今さら聞けない…ひらがなの元になった漢字とは?

「ひらがな」の一文字一文字には、実は“元になった漢字”があることをご存じでしょうか?古代日本に漢字が伝来したことで、日本語と漢字の長い付き合いが始まり、やがて“ひらがな”という独自の文字が生まれました。この記事では、ひらがながどのように漢字から生まれ、どんな歴史を歩んできたのかを、図解や豆知識も交えながら丁寧に解説しています。

目次

1. はじめに

1-1. なぜ今「ひらがなの由来」が注目されるのか

最近、文字に対する関心が高まっているのをご存じですか。特に、「ひらがなの元になった漢字」を調べる人が増えてきています。なぜなら、普段何気なく使っている「ひらがな」が、実は一文字ずつちゃんとした漢字から生まれてきたと知ると、「えっ、あの字がこんな形になるの!?」とびっくりする人が多いからなんです。

たとえば「い」は漢字の「以」から、そして「え」は「衣」からできています。でも、「衣」って普通「い」と読むのに、なんで「え」になるの?と不思議ですよね。実は、こういった疑問の答えは、古代の読み方や書き方のルールを知ると、とてもおもしろく理解できるようになります。

また、小学校で習ったような記憶がうっすらあっても、大人になってから改めて調べてみると、「なるほど〜!」と深い納得ができるんです。だからこそ、今この「ひらがなの由来」が注目されているんですね。

最近では、漢字や日本語のルーツに興味を持つ若い人も増えていますし、外国人に日本語を教える先生方の間でも、「ひらがなの成り立ち」は人気のトピックになっています。単なる暗記ではなく、ひとつひとつの文字にストーリーがあるって思うと、学ぶのがとっても楽しくなるから不思議です。

1-2. 漢字をルーツに持つ文字体系の不思議

日本語の文字は、世界的にもめずらしい混合型の表記体系なんです。つまり、ひらがな・カタカナ・漢字が同時に使われていて、それぞれが役割を分担しています。この中で、ひらがなは「漢字をくずして作られた文字」だということ、知っていましたか?

もともと日本には文字がなかったんですよ。そこで、中国から漢字が伝わってきて、日本人はその漢字を自分たちの言葉に合うように使い始めたのです。最初は「万葉仮名(まんようがな)」といって、漢字の音や意味を借りて日本語を表現していました。でも、漢字って画数が多くて書くのがたいへん。だから、その万葉仮名をどんどんくずして、草書体(そうしょたい)と呼ばれる崩し文字にして、さらに簡単にしたものが今の「ひらがな」なんです。

たとえば「お」は漢字の「於(お)」を草書でくずしてできたし、「し」は「之(し)」から生まれました。こんなふうに、一文字ずつちゃんと「元になった漢字」があるんです。そして、書き方の流れとしては、楷書 → 行書 → 草書 → ひらがなという順に進化していきました。

「漢字」と「ひらがな」の関係って、まるで親子みたいだと思いませんか?どの文字にもルーツがあり、時代とともに形が変わってきたからこそ、今のひらがながあるんです。これって、ただの文字じゃなくて、歴史と文化がつまったタイムカプセルみたいでワクワクしますよね。

ひらがなの由来を知ることは、日本語そのものの魅力に触れる第一歩です。このあと、もっと具体的に「どのひらがなが、どの漢字からできたのか」も見ていきましょう。知れば知るほど楽しくなる、ひらがなの不思議な世界へ、さあ出発です!

2. ひらがなの誕生前史:日本語と漢字の出会い

2-1. 文字がなかった時代の日本語

むかしむかし、日本にはまだ「文字」がありませんでした。
人と人は、声に出して話す「ことば」だけで気持ちを伝えていたのです。
「ごはん食べた?」「今日はいい天気だね」といったふうに、声でやりとりする毎日でした。
でも、声は風に流れて消えてしまいますよね。
「あとで伝えたい」「遠くの人にも伝えたい」と思っても、文字がないとそれができません。
だからこそ、「文字がほしいなあ」という気持ちが日本人の中に少しずつ育っていったのです。

2-2. 漢字の伝来と音を借りた「万葉仮名」

そんなときに登場したのが、海のむこう中国からやってきた「漢字(かんじ)」です。
いまからおよそ1800年前、中国の「漢」の時代に、日本に漢字が伝わってきました。
この漢字には、「読み方」と「意味」があります。
たとえば「山」という漢字は、「さん」「やま」と読み、「やま」という意味がありますよね。
そこで日本人は、漢字の「音」だけを借りて、日本語を表す方法を思いつきました。
このやり方を「万葉仮名(まんようがな)」といいます。
たとえば、「安(あん)」という漢字を「あ」と読むために使ったり、「以(い)」を「い」と読んだりしたのです。
こうして、漢字の音を借りて、日本語を「文字」で書けるようになっていきました。

2-3. 万葉仮名から草仮名、そしてひらがなへ

でも、漢字って画数が多くて、ちょっと書くのが大変ですよね。
万葉仮名も同じで、文章を全部漢字で書くのは時間がかかりました。
そこで人びとは、漢字をくずして、もっと書きやすくする工夫を始めました。
このくずした文字を「草仮名(そうがな)」といいます。
草仮名は、漢字の「草書体(そうしょたい)」という流れるような筆の書き方がもとになっています。
たとえば、「安(あん)」という漢字を草書で書くと、やわらかく丸みを帯びた形になります。
この草仮名をさらにくずして、もっともっと書きやすく、やさしい形にしたものが「ひらがな」なんです。
つまり、万葉仮名 → 草仮名 → ひらがなという順に、日本語の文字は進化していったんですね。

2-4. 女性文化と「ひらがな」の発展(女手文化)

ひらがなができたことで、だれでも簡単に文章が書けるようになりました。
特に、昔の日本では女性が「漢字」を学ぶことは少なく、そのかわりに「ひらがな」を使って日記や物語を書いていたのです。
このような、女性が中心になって使ったひらがなのことを「女手(おんなで)」と呼びました。
たとえば、『源氏物語』を書いた紫式部(むらさきしきぶ)や、『枕草子』の清少納言(せいしょうなごん)も、ひらがなをたっぷり使って、美しい日本語の世界を描きました。
ひらがなは、女性たちの感性や日常の思いをやさしく伝えるための、大切な道具だったのです。

2-5. 書体の変遷:楷書→行書→草書→ひらがな

ひらがながどうやって漢字から生まれたのか、その秘密は「書き方=書体(しょたい)」の変化にあります。
まず、漢字の基本の形である「楷書(かいしょ)」があります。
これは、学校で習うような、まっすぐでていねいな形の漢字ですね。
この楷書を少しくずしたものが「行書(ぎょうしょ)」、さらに大きくくずして流れるようにしたものが「草書(そうしょ)」です。
この草書体をもとに、漢字の形をさらにシンプルにしたのが「ひらがな」なんです。
たとえば、「あ」は漢字の「安」、
「い」は「以」、
「う」は「宇」からきていますが、これらはみんな草書でくずされた形からひらがなに変わっていったのです。
つまり、書体の変化の流れをまとめると、楷書 → 行書 → 草書 → ひらがなという順番なんですね。

3. 一覧で確認!ひらがなの元になった漢字一覧表

ひらがなって、実は昔の人が漢字をくずして作ったんだよ。「まるっこくてかわいい文字だな〜」と思っていたひらがなにも、しっかりとしたルーツがあるんだ。この章では、ひらがなの元になった漢字を五十音順に一覧でまとめてみたよ。そして、ひらがなとカタカナの違いや、どこが似ているのかも比べてみようね。見た目は似てても、ちょっとした違いがあるから、よ〜く見てね。

3-1. 五十音ごとの対応早見表

ここでは、ひらがながもともとどの漢字から生まれたのかを表にして紹介するよ。これを見れば、例えば「あ」は「安」、「い」は「以」といったふうに、どの漢字がもとになっているのかが一目でわかるんだ。ひらがなの音と、元の漢字の読みが一致している場合もあれば、昔の読み方「呉音(ごおん)」や「漢音(かんおん)」から来ていることもあるよ。

ひらがな元になった漢字読みの関係
「あん」の前半
漢音「い」
音読み「う」
呉音「え」
音読み「お」
音読み「か」
音読み「き」
呉音「く」
呉音「け」
音読み「こ」
音読み「さ」
音読み「し」
音読み「すん」から
音読み「せ」
音読み「そ」
音読み「た」
音読み「ち」
州・川・津・鬪古音「つん」や呉音「つ」
「てん」の前半
古音「と」
音読み「な」
音読み「に」
音読み「ぬ」
音読み「ね」
音読み「の」
音読み「は」
音読み「ひ」
音読み「ふ」
音読み「へ」
音読み「ほ」
音読み「ま」
音読み「み」
音読み「む」
音読み「め」
音読み「も」
音読み「や」
音読み「ゆ」
音読み「よ」
音読み「ら」
音読み「り」
音読み「る」
音読み「れ」
音読み「ろ」
音読み「わ」
音読み「い」(歴史的仮名)
音読み「え」(歴史的仮名)
音読み「お」系統
音読み「ん」

漢字の草書や行書をくずして作られたから、筆の流れや形をよく見てみると、元の漢字の面影がうっすら残ってることが分かるよ。「へえ〜、この漢字がこんなふうに変わったんだ!」って、きっとびっくりすると思うな。

3-2. カタカナとの違いや共通点

ところで、「ひらがな」と「カタカナ」って似ているようでちょっと違うよね?それもそのはず!どちらも万葉仮名をくずしてできた文字だけど、作り方や使われ方に違いがあるんだ。

ひらがなは、草書体といって、漢字を筆でくずして書いた書き方から生まれたよ。曲線が多くて、やわらかい印象があるよね。女性が日記や手紙を書くときによく使われていたから、「女手(おんなで)」とも呼ばれていたんだよ。

一方でカタカナは、漢字の一部を取り出して省略して作られたんだ。たとえば、「カ」は「加」の片方、「ツ」は「川」や「州」の一部分から来てるんだよ。こちらはお坊さんたちがお経を読みやすくするために作ったといわれていて、主に男性が使っていたから「男手(おとこで)」とも呼ばれたよ。

つまり、同じ漢字をもとにしていても、ひらがなはくずし字、カタカナは切り出し字っていう違いがあるんだ。そして今でも、「ひらがな」はやわらかく、「カタカナ」はシャキッとした印象を与える文字として、うまく使い分けられているんだね。

4. 各文字ごとの由来と変化の詳細解説

4-1. 【あ行】五音の出発点に隠された意味

ひらがなの「あ行」は、日本語の音のスタート地点。この5つの文字は、すべて日常でもよく使われる大切な音なんだよ。
たとえば、「あ」は「安(あん)」という漢字の草書体から生まれたの。
今の「安」って、「家の中に女の人がいる」って形をしているよね?この「女」の部分を草書で書きくずしていくと、ひらがなの「あ」になるんだ。
でも、漢字の筆順通りじゃなくて、ちょっと特別な順番で書いてるから面白いよ。

「い」は「以(い)」からできた文字。
草書体で書くと、「人」の形がスッと縦にのびて、今の「い」になったの。
当時は右の線の方が長く書かれていたけど、今では左がちょっと長くなっているね。

「う」は「宇(う)」が由来。
「うかんむり」の部分と、「干」という漢字の部分がスーッとつながって、きれいなカーブを描いて「う」の形になるよ。
カタカナの「ウ」も実は「宇」の「うかんむり」部分が元になっているんだよ。

「え」は「衣(い)」が元。
でもちょっと不思議なのは、「衣」はふつう「い」って読むのに、どうして「え」なの?って思うよね。
実はこれ、呉音(ごおん)という昔の中国の発音で「え」って読まれていたからなの。
仏教の言葉に多くて、「白衣(びゃくえ)」とかが有名だね。

「お」は「於(お)」から来ていて、筆で書き崩していくと、「丶」(点)と「呂」の形が合わさって、今の「お」になるよ。
訓読みの「おいて」じゃなくて、音読みの「お」がそのまま使われたってところがポイントだよ。

4-2. 【か行】カタカナと共通ルーツが多い行

か行のひらがなは、実はカタカナと同じ漢字からできているものがとても多いの。
「か」は「加(か)」という漢字の草書体から。
「力」と「口」の形をグニャッと書き崩すと、今の「か」になるんだよ。
「カタカナのカ」も「加」の左側「力」からできたんだ。

「き」は「幾(き)」というちょっと難しい漢字から来ていて、草書で「幺(よう)」っていう糸の形を崩していくと「き」になるんだ。
「キ」はこの「き」の最後の横棒を省略した形なんだよ。

「く」は「久(く)」から生まれて、「人」の形をやわらかく書いたようなカーブが特徴的だよ。
「久遠(くおん)」みたいな仏教用語に、「く」という読み方が残っているんだ。

「け」は「計(けい)」のごんべん部分からきているとされていて、中国語ではこの漢字、簡略化して「计」って書くんだって!
その流れで、くずし書きが「け」の形になったんだよ。

「こ」は「己(こ)」という漢字から。
筆の動きが流れるように繋がって、「こ」になるんだ。
カタカナの「コ」も同じく「己」から来ているよ。

5. さらに深掘り!成り立ちを「書体と筆順」で追う

5-1. 草書体の筆順とひらがなのつながり

ひらがなは、今ではなじみのある柔らかくて丸みのある文字だけど、もともとは漢字をくずした草書体が元になっているんだよ。たとえば、「あ」は「安」、「い」は「以」、「う」は「宇」など、それぞれのひらがなにはもとになった漢字があるんだ。でも、ただその漢字の形を小さくしたわけじゃないんだよ。筆で書いていく中で、自然にくずれて、まるで絵のように変わっていったんだ。

「草書体」というのは、漢字の書き方の中でも一番くずした形のスタイル。「楷書」→「行書」→「草書」と変化するうちに、点や線が省略されたり、くるっと曲がったりするのが特徴なんだよ。だから、ひらがなは、漢字の意味じゃなくて、音と筆の流れを大事にして生まれたんだ。

たとえば、「き」は漢字の「幾」から。草書体になると「糸」の部分がまるくつながって、そこから横線、縦線をすっと続けて書いていくと…まるで今の「き」にそっくりな形になるんだ!筆順を知っていると、「なるほど、こうして“き”になったんだね」ってよくわかるよ。

5-2. 古い字形と現代ひらがなの比較図

ひらがなは、見た目はシンプルだけど、もともとの漢字と比べるとびっくりするくらい変化してるんだ。ここで、昔の草書体と今のひらがなを見比べてみようね。

  • あ(安):「安」の草書体は、うかんむり「宀」の点がひらがなのくるんとした丸い部分になって、下の「女」がやわらかく流れて「お団子」のような形になったよ。
  • そ(曽):「曽」の草書体には点が2つ、そして田のような四角があるけど、それをひとつながりで書くと、今の「そ」のような形になるんだ。
  • つ(川):「川」は三本の線だけど、筆で続けて書いて、最後の線をくるっと丸めると…今の「つ」に近づいてくるんだ。

こんなふうに、漢字の草書体をくずして書くことで、少しずつ形が変わって、やがて今日のひらがなになっていったんだね。だから、草書体とひらがなを見比べると、「あ、ここがこの部分か!」って発見がたくさんあるよ。

5-3. 実際に書いてみるとわかる「成り立ちの流れ」

さあ、今度は実際に筆をもって書いてみよう!筆ペンや鉛筆でも大丈夫。まずは、元の漢字をゆっくり書いて、そのあと草書体のくずした形をまねしてみて、それからひらがなを書いてみるんだ。すると、「なるほど!この線がここにつながって、こうなったのか」って気づくことがあるよ。

たとえば「な」なら、「奈」を書いてみよう。「木」の上に「大」って書くけど、草書体になるとその「木」が曲がって流れて、「な」のくるんとした形に変わっていくんだ。そして、ひらがなの「な」は、その曲線をもっと単純にして、筆がすーっと流れるように書ける形にまとまってるよ。

他にも「ま(末)」や「も(毛)」など、書いてみると納得できるものがたくさんあるんだ。紙に書いて、目で見て、手で感じてみると、ひらがなの魅力がもっとわかるよ。ぜひ、子どもから大人まで、親子で一緒に漢字からひらがなに変わる旅を楽しんでみてね!

6. 複数説ある?由来が一つに定まらない文字たち

ひらがなの多くは、ある一つの漢字を草書体で崩した形から生まれましたが、中にはその由来が一つに定まらず、いくつかの漢字からの影響を受けた可能性がある文字も存在します。とくに、音と意味の対応が複雑だったり、書き方の変化に幅があったりする文字については、複数の説が提唱されているのです。ここでは、そんなひらがなの中でもとくに興味深い文字「つ」「え」「と」「す」について紹介します。

6-1. 「つ」=州?川?津?鬪?諸説ある背景

ひらがなの「つ」は、一つの漢字に由来するとは限らない珍しいケースです。もっともよく言われるのは「州」から来たという説です。「州」は三つの点のような部首を持っており、これを草書体でくずして書くと、まるで水の流れのような丸みを帯びた形になります。この書き崩し方が「つ」に近づいていく様子は、筆の運びを意識するとイメージしやすくなります。

また、「川」が由来という説もあります。「川」は三本の縦線からできていますが、これを一筆書きのように崩すと、なだらかな曲線を描くようになります。そこから「つ」のような形状になったと考えられているのです。

ただし、どちらの漢字も音読みでは「つ」という音を持っていないのが不思議なところです。実は、「州」や「川」には古音(こおん)で「つん」や「ちゅん」に近い音があったとされています。そこから最初の音をとって「つ」になったというのが音の由来の一説です。

さらに、「津」や「鬪(とう)」が由来という説もあります。「津」は港の意味で「つ」の音を持つ漢字ですし、草書体で書くと「つ」のような丸い形を含む筆運びになります。また、「鬪」は「闘」の旧字体ですが、上部が「つ」のような書き方をされる草書体が存在し、音の面でも呉音で「つ」と読まれたことがあるのです。

このように、「つ」というひらがなは、形と音の両方から見ても複数の由来説が成り立ちうる、とても興味深い文字なのです。

6-2. 「え」=衣の呉音?なぜ「い」じゃないのか?

ひらがなの「え」は、漢字の「衣(ころも)」を草書体で崩した形から生まれました。文字の形だけを見ると、確かに「衣」と「え」は似た曲線を持っているので納得しやすいかもしれません。でも、「衣」は普通「い」と読むことが多く、なぜ「え」になったのか?という疑問がわいてきますよね。

実は、漢字には同じ字でも複数の音読み(字音)が存在します。「衣」の場合、漢音では「い」、呉音では「え」と読みます。この呉音の「え」が、ひらがな「え」の音になったとされています。

呉音というのは、6世紀から7世紀ごろに中国南部から日本に伝わってきた読み方で、仏教用語などに今も多く残っています。たとえば「白衣(びゃくえ)」の「え」も、まさにこの呉音の一例です。

このように、「え」は見た目も由来通りですが、音の面では日本語における漢字の多様な読み方を知っていないと、ちょっと難しい文字でもあるんです。

6-3. 「と」や「す」も音と意味のねじれがある?

「と」は漢字の「止」を草書体で崩した形がもとになっています。形の流れとしては、縦棒に横線、そして最後のカギ型を崩していくと、確かに「と」のような形になります。しかし、ここでも気になるのは音の問題です。

「止」は音読みで「し」、訓読みで「とまる」などと読みますが、「と」単体の音は見当たりません。そこで注目されるのが「古音(こおん)」という概念です。古音とは、万葉仮名などに使われていた、中国の古代の発音に近い読み方で、「止」にも「と」に近い古音があったと考えられています。

一方、「す」は漢字の「寸」からできています。形としては、「寸」を草書で崩すと「す」のような曲線になります。ただし、「寸」の音読みは「すん」であり、「す」と単独で読むわけではありません。

しかし、「寸志(すんし)」や「寸法(すんぽう)」といった言葉を見てみると、「すん」の頭の音「す」が日本語での使い方に残っているのが分かります。ここから頭の一音が切り出されて、ひらがなの「す」の音として定着したという見方もあるのです。

このように、「と」や「す」もまた、音と意味が完全には一致しない、ちょっと複雑な背景を持った文字たちなんですね。

6-4. まとめ

今回取り上げた「つ」「え」「と」「す」は、漢字からの成り立ちが一筋縄では説明できない、とても奥の深い文字たちでした。とくに「つ」は、形の面でも音の面でも複数の漢字からの影響が考えられていて、まるで歴史のミステリーを探るような楽しさがあります。また、「え」や「と」、「す」も、古音や呉音といった日本語に取り入れられた多様な読み方の歴史を知ることで、その奥深さが見えてきます。

ひらがな一文字にも、千年以上前から続く文字の旅路があると考えると、ふだんの言葉にも少しロマンを感じられるかもしれませんね。

7. 「字音」とひらがなの関係性を理解しよう

ひらがなの多くは、もともと漢字をくずして作られましたが、その背景には漢字の「音の読み方」=字音の存在が深く関わっています。この音読みにはいくつかの種類があり、日本語に取り入れられた時期や用途によって、その発音や意味に違いが出てきたんだよ。ここでは、ひらがなの由来と密接に関係している「呉音」「漢音」「唐音」「古音」について学んでいこうね。

7-1. 呉音・漢音・唐音・古音とは?

漢字が中国から日本に伝わってきたとき、その音の読み方も一緒にやってきたの。でも、中国の発音も時代や地域で変化していたから、日本に伝わった時点ですでに複数の発音が混在していたんだよ。そこで、日本語では主に次の4つの音読みが使われるようになったの。

  • 呉音(ごおん):主に中国の南部・呉の地域から伝わった古い発音。5世紀頃に仏教とともに日本に入ってきたよ。仏教用語や和風の響きのある言葉に使われることが多いんだ。
  • 漢音(かんおん):7世紀頃、遣隋使や遣唐使の時代に中国北部・長安などの都の発音が取り入れられたもの。学校で習う「正式な読み方」の多くがこれにあたるよ。
  • 唐音(とうおん):さらに後の宋や元の時代、中国から直接商人などによって伝わった音。貿易や専門用語に使われているケースが多いの。
  • 古音(こおん):実はこれが最も古い読み方で、奈良時代以前に漢字が入ってきた頃の音だよ。万葉仮名などで見られる、現代中国語にも近い発音が特徴なんだ。

つまり、ひとつの漢字に複数の読み方がある理由は、日本に伝来した時代やルートの違いにあるんだね。

7-2. 読み方の違いが由来に与えた影響

ひらがなの元になった漢字が、どうしてその発音になったのかを考えるとき、この「字音」の違いがとても大事。たとえば、「え」の元になった漢字は「衣」だけど、漢音では「い」、呉音では「え」と読むの。だから「え」は呉音が使われているんだよ。

また、「つ」のように音読みがない漢字が元になっている場合は、古音が手がかりになることがあるよ。「つ」の元とされる「川」や「州」には現代では「つ」という音はないけど、古音では「つん」と読まれていた可能性があるんだ。だから、ひらがな「つ」の音も古音に由来していると考えられているの。

こんなふうに、漢字のどの音読みがひらがなに取り入れられたかで、その発音が決まったケースも多いんだよ。

7-3. 地名や人名に残る音読みの名残

実は、ひらがなの音と関連する読み方のヒントは、今の地名や人名にもたくさん残っているんだ。たとえば「久留米(くるめ)」や「久喜(くき)」の「久(く)」は、通常の音読みだと「きゅう」だけど、呉音で「く」と読むことがあるんだよ。

また、「白衣(びゃくえ)」の「衣(え)」や、「音(おん)」が「いん」と読まれる仏教語なども、呉音が今でも使われている例なんだ。「つ」の音に関しても、「津田(つだ)」や「津山(つやま)」などの地名では、「津」=「つ」という音が今でもしっかり残っているよ。

人の名前にも「仁(に)」や「礼(れい)」のように、昔ながらの呉音や漢音の発音が残っていることがあるんだ。これは、ひらがなの音が、長い歴史の中で定着した読み方に影響を受けてきたことを表しているんだね。

7-4. まとめ

ひらがなは漢字をくずして作られたものだけど、その背景には複雑で奥深い「音の歴史」があるんだよ。漢字がどこから、どの時代に、どのように伝わってきたかによって、「え」や「く」などのひらがなの音が生まれてきたんだ。

呉音・漢音・唐音・古音、それぞれの発音が日本語に取り込まれて、それが今も地名や人名に生きている。ひらがなを通して、言葉の歴史をたどる冒険ができるなんて、すごく面白いと思わない?これからも、身の回りの言葉をじっくり見ていくと、もっとたくさんの発見があるかもしれないね。

8. カタカナとひらがなの成り立ち比較

8-1. カタカナは「へん」から、ひらがなは「全体」から

漢字をもとに作られた「ひらがな」と「カタカナ」だけど、それぞれ作られた方法にはちょっとした違いがあるんだよ。

ひらがなは、草書体という“くずした漢字”を丸ごと使ってできあがった文字なんだ。たとえば「い」は「以(い)」という漢字を、筆でくるくるっとくずして書いた形がそのまま「い」になったの。草書体っていうのは、漢字をすばやく書くために線をつなげたり、省略したりしてできた書き方なんだよ。

一方で、カタカナは漢字の一部、特に「へん」や「つくり」などの一部分だけを取り出して作られたんだ。たとえば「カ」は「加(か)」の左側、「力」の部分を使ってできてるの。同じ「加」からできたひらがなの「か」は、漢字全体を草書でくずして作られたよ。

だから、ひらがなはふんわりとした曲線が多くて、やさしい印象があるけれど、カタカナは直線的で、ちょっとカクカクしてるのは、元の取り方がちがうからなんだね。

ちなみに「ア」は「安」の上の部分、「宀(うかんむり)」を使ってできたカタカナだけど、「あ」は「安」全体を草書でくずして生まれたひらがななんだよ。このように、同じ漢字をもとにしていても、ひらがなとカタカナでは作り方が全然ちがっていたんだね。

8-2. カタカナ由来との混同が起きやすい文字は?

ひらがなとカタカナ、パッと見て似ている文字ってあるよね?たとえば「へ」と「ヘ」は、どっちがひらがなでどっちがカタカナかわからなくなっちゃうこともあるかも。でも実は「へ」も「ヘ」も、どちらも同じ漢字「部(へ)」から生まれているんだ。だから形がそっくりなのも納得だね。

他にも「り」と「リ」、「る」と「ル」、「わ」と「ワ」なんかも、見た目が似てるからまちがえやすいけど、もとになった漢字は同じだったり、似ている形からできていたりするんだよ。

たとえば、「り」は「利(り)」という漢字から草書体でくずして作られたけど、カタカナの「リ」も同じ「利」の一部分から作られたもの。これもやっぱり元の漢字が同じだから、似てるんだね。

こういった混同が起きやすい文字は、もともとの漢字が同じか、形が似ているからなんだよ。覚えるときには、どっちがひらがなでどっちがカタカナか、元の漢字を思い出してみると、しっかり頭に入ってくるよ。

そしてもう一つのポイントは、「書き順」と「くずし方」なんだ。ひらがなは「全体」をくずしてるから、筆の動きや流れが残っているけれど、カタカナは「一部分」だけを取り出しているから、書きやすさ優先でシンプルになっているんだよ。この違いを知ると、ひらがなとカタカナの不思議がもっと面白く見えてくるね。

9. ひらがなに関する豆知識・トリビア

9-1. ひらがなが正式に公文書に使われたのはいつ?

ひらがなが初めて正式に公文書で使われるようになったのは、明治時代のことなんだよ。それまでは、漢字やカタカナばかりが使われていて、ひらがなは「女性の文字」として扱われていたんだ。平安時代の女性たちが、草書体の漢字をくずして作ったのが「ひらがな」だったからね。そのため長いあいだ、日記や和歌など、私的な文章に使われていたんだよ。

でも、明治5年(1872年)に学制が始まってからは少しずつひらがなが見直されて、明治20年代ごろには正式な文書にも使われるようになったの。それにともなって、今の「こくご」の教科書でもひらがなが当たり前のように使われるようになっていったんだ。つまり、「やさしい日本語」を作るためには、ひらがなの存在がとっても大きかったってことだね。

9-2. 源氏物語とひらがなの密接な関係

「ひらがな」と「源氏物語」って、じつはとっても仲良しなんだよ。源氏物語は平安時代に紫式部という女性が書いた物語で、日本最古の長編小説とも言われているの。そして、紫式部が使った文字の中心が「ひらがな」だったんだよ。

そのころの日本では、男性は漢文で文章を書き、女性はひらがなで書く文化があったの。だから紫式部も、ひらがなを使って自分の気持ちや物語を美しく表現していたんだよ。たとえば、「あ」や「い」って文字も、元は漢字の「安」や「以」からできているんだけど、紫式部たちはそうした文字をなめらかな形に変えていったんだね。

源氏物語が今も読みつがれているのは、ひらがなのやさしさや美しさが、物語の世界をより魅力的にしてくれているからかもしれないね。まさに、ひらがなは日本語の「こころ」を伝えるための大切な道具だったんだよ。

9-3. 世界的に見ても珍しい「ひらがな」という文字文化

実は、「ひらがな」みたいに、漢字をもとにしながらまったく別の形に変化した文字って、世界でもほとんど見られないんだ。たとえば、中国には「簡体字」といって、昔の漢字を簡単にした文字があるけど、形が丸くなったり、音の表し方が独自になったりする文字はないんだよ。

それに対して、ひらがなは「草書体」というくずした漢字の形から、まったく違う、まるくてやさしい文字に進化したんだ。たとえば「き」は「幾」、「さ」は「左」、「は」は「波」といった具合に、どのひらがなにも「おや文字(元の漢字)」があるんだよ。

そして、日本では「ひらがな・カタカナ・漢字」の3つの文字が一緒に使われるんだけど、こういう国って本当にめずらしいの。アルファベットだけで表す言語が多い中で、日本語だけがもっている「3つの文字の共演」は、世界に誇れる文化だね。

9-4. まとめ

ひらがなって、ふだんは当たり前のように使っているけど、じつは一文字一文字に漢字からの「おや文字」があるって知ってた?そしてその形は、ただ崩れたわけじゃなくて、書きやすく、気持ちが伝わりやすくなるように工夫された「やさしい文字」なんだよ。

公文書にも使われるようになったのは明治時代からだけど、その原点は平安時代の女性たちの知恵と工夫にあるんだ。源氏物語のような美しい文学を通して、ひらがなは日本語の「こころ」を育ててきたんだね。

そして、世界の中でもこんなふうに独自の進化をした文字って、ほんとうに珍しい。ひらがなは、日本人だけがもつ宝もののような文化なんだよ。これからも、ひらがなの一文字一文字に込められた歴史や思いを大切にしていきたいね。

10. まとめ

10-1. ひらがなは「日本語の音」を包んだ歴史のしずく

ひらがなって、実は昔の中国から伝わった漢字を、日本の人たちが「自分たちの言葉にぴったり合うように」工夫して作った文字なんです。最初は「万葉仮名」といって、漢字の音を借りて日本語を書いていたけれど、それだけではとても複雑で読み書きが大変でした。そこで、草書体という崩した字の形をもとに、もっと書きやすく、読みやすく、そしてなにより「やさしい」文字を作ろうとして、今のひらがなが生まれました。

例えば「さ」は「左」、「し」は「之」、「た」は「太」、「ま」は「末」など、それぞれのひらがなには元になった漢字があります。でも、その漢字を見ても「本当にこれが元なの?」と驚くかもしれません。それは、筆で書いていたころの字の流れや筆順が今と違うから。筆の流れをくずしていくうちに、やがて丸みを帯びて、やわらかく、やさしい形になっていったのです。

中には「つ」や「ん」のように、由来に諸説がある文字もあります。例えば「つ」は「川」や「州」、「津」などが元とされていますが、どれも決定的な根拠があるわけではありません。でも、そんなふうにいくつかの説があるのも、日本語の奥深さを感じさせてくれますよね。

ひらがなは、日本人の音を形にした記録であり、やさしさや美しさを表す文字でもあります。その歴史をたどってみると、まるで千年以上の時間をタイムスリップして旅しているような気持ちになれるんですよ。

10-2. 学び直すと面白い!ひらがなを知る価値

ふだん何気なく使っている「ひらがな」。でも、ひとつひとつに物語があることを知ると、見る目が変わってきます。「へぇ、この字はこんなふうにできたんだ」「この音は昔の中国語の読み方に関係してるんだ」など、まるで宝探しのように楽しめるんです。

とくに、漢字や歴史に興味のある人にはぴったりのテーマです。中学生や高校生、大人になってからもう一度日本語を勉強し直したい人にも、知的好奇心をくすぐる最高の教材になります。たとえば「え」は「衣」から、「お」は「於」からできていて、それぞれ「音読み」が関係している。そんなふうに、ひらがなの形だけでなく音のルーツまで学べるのが面白いところです。

日本語って、ただの言葉じゃなくて、時代や文化を映し出す鏡のようなもの。ひらがなはその中でも、やさしさやあたたかさを伝える大切な存在なんです。この機会にぜひ、もう一度「ひらがなってなんだろう?」と考えてみてくださいね。