ビジネスの現場では、ほんの一言の違いが相手に与える印象を大きく変えます。
「承知しました」とだけ返すのではなく、「ご指示ありがとうございます」や「確認のうえ、対応いたします」といった一言を添えると、感謝と前向きな姿勢が自然に伝わります。
また、言葉の“形式”よりも“誠意”が伝わるかどうかが重要です。
声のトーンや表情、タイミング次第で受け取られ方が変わります。言葉の内容+態度=信頼という意識を持つことが、プロフェッショナルとしての第一歩です。
8.2 現代ビジネスで求められる“人間味のある敬語”とは
かつての日本企業では、フォーマルな敬語こそが「正しいマナー」とされていました。
しかし、近年ではIT企業やスタートアップを中心に、フラットで柔らかい言葉遣いが主流となりつつあります。
これからの時代に求められるのは、マニュアル的な敬語ではなく、“人間味のある敬語”なのです。
「〜です!」「〜しますね!」といった明るい語尾を使うことで、チームの空気が柔らかくなり、生産性が上がるという効果も期待できます。
8.3 今日から実践できる言葉遣いトレーニング法
言葉遣いの改善は、今日からでも始められます。誰でもすぐに実践できる3つの方法をご紹介します。
- 録音・再読トレーニング
自分の話し方やメール文を録音・読み返してみましょう。思っているよりも「冷たく聞こえる」表現が見つかるはずです。 - 感謝+行動のセット表現を練習する
「ご指摘ありがとうございます。すぐに修正いたします。」のように、“理解”だけでなく“行動”を添えることで、誠実さが自然と伝わります。 - 身近な人との会話から変える
まずは職場の同僚や友人との会話で、優しい言葉を意識して使ってみましょう。「了解」「はい」だけでなく、「ありがとう」「助かります」を積極的に使ってみてください。
「承知しました」にイラッとする人がいるのは事実です。
けれど、それはこの言葉が悪いわけではなく、受け取り方と伝え方のズレが原因です。ほんの少し意識を変えるだけで、あなたの言葉はもっと人を動かし、信頼を生むものになります。
ビジネスの世界で大切なのは、“正しさ”よりも“伝わりやすさ”。「承知しました」は、その第一歩として、今こそ見直す価値のある言葉なのです。

